琉球ホラー　オキナワノコワイハナシ　６

世の中には、さまざまな禁忌がある。現代社会では、その力が薄れつつあるように思う。道徳的な規範から風俗風習、言い伝えに至るまで、すべてにおいて、その傾向が見られる。
「夜、爪を切ってはいけません」
「敷居は踏むな」
「新品の靴は夜、おろしてはいけない」
「ささくれは、親不孝のしるし」
「霊柩車を見たら、見えなくなるまで親指を隠せ」
いわゆる迷信の類であっても、そこには一抹の真実が含まれている。

■第１話 ゆうれい Ghost (2005年 夏)
旧盆の或る日、子供たちが堤防で釣りをしているが、魚がかからない。場所を移して再挑戦と意気込んだところで浜に乗り捨てられた船＝サバニを見つける。
２人は、この船に乗って沖に漕ぎ出すが、日が暮れてしまう。やがて靄が出て、不気味な読教の声が聞こえて来る。見ると、棺桶を担いだ白装束の一団が海面の上を歩いて来る。
……というお話し。

やっぱり子供同士の会話が理解出来ない。(笑)
海には、たくさんの遺体が沈んでるし、泳いでいる人の足を掴んで引きずり込もうとするのも当然だよね。旧盆であろうがなかろうが、夜の海で泳いではいけません。

■第２話 もの Something (2006年 夏)
或る橋に立って呪文を唱えると、“神隠し”にあう、という昔話しがある。
３人の女の子が、おもしろ半分に橋の上で呪文を唱えてしまう。最初はふざけていたが、ちょっと目を離した隙に、本当に１人が消えてしまう。
残った２人は、互いに目を離さないようにするが、そんなことが出来るはずもなく、とうとう１人になってしまう。
……というお話し。

１人になった女の子が鏡に写った自分の姿から目を離さないようにする。「おっ、うまいこと考えたねぇ」と感心してしまった。（落語みたいだ）
『死霊のはらわた』など多くのホラー映画が警告しているように、軽々しく呪文なんか口にしてはいけません。

■第３話 煙が目にしみる Smoke gets in my eyes (2006年 清明)
骨董品蒐集と絵を描くことを趣味とする冴えない青年がいる。或る日、鳴らないはずの古い電話機がなり、彼のもとに“おじい”から電話が掛かって来る。「あの世でビンボーしてるからウチカビを焼いておくれ」と頼まれる。彼のおじいは生きていたが、心優しい彼は、誰とも知れぬおじいのためにウチカビを焼いてあげる。
しかし、再び電話が掛かって来て、「気持ちがこもってない！」と怒られてしまう。
……というお話し。

笑いました。(笑)　この作品、好きだなぁ。電話が現世とあの世を繋ぐ道具になるホラー映画は他にもあるが、これはピカイチだ。
それにしても、うちのオヤジ、あの世でビンボーしていないだろうな。うちは関東の人間だけど、ウチカビを焼いてもいいのかな？　届くのか？　あ〜、その前にやることあるよなぁ。
お墓参りを欠かしてはいけません。

「夜、口笛を吹いてはいけません」
「お米には八十八の神様が宿っているから、ひと粒も残してはいけません」
「北まくらはダメ」
思えば、私たちは“あれもダメ”“これもダメ”と言われて育って来た。それは“食べ物を大切にしましょう”とか“親を敬いましょう”とか“祖先を大事にしましょう”とか、道徳的な規律を作り上げるためのものだ。いまの時代だからこそ、そんな風俗風習を大切にしたい。
旧盆には泳いではいけないし、橋の上でまじないを口にしてはいけないし、ウチカビを焼かなければ……。(笑)

オススメ！

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「ゆうれい」　監督・原案・新垣善広　脚本・上間一示、宮良貴彦　２００５年夏放映

盆に帰郷したいとこのシュウ兄が都会暮らしを鼻にかけるのを受け流しながら、砂浜に打ち捨てられたボロ舟で海釣りに行こうと誘ったヨシオは、おじい、おばあの言いつけを守りゲンをかつぐバリバリの地元っ子。
曰く、盆に棺桶を担いだ行列を見たとか、夜釣りの猟師が突如現れたもう一艘の白い顔の男を乗せた舟に遭遇したとかとか・・・。
けれど、盆には海で泳ぐなという禁忌を気にしつつも、釣果の無いまま日が暮れてしまう。
そんな中、小バカにしていたシュウ兄がうっかり櫂を流してしまい、ふと見ると霧の中から一艘の舟が・・・。

シリーズ１作目の「だるまさんがころんだ」の子役儀保幸彦くんと池原義朗くんがいとこ同士で登場。
夏にぴったりの怪談話でできも良くオススメだけど、相変わらずのナチュラルボーンうちなーぐちで字幕が欲しい１本。


「もの」　監督・川端匠志　脚本・匂坂正宏　原案・山田優樹　２００６年夏放映

橋の上で世間話する若いカップル。
「この橋で”ものがヘーイ”と叫ぶと”もの”にさらわれ永遠にさ迷う」と力説する男に、女（幸地尚子）はふざけてそれを言わせてしまう。
と、ふと振り向いた時、男がいなくなっている。
・・・というのは、のんびり屋の高校生タマエ（川満彩杏）が彼氏から聞いた話で、女もその後行方知れずになっていると力説する彼女に、トモコ（新城愛理）とアキ（山内千草）はその橋の上でやはりタマエにそれを言わせてしまい・・・。

調べると正式には「仲西ヘーイ」と呼ぶらしく、潮渡川にかかる潮渡橋での話らしい。
一秒も目を離さないって不可能だよねｗ　てか、仲西って誰ｗ
天然系メガネっ子のお約束どおり、タマエ役川満彩杏は今ググるとかわいい度ＭＡＸですぞｗ要チェック♪


「煙が目にしみる」　監督・新垣善広　脚本・宮良貴彦　２００６年清明放映

アンティークと音楽と絵画をこよなく愛する主人公（兼城禅）が寛いでいたある夜、鳴るはずのない古電話が鳴り、”死んだおじい”と名乗る男（北村三郎）から「（あの世で）金が無くなったのでウチカビを焼いて送ってくれ」と電話が来る。
主人公はビビリながらも素直にウチカビを焼くが、再びおじいから電話が来て、ウチカビは親戚で心がこもってないと届かないといわれ血縁の霊でないと知る。
が、彼を気に入ったというおじいの霊は、古い物には悪霊が憑きやすく、その部屋は非常に危険と警告する・・・。

ホラーコメディでほとんどが主人公役兼城禅の一人芝居だけど、おじい侍の台詞にも字幕があって楽しませてくれる１本。
公式の放映年に”清明”とあって、誤植？と思ったら沖縄では”シーミー”と読み、４月のお花見くらいの時期の盆行事らしいですよ。
ウチカビは”打ち紙”、ネット通販でも買えるみたいだし、沖縄ではフツーにスーパーで売ってるらしいです。

沖縄、ナゾ過ぎて、おもしろすぎる。やっぱ一度は行ってみたいなぁ。