春琴抄

有名な、谷崎潤一郎原作の、６度目の映画化のこの作品。

耽美的なこの作品を初めて読んだのは、中学生の頃。
少し、子供らしさのないひねくれた子供だった私。古典を読み漁っていた時期、改行や句読点、鍵カッコなどを使わず、独特の文体で書かれたこの作品は、かなり難解でした。


今、流行の執事以上に、献身的に師匠である春琴に仕える佐助に、斉藤工くん。色っぽくて、和服がとても似合い、セクシーです。
春琴は、長澤奈央ちゃん。菩薩のように美しいという設定にしては可愛いんですけど、少し現代風の顔かなと思いました。
とても良かったのが、春琴に横恋慕する金持ち坊ちゃん利太郎役の、松田悟志くん。大阪が舞台なので、台詞は大阪弁なんですけど、彼はネイティブなんで、笑っちゃうくらい上手い。女好きのちゃら夫を軽快に演じています。

従順で、無私無欲で春琴に尽くす佐助。
佐助に対し、高慢で我儘放題に振舞う、春琴。
なぜ、こんなにも相手に尽くせるのか、「させて、もろうてる」と平然と言う佐助。
これは正に、ご主人様と下僕の関係。尽くす自分に酔っている、自分の趣向を満たしてくれる女性の側にいる幸せ、なのではないでしょうか。

最後の自己犠牲のような佐助の行動には、背筋が凍りましたが、女性として、こんな風に尽くされてみたい！−と、思うのは、私だけでしょうか？
もちろん、‘斉藤’佐助にですよ(*^_^*)

　どうして春琴抄が劇化されると、献身愛の話になってしまうのか？
ものすごく不満。
　てる女の語りも「佐助様」ってね、情緒がない。てる女としては「検校先生」でしょう。

　原作世界の変態的な官能は感じられない。佐助と春琴は嗜好を満たすためのエゴをぶつけあっているはずなのに。
　佐助が自分の実家を継ぐことも、何人も生まれた我が子のこともあっさり諦めたのは、献身ではなくて徹底して自分の嗜好を満たすためなんですから。無償の愛という世間の誤解のままに劇化するなんて、道徳の問題があった戦前じゃあるまいし。

　でも低予算ながら（主役の二人が現代的な体系なので、着物の裄が足りないのが目立ちすぎ、着付けも衿の合わせ方、帯の幅、変てこなのが目立ちすぎ、着物がつるつる安物なのも帯も着物も現代的過ぎるのが目立ちすぎ。着付けや考証はもうちよっとなんとかならなかったのか）、頑張って作っている。
　原作のエロスを少しでも表現しようと、トイレ（あれでは厠ではなくトイレですよ）でのやりとりを入れたのだろうが、中途半端だと思う。

　主演の斉藤君は男前だし声も綺麗。利太郎役の松田さんが年上女に興味を持つあほぼんが似合っていて楽しそう。本来琴より若い設定なのでこれはよかった。

　それから「観音様」なんて表現は作品が安くなるからやめたほうがいいと私は思う。凡夫が信仰世界について軽々しく表現するものではないでしょう。だから安くなる。

　近年製作された山口百恵の映画もアイドル映画の域は出ないが、この映画よりお金がかけられていて、琴の衣装は目を見張るばかり。二人の関係も足袋のこはぜをはずすところなんか心憎かった。
　ただし三浦友和より斉藤君のほうがずっといいですけれど。
　現実の男前俳優さんたちより宝塚で佐助を演じた早霧せいなさんの方が断然色っぽくてイカれた変態な感じがよく出ていた。清く正しく美しくの作り物世界にエロスで負けていては情けない。

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　とっても　静かに淡々と仕える　佐助の行動は　仏？観音様？
に自分の魂を捧げたかの様でした。
　煩悩に打ち勝つ精神はどこから　得られたのでしょう？
春琴が　産んだ子供が佐助の子であってほしい・・・。と
つい思ってしまった程です。
　子役のボーイッシュなさわやかさと　ナンパ役のリアルな軽さが
ちょうどバランスよく　重い空気を中和させていた。

おまけの　舞台挨拶での　二人を見て現代版も是非見たいと思った
・　　とてもおしゃれで魅力的です。

百恵、友和の春琴抄も借りて違いを味わって見る予定です。

　なんといっても　斎藤工くんが素敵でした。色っぽい和服姿に献身愛。ファンの方なら一度は見た方が良いです。
春琴役の女優さんは　いまいちかなあ〜もうちょっと美人型の知名度と演技力のある方がよかったかも。

だいこ・・・・役者ってこういうのをいうのだろうか。

私の中の春琴像はイライラさせるわがまま女だが
長澤奈央さん演じる春琴はムカムカするアホ女に見えてしまった。