ＣＬＯＳＥ／クロース

（2022年　ベルギー・オランダ・フランス）ルーカス・ドン監督
13歳のレミ（グスタフ・ドゥ・ワエル）とレオ（エデン・ダンブリン）は、幼なじみで兄弟のように仲が良かった。
互いの家を行き来し、一緒に眠ることもたびたびだった。

中学校に入学すると、2人の仲が良すぎるのを見たクラスメイトが、「2人は付き合っているの？」と聞いてくる。
なんの悪意もない言葉だったが、きれいな顔立ちのレオは「おとこ女」とからかわれる事もあり、だんだんレミと距離を置くようになる。
無理に男っぽい世界に入ろうと、アイスホッケーチームに加入し、練習に励むようになる。

レオを演じるエデン・ダンブリンは、とても美しい少年だ。
少し甘えん坊のところもあるレミは、おそらく思っている以上にレオの存在が自分の中で大きい事に、戸惑っていたと思う。
思春期の感情は繊細ではあるが、なぜレミが、あのような悲劇を選んだのか、もっと強くなれなかったのか悔しくさえ思う。
レオは事実を受け入れるのに時間がかかり（自分が突き放したせいだと）一人で悩むことになる。

作品はとても繊細な仕上がりで、誰をも悪く描いたりはしていない。
レオの大きな瞳は、悔恨や恐怖、不安を表現しセリフがなくとも思いが伝わる。
「幼馴染」が「同性愛」に変化する時の瞬間的な葛藤なのだろうか。
だが、二人でいればただ幸せな時間に、名前などつけられない。

観ていて痛々しい作品ではあるが、ラストショットのレオの力強い瞳が心に残る。
静かな感動が湧き上がる。

とても丁寧な作り。ゆっくりと進む展開。だがテンポが悪い訳ではなく、1つ1つのシーンに主人公を中心とした人物達の心の動きが込められていて、悲しみと喪失感と罪悪感などの負の感情が美しくも残酷に表現される。光の加減や登場人物をとらえる角度などに工夫が見られるカメラワーク。台詞は必要最小限。
性別はあまり関係なくて、家族や恋人や親友などの特別な関係性が壊れたまま永久に失われてしまうという、意外に少なくないであろう悲劇における感情の揺れを描いた絵画的な作品。自殺は特に衝撃が強いけど、天災や事故で失われた場合にも、大事な関係を失った者の喪失感はやはり大きいものだろう。こんな残酷な主題をこれほど美しく見せるとは、この監督は人並外れて多感で繊細なのか、それとも冷酷な耽美主義者なのか。映画芸術の1つの大成功例だとは思うが、万人にお勧めはできない作品。

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一日中じゃれあう二匹の子犬のようなふたりだった。松山ケンイチ似の少年レミと、マイケル・ケイン似の少年レオ。どちらかの家で一緒にご飯を食べて、どちらかの家で一緒に眠る毎日。ママよりも、兄ちゃんよりも、一緒にいたいふたりであった。
同じ中学校に入り同じ調子で体をくっつけて座っていたら周りが冷やかす。付き合ってんの？別に。手もつながないしキスもしない。レミは気にしていなかったが、おとこ女、といじめられたレオは、ちょっと距離を置いてみようかな、と思った。
レミはクラシック音楽（オーボエ）をやっていた。レオは男くさいアイスホッケーのクラブに入った。世界中を演奏して回るレミのマネージャーをレオがつとめる、というのがふたりの約束だったけれど。さっそくレミが練習を見にきて、面白い？僕もやろうかな。レオは返事をしなかった。次の日の朝、いつもは一緒に自転車で登校するのに、レオだけ先に行った。なんで僕をおいていったんだ！大げんか。そして悲劇。誰も責められない。
CLOSE、大の仲良し、だったがゆえに起きた悲劇。アルアルのような、レアケースのような。アイスホッケーの練習中もレミのことが頭から離れない。レミのお母さん、大丈夫だろうか。あどけなさの残るレオの表情をカメラがアップで追う。感極まって涙があふれ、ポロポロっと落ちる。みる者の胸も痛く、苦しくなってしまう作品であった。