揮発性の女

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『アンテナ』のレビューでは原作に力負けしていると書いた熊切和嘉だったが、本作『揮発性の女』は良い意味で身の丈にあった過不足のない秀作に仕上がっていると思う。

表情や感情の起伏が少ない男女が主人公であり、物語的にもさほど大きな展開はないため、表面的にはいわゆるオフビート作品に類するものと言えるだろう。クールな笑いの要素も少なからず盛り込んであるため、オフビートの代表的な作家である山下敦弘の作品との類似性も強く伺える。もちろんこうした要素もこの作品の特徴であり優れた部分と言えるのだが、個人的にはこれらの陰に隠れた叙情性を買いたい。

女が余りに表情を出さないためそれを和らげるべく男が放屁するのを女が真似て、しかし放屁ではなく脱糞してしまった時の女がさめざめと泣く様とそれを介抱する男の優しさなどはその最たる例だろうし、途中何度か口にされていた花見をラストにおいて結果的に偶然実現することになったシーンはこの作品の中でもっとも感動的な場面だったと思う。そして、これらのシーンやそこから来る叙情性が素晴らしいのはnekoさんが指摘している通り、石井苗子の演技の素晴らしさにある。そう、熊切和嘉は『アンテナ』における加瀬亮の演技がやはり素晴らしかったことからもわかる通り演出の人なのだと思う。

しかし、この作品における石井苗子は本当に凄いと思う。彼女は、高校卒業後に単身アメリカに留学し、帰国後は同時通訳を経てニュースキャスターとしてその名を馳せ、現在東大の医学部において博士号を取得するために研究に勤しんでいるという才女なのに、この作品においてはそんな華麗な経歴とは縁もゆかりもないようなうらぶれた寡婦の役柄を実に見事にこなしている。うらぶれたとは言っても、とても五十歳過ぎとは思えないような色気も振り蒔いており、見ようによってはくたびれたと感じられるようなシュミーズ越しの肢体が実に色っぽく感じられてしまった。彼女の「マニアック」な色気だけでも一見の価値はあると思う。

感情の流れが丁寧に表現され．男と女の気持ちの高まりやすれ違いが手に取るように伝わってきた。過剰な演出やアクションがないから．とても身近で人間臭くて感情豊かな作品だと思った。

おどおどした犯人を前になんともいえない余裕をもって接する未亡人は．もう怖いものも欲望もなく．ただ余命を淡々と生きていたのだと思う。夫と死別し．女であることも忘れて．．．
しかし．彼が彼女を女として扱った瞬間（それがいくら暴力的行為であっても。。）彼女が女としての性を取り戻したのだと思う。それが切なく哀れにみえるけれど．同時に欲望をもった女性の執着で生き生きと輝きだしたように見えた。女のペースに流される男の頼りなさといいかげんさと調子の良さも丁寧に表現されていて微笑ましく．男の性が感じられた。男の性と女の性が本当に絶妙に表現されている。

風邪を引いて寝込んでいる彼女が下着の中に粗相をしてしまうシーンや鍋焼きラーメンをつくるシーンなどのエピソードも微笑ましく．男と女の優しくお馬鹿っぽい繋がりを感じました。本当に人間を描いている作品作りは素晴らしいです。

石井苗子さんの人を寄せ付けないような表情が次第に女の可愛らしさで美しくなっていくのは必見です。そして．こういう知的な女性の扇情的な眼差しと乱れるシーンはやっぱり反則です(笑）

未亡人の寂しさや孤独・女性の中に在る“女”の部分

それらの感情がうまく表現されてはいるものの、切なげな感じが
常に在り、いまいちのめり込めませんでした。

「うん！ドラマだ！」か「あ〜ドラマ観たな〜」って感じです^^

「鬼畜大宴会」を見て以来、熊切監督の事が気になって仕方がありません。
面白い、というわけではないんだけれど、かっこつけてない、人間臭さが感じられて、私は好きです。
この映画は、石井さんの熟女ぶりがすごいです。熟女には興味がなかったけど、綺麗だなぁと感心しました。
たまには、こういうしっとりとした恋愛映画に浸るのもいいですね。

面白い。
とにかく最初から最後まで飽く事無く楽しめた。

ずっと寂しさを押し殺して生きてきた孤独な熟女が、
突然の若い男の出現によって、再び女に目覚める。
食卓を共にしたり、風邪を引いて男の優しさに触れたり、
刹那的なのにのめり込んでしまう。
なんだか全体的に切ないです。

このラブコレクションシリーズ良いですね。
他のも見ましたが今のところはずれなし。
映画の長さも丁度良い。