1,026円(税込)「動画見放題※1」プランを
坂築静人は、不慮の死を遂げた人々を〈悼む〉ため、日本全国を旅している。死者が生前「誰に愛され、愛したか、その生きている姿を覚えておく」静人の行為は時には人々に奇異なものとしてうつる。そんな静人に出逢い、共に旅をする倖世。静人の行為に興味を抱き取材を始めるジャーナリストの蒔野。そして、病魔と闘いながらも息子の帰りを待つ静人の母親・巡子。静人の〈悼み〉は関わった様々な人たちの「生」と「愛」に対する考え方に大きな影響をもたらし、誰もが抱える生きる苦しみに光を照らしていく。
むごたらしい殺人事件、社会悪。
それを過敏に感じてしまう繊細な心の持ち主には、生き難い世の中です。
靜人はそんな人の1人で、自殺を選ぶ代わりに死者を「悼む」という生き方を選んでいるのではないでしょうか?
本来なら死に瀕している母親(大竹しのぶ)の傍に付き添い、死に寄り添うのが、息子の姿の筈です。
彼はそうしない。
他者の死を優先します。
天童荒太文学は悲惨で、辛い苦しいものです。
しかし、現実を写している・・・実際に「家族狩り」そのままの現実の事件が起こったりします。
天童荒太さん自身も「永遠の仔」を著した後で精神に変調を来たしたと、語っておられます。
「悼む人」という題名から想像する・・・美しい物語ではありません。
「妻」に自分を「殺す」ように仕向ける悪魔のような男(井浦新)
「親」を恨み、死に目にも駆けつけようとしない雑誌社の記者(椎名桔平)
幸せな人は、1人も登場しませんが、毎日、毎日、新聞やテレビで報道される事件と当事者そして被害者の方とその家族。
私たちは『生きて行く』ために、靜人のように『悼む』という行為で自分の心を『救済』するのも必要かもしれません。
でも「世の中」不幸ばかりではありませんよ。
小さな「幸せ」に満足する「生き方」をしている人も大勢いるのですから・・・。
事故とか事件で亡くなった人の現場に足を運んで悼む人とその周りの人たちの話。
役者さんの熱演が素晴らしい作品で、高良健吾さんの雰囲気は完全に悼む人だし、末期がんを演じる大竹しのぶさん、対人恐怖症の平田満さんや石田ゆり子さん、井浦新さんもよかったです。
映画全体は静かな雰囲気で進む130分で、主人公が旅をしてそこで出会う人たちとその過去。主人公とその家族の過去が明らかになっていきます。
全体的に重たい話の中にサブエピソードがたくさんあるので、物語の流れが途切れ途切れになってしまって集中力がいったり、主人公のただのエゴなんじゃないのかと冷たい視線を送ってしまいそうになったり綺麗な映像を狙いすぎなんではかろうかと思ってしまったりしますが。
役者さんたちの力と演出で130分集中して見られる作品でした。
直木賞を受賞した天童荒太のベストセラー小説を映画化。
週刊誌記者・蒔野抗太郎(椎名桔平)は、死者を「悼む」ために全国を旅しているという青年・坂築静人(高良健吾)と出会います。蒔野は残忍な殺人や男女の愛憎がらみの記事を得意とし、人の善意など信じることができずに、静人の「悼む」という行為も偽善ではないかと猜疑心を抱き、静人の身辺を調べ始めます。
そして、夫を殺して服役して以来、夫の亡霊につきまとわれている女性・倖世(石田ゆり子)も静人と出会い、旅に同行することになります。
静人は「死を悼む」という行為に、憑りつかれた人間として描かれているように感じました。
なので、「悼む」という行為について、静人なりに思い悩み、葛藤するシーンがあれば、もっと良かったように思います。
それでも、静人が、死者の思い出に耳を傾けてくれて、静人を通して心の回復を遂げていく姿を見ていると、傷ついた遺族にとっては、どれだけ癒された事か?と思います。
愛されて死んだことを忘れずに記憶にとどめてくれる人がいるのは、幸せなこと。命の重みを感じ取れます。
非業の死を遂げた人間にとって「ただ覚えておく」それだけで救われる命もあるのかな?とも思いました。
母(大竹しのぶ)の息子を思う眼差しに熱くなり、どうしようもない記者が変わっていく様が良かったです。