タクシデルミア　〜ある剥製師の遺言〜

三世代にわたっての人間の欲求のお話しですが、
その表現の仕様がおぞましく過激で繊細で幻想的。
作品そのものがハンガリー国皮に包まれた剥製のようでした。
その腹に詰めこまれたものに冒頭からラストまで、目を見張ったままでした。
監督さん、天才、と思いました。

４０年代〜６０年代〜現代、その時代背景を手玉に取りながら、
性欲〜食欲〜物欲＝剥製欲へと展開していく技も天才的。
ただ生きるためでなく、存在するために進化していった人間の欲の果てを見せていただきました。

４０年代戦時中、モロジュゴバーニの性肉欲自慰妄想シーンは、
今まで観てきた幻想シーンとは似て非なるもの。素晴らしい!!
炎も穴も木桶風呂も豚も絵本も、ただただ、開口凝視。

彼の父。カールマン。
彼の行く末を暗示する生まれ出てされた虐待。何をどこを切断？
相手が新生児だけに緊張したその一瞬断ち切る見事なワンカットの妙技。
抑圧してきた国や体制への皮肉に皮と肉はなく生脂肪を炸裂させるなんて、なんて無茶なことを…
グロゲロ映画を見慣れていてよかったと思いました。
ギザラとの水辺や水上でのラブラブシーン…またまたなんて無茶なことを…微笑みきれない島国人の冷や汗を実感。

そして現代、細身で笑顔インパクト強顔のラヨシュ。
剥製師と言うより、命の器の封印師。
彼の仕事場はおじいちゃんの幻想ワールドのようでした。
ラヨシュの、ただ剥製にするだけでないその作品に購買欲を刺激されました。

血は肉…水より濃い、の逆をいく親子。
ラストは淫靡なクレーアニメの実写を見ているようでした。
イキのむ美しさ…欲望の化身、その美しさを剥製化し手中におさめた父子。
もう、吐き出さなくても、仕込まなくていい欲望の成れの果ては先鋭芸術的でした。

白い建物の純白内装の展示場の中、様々なデザインの真っ白い服を着た観客達。
どこかで見たような、会ったことがあるような集まり…
「あったことか、なかったことか」
ハンガリーの民話の始まりのようなラストでした。

三回目に逆転して王様になって、
「死んでいなかったらまだ生きているはずです」（＝めでたしめでたし）で終わる、
天才芸術家（剥製師）のハンガリー民話だったのかと思いました。
神々しさや教訓めいたところ、倫理道徳臭のないおおらかなハンガリー民話。
珠玉のそれら名作でぜひ続編を創ってほしいです。

大食い選手のストーリーではエグイ・汚いシーンが多い
剥製師のストーリーは暗い引きこもった感じでチョイグロ

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エガちゃんが
「人間の欲望をダイレクトに描きすぎてキモチワルイ」
「やりすぎ！！！」「でもセンスは好き」と言ってたので
おそるおそる観てみました。

ハンガリーのある３世代の物語。

祖父→性に傾倒した妄想
父（不倫の末に生まれる）→大食い
息子→剥製

にそれぞれとりつかれたような・・・。

祖父の妄想と現実の描写はどちらも生々しく
ちょっとキモチワルイ。

父の大食いの様子。
味わわないで、食べ物を口にかき込む姿が汚い・・・

息子は一見まともですが、
動けないほどに太った父と猫の世話で
どこか内にこもっている様子。
とりつかれたように剥製作りをする・・・。

とにかくキモチワルイ映像満載です。
大食いして吐く、猫が人間の肉を食べる
あるものを剥製にする過程、などなど。

一番「げー！！」って思ったのは
究極の剥製を作るべく挑んだ最後の作品・・・。
これはぜひ観てのお楽しみ・・・（汗

こんな映画誰が作った！？と思って
特典映像で監督を見たら意外にフツーっていうか、
どっちかっていうと男前。
しかも３３歳だそうです。


ホラーのグロ描写に飽きた方は観てみてはいかがでしょう？？？



　

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われながら鑑賞後に時間をおいたレビューはあまり出来が良くないなあと思いながら、性懲りもなく劇場での記憶を辿ります（あまりもう一度見ようという気にならないということもあります）。
　三部構成に分かれています。中身はイントロダクションの通りですが、適当にタイトルをつけると、以下のようになります。

　第一部　祖父の章「自慰」
　第二部　父の章　「嘔吐」
　第三部　息子の章「解体」

　グロいという評判もありますが、どこか作りものめいているので、僕は気持ち悪くなることはありませんでした。
　第一部は妄想の表現がやや面白いのですが、お勧めするほどにイマジネーションが弾けているわけでもないと思います。
　第二部は冷戦時の共産主義的独裁国家の馬鹿馬鹿しさがスケール大きくコミカルに表現されています。臭いそうな脇から汗が一滴顔に落ちるなどの描写もあって、この映画のもっとも気色悪くかつ面白いところでした。
　第三部は、歴史の荒波に翻弄されていた祖父、父の代と違って、社会は落ち着きを見せている気配です。でもそこに生きる息子の内面は、もっとも荒涼としているのかもしれません。とは思いますが、彼の選択は別に興味を惹かれるものでも説得力を持つものでもなく、同じく現代を生きる者として痛みを感じるものでもありませんでした。
　舞台設定は面白いと思うのですが、総じて予想の範囲に映画はとどまり、驚きを与えてくれませんでした。それはこうした映画の場合、かなり大きなマイナスではないかと思います。２５点。

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これは、好き嫌いが分かれるでしょう。
エログロかなり平気で許容範囲は広く、カンフーアクションやドタバタコメディなどよりはるかに自分に近しい感覚で受け入れることが出来ました。
言いにくいけど好きです。

特典で監督いわく、
僕は花火を上げただけ、人間の生き方がどうかとか深めるつもりはなく、最後まであげ続けた作品（かなりうろ覚えです。）だそうですので、
いかに驚きをあたえるか、いかに不快になるかを第一に考え並べ続けた感じです。

そして観客は欲望に支配されたおぞましい人間像をみてぞっとし、気構えをするのですが、そのシュールな映像は案外現実味が薄く、私たちを暗黒の谷に突き落とす素振りをしていながら、肩透かしするのです。
言って見ればまるでアニメの世界のようにとてもおどろおどろしいのだけど、現実感が薄いのです。

第一章　祖父の時代　好きと拒絶が紙一重の話です。中尉の娘の入浴を覗き性的妄想にふけるのはいいけど、誰からも軽んじられる彼の生き方と死に方、童話の中への逃避はちょっときついものが有ります。
第二章　国家的事業として大食い選手の養成をしていくあたりの描き方にはかなり体制への風刺が見えます。共産色バリバリ。食への欲望と言うより英雄としての名誉欲が描かれています。
第三章　ここにあるのも祖父と同等の孤独。しかし、打ち込むものへ埋没してしまう男には現代らしいストレスも感じます。

人として大切にされたいと言う本能的欲求を無視した残酷さが感じられる、良く出来た面白い映画だと思います。