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34歳で急逝した女優が起こしたある奇跡とは・・・。本作で取り上げられているのは、今は亡き伝説の女優“林由美香”。彼女はAVに留まらずピンク映画、テレビ、一般映画を一切問わず出演し、NHKのドラマ作品ではカンヌ映画祭に招待されている。彼女と仕事をしたかったドキュメンタリー監督の俊才・松江哲明は、彼女が亡くなった後に発掘された、彼女主演の韓国産ビデオ「東京の人妻 純子」に出会い、衝撃を受け、憧れの女優の足跡を追って韓国へ旅立った。そこで彼が発見したものとは・・・。
林由美香に思い入れが無ければ、このドキュメンタリーを観る意味は薄いだろう。80年代後半から90年代にかけて、200本超ものアダルト作品に出演した、知る人ぞ知る有名女優・林由美香。(これは完全に主観だが、彼女は取り立てて美形でも無ければ、ダイナマイトボディでも無い。演技も特に上手くはないと思う。 あくまで主観ね)そんな彼女が何故、人気女優として一時代を築けたのか。そして、34歳で急逝した事実への釈然としない何か。林由美香の人生を追うならば、テーマはいかようにもあったはず。
本作には、直接間接に由美香の人生に関わった男達が、次々と現れる。しかし聞き手である松江哲明の遠慮ゆえか、彼らの重い口を開かせるには至らない。特にカンパニー松尾と平野勝之という二人の男には、もっと突っ込めただろうにと思うが。
カンパニーが『硬式ペナス』作中で行った、前代未聞の愛の告白。カンパニーと由美香の恋(のようなもの)については『職業・AV監督』(井浦秀夫/画)に詳しい経緯がある。当時のカンパニーの切実な想いを知っていれば、彼女の死を淡々と語るその心の奥には、まだ何らかの残心があると思わずにはいられない。
同じく、前代未聞の不倫旅行&そのドキュメンタリー『由美香』を撮った平野勝之にだって、語れそうな話は他にいくらでもあったように思う。ゆかりの地を巡って思い出話に浸って終わりでは、食い足りない。人の心に踏み込むのは嫌なことだが、こういうドキュメンタリーでそれをしないならば、作る意味が無いじゃないか。
さて、問題の作品『東京の人妻 純子』これは確かに林由美香のディスコグラフィーの中でも、飛びぬけて異質な作品だ。韓国人スタッフによって東京で撮られ、由美香以外のキャストも韓国人。しかし全員がカタコトの日本語で喋り、そこにハングルの字幕があてられている。なぜこんな不思議な作品が撮られ、なぜ林由美香が出演したのか?
疑問に思った松江哲明が、当時の関係者を訪ねて、韓国に向かう。ちなみに松江氏は元在日コリアンであり、観時からの生い立ちや家族の姿を描いた『あんにょんキムチ』という作品を撮っている。98年以降の韓国国内での日本文化開放、その混乱と熱気の中で撮られたこの『純子』という作品の謎に、松江は迫れたのだろうか。
作中、最も感心したのは…彼女のお葬式の出棺の時、お棺を担いだのが、全員彼女と寝たことのある男だったというエピソード。仕事で寝ただけというのでは無く、気持ちを通じたうえで寝た男達が多いというのだが。
これって、或る意味では、女性冥利に尽きるのか… さあ、どうなんだろ?
