Ｇメン

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

　 ＦＢＩの草創期の話。州境を越えて逃げてしまうギャングや凶悪犯に対処するため、広域捜査ができる捜査機関としてＦＢＩがつくられた。最初は銃の所持が認められていなかった（地域の警察との兼ね合いだろうか）ので、機関銃まで持ち出すギャングに歯が立たない。Ｇメンというのはガバメント・メンのことで、ギャングがＦＢＩをそう呼んだのが最初らしい。
　キャグニー演じるブリックスはスラムに生まれ、暗黒街のボスに拾われた。このボスが人情家で、キャグニーの才能を見込んで弁護士になるための教育を受けさせる。しかし親友であるＦＢＩ捜査官が殺され、犯人を捕まえるためにＦＢＩに転身する。その経歴からスパイとも疑われるブリックスだったが、暗黒街についての知識や度胸の良さで成果を挙げていく――。（それにしてもイントロダクションはまったく違う話だ）
　キャグニーがギャングを演じた名作の数々では、ついアウトローに感情移入して、そうならざると得なかった彼らに悲哀すら感じてしまうのだが、本作のようにＦＢＩサイドから描かれると、ギャングの憎たらしいチンピラぶりにムカムカしてしまう。
　テンポよくお話は進んで、若々しいキャグニーの軽快な動きも楽しめますが、これといってすごく面白いわけでもありません。監督のウィリアム・キーリーはキャグニーとはよくコンビを組んでいて、自伝でもウォルシュと並べて褒めていたと記憶するのですが、うーんそこまでの力量は僕には感じられませんでした。手堅い、という感じでしょうか。discasにはもう一本、『情無用の街』があるのでいずれ観てみたいと思います。対照的なヒロインふたりのうち、踊り子のほうを演じた女優さんがなかなか魅力的。45点。

あのギャング・スター、ジェームズ・キャグニーがＧメンへ転身！もうそれだけで一見の価値はある。この映画だけに限ったことではないが、1930年代のギャング映画は本当に面白い。何しろ、実際にアル・カポネやラッキー・ルシアーノなどのギャング達が世間を震撼させていた時代である。市中でのギャングと警官達との撃ち合いなどが過去のものとなった後の時代に作られた映画とはひと味もふた味も違うのである。
1930年代は、映画の歴史で言えばトーキーの初期である。映画が獲得したばかりの「音」という新しい武器を使って、映画会社が力を入れたのは、ミュージカルとギャング映画であった。ミュージカルが流行ったのは誰もが理解できることだが、ミュージカルと並んで、撃ち合いやカーチェースなどの凄まじい効果音を伴ったギャング映画もまた、この時代の呼び物だったのである。しかし、ギャング映画は、幾ら社会問題を扱っているとはいえ、どうしてもギャングたちをカッコ良く描いてしまうため、社会の批判を浴びた。ギャングが実社会の問題であっただけに、このジャンルが若者達に与えた悪影響は深刻な問題であり、「映画は絵空事」などとのんきに構えていられる問題ではなかった。そこで面白いギャング映画を次々に放っていたワーナーが、全く視点を逆にして、今度はギャングと戦う命知らずの男達の活躍を描いたのがこの作品なのである。
確かに、悪ガキをそのまま大人にしたようなキャグニーは、ギャング役の方がよりはまっていると言えなくもないが、Ｇメンを演じたこの映画だって、これだけ面白ければ文句はあるまい。脇役で鍛えたレジス・トゥーミーが余りにも若々しいのでビックリした。後にはギャング役もやり、ＴＶドラマの主役でも馴染みの深いロイド・ノーランが、若いＧメンをカッコ良く演じているのも楽しい。しかし何と言っても印象に残るのは、《キング・コング》のロバート・アームストロング演じるタフなＦＢＩの上役。《暗黒街の顔役》でギャングの妹役を印象的に演じたアン・ドヴォラックも良い。この映画でも殺されてしまう役どころだが、彼女にはこういう薄幸の女がよく似合う。その他見所はいろいろあるが、命がけで法を守り、ギャングに挑む男達の心意気をよく描いているのが、通常のギャング映画と全く異なるところである。

ハリウッドの黄金期に、ロビンソンと共にギャング映画で一世を風靡した、ギャグニーが今回は目先を変えて、ＦＢＩ捜査官としてギャングと対決する作品である。彼の持ち味である向こう意気の強いキャラクターを発揮して、盛り上げており、懐かしい思いで観ることが出来た。しかしながら彼は、やはりギャング役の方がグッと面白味があるようだ。