私の知らない映画の世界・・・エロ映画。
しかしそこにもちゃんと監督がいてカメラマンがいる、女優がいて男優がいる、脚本もあり編集もされて知らないどこかの映画館で上映されたりビデオやDVDになったりしているのだ。
普通の映画より全ての規模が小さくなっているだけで、その都度、製作の目的や思いがあるということを全く知らずに生きてきた自分を少し恥じた。大昔キネ旬のランキングで興味を覚えて観た相米監督の「ラブホテル」というのがあったが、若かったしあまり覚えていない。今回もキネ旬のランキング(12位)であまり気にせず観てみたが、年齢を重ねた今、新たな思いが伝わった。
メインはエロでも、金は少なくても物語を紡ごうとあえぐ知らない監督達、そりゃ出演女優に惚れたり、贔屓にもするだろう。彼らのエリアで製作されるものの中に光を放つものもあるようだ。この映画を観た後ネットでいろいろ調べたがいくつか評価の高いものも見受けられた、機会があればチャレンジしてみたい。
長々と書いたがこの映画を観てこんなことばかり考えた、映画は林由美香という女優を追うドキュメンタリーだが、私には違う所が響いたようだ。
タイトルにひかれて見たが、なんとも煮え切らない内容に苛立ちを覚えた。
。「あんにょん」などというからには、この女優には在日韓国・朝鮮人か、元在日といったような出自があって、それが韓国エロ映画への出演の動機ともなったのではないか、てなことを追求する展開を勝手に期待した自分も悪いのだが。
それにしても「ドキュメンタリー」作品にしては、だいぶん詰めが甘すぎやしないか。
作中、林由美香に惚れた某監督が、「きみだったら普通のOLとかだって充分出来ると思う」とかいうのにたいし、「それでは私が私でなくなってしまう」とか答える当時20歳前後の林由美香が「すごい」とかいわれているが、なにがすごいんだかサッパリわからない。
私も高校中退して水商売にはい(らざるをえなか)ったが、そんな当時の私に、「きみだったら普通のサラリーマンだって立派に勤まるよ」とかいうやつがいたとしても、私は林由美香と同じような答えをしていただろう。
高校中退というだけで社会的にはすでに裸同然なのだから、ちょっと見た目のいい女子が裸一貫の女優として身をたてようとすることは、きわめて凡庸ともいうべき成り行きだろう。
その中でも林由美香には特別な何かがあったのだ、ということならば興味もわくが、少なくともこの映画からは、そんなものはちっとも示されていないとしか思えないのである。
以上のような内容的な「甘さ」のほかにも、「ドキュメンタリー」としてはいかがなものかと思わせる点を2点ばかり指摘したい。
林由美香出演の韓国エロ映画「東京の人妻 純子」の監督(ユ・ジンソン)が、本作の松江哲明監督から、「最後に監督したのは何ですか」と質問されるのにたいし、堂々と「ペ・ヨンジュンを起用したピルグ(邦題「初恋白書」)です」と答えているのだが、これは明らかにウソではないか。
「初恋白書」は1995年公開(ネット調べでは97年公開となってるものもあり)で、「東京の人妻 純子」のそれは2000年なのだから。
ちなみに「初恋白書」は駄作だが、その駄作ぶりからすると、これ以後一般公開作が撮れなくなってしまったために、韓国では犯罪スレスレのエロ映画制作で辛うじて生き延びてきたというのが、ユ・ジンソンという人の人生行路だったと推測される。
そんな監督が作中、こんな発言をしている。
「純子(林由美香を指す)が、その…ややかんばしからぬ仕事をしたことについて残念に思い、そんな純子について知っているままをお話したい」
以上は実は私の訳で、字幕では、
「純子が亡くなってしまいとても残念です。今回の取材は純子のために引き受けました」
というようなものになっていた。この違いはなんなのか。私の語学力の不足によるものなのか、制作側のなんらかの誤魔化しによるものなのか、よくわからない。
ただ、私の訳のように解釈すると、「女優にベタベタ触りまくったり、ニヤニヤしながら明らかに(契約違反の)本番をやらせようとしたりして、こいつ本当にスケベなヤツなんだなって思いました」という、「無責任な監督」としての共演者の評言と一致するような気がするのである。
作中では平野勝之監督も登場し、松江監督にたいして「誤魔化すようなことはするなよ」とクギを刺すシーンがあるのだが、この作品では平野にとうてい顔向けできないのではないかと思った。
「松江くん、まだまだね」(林由美香)はまだまだつづく……か。