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U2「ブラディ・サンデー」はここから生まれた!2002年ベルリン国際映画祭金熊賞受賞、サンダンス映画祭で堂々のグランプリ受賞。1972年1月30日北アイルランド、デリーでの“血の日曜日事件”をドキュメンタリー・タッチに描く緊迫のルポタージュ!!
まず、初めてにフルドキュメンタリーと言うことでエンターテイメント性は全く無い映画です。緊張感を出す為に初めから最後まで騒がしくストーリーが進みます。流血の描写はすれほどきつくはありませんが、無抵抗な市民に発砲した軍に対しイギリス政府が勲章を授与し、女王が叙勲をすると言う結末はアメリカでの白人の黒人に対する差別を思わせます。カメラもちょこちょこぶれがあったり、字幕と実際に言っている台詞が違っているなど、少しちぐはぐな面がありますが、イデオロギーが衝突するドキュメンタリー映画を好む方には良いと思います。
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本作はドキュメンタリーではなく、いわば再現ドラマですが、血の日曜日事件の一日を、シャープに描き切った秀作です。
ただ、僕が魅了されたのは、アイルランドについて元々関心を持っていたからかもしれません。以下、半可通ながら・・・。
アイルランドはローマ・カトリックの国ですが、プロテスタント(英国国教会)の英国の支配をうけることとなった後も同化せず、異宗教による支配、差別と搾取に抵抗し、数百年にわたり独立運動を展開しました(『静かなる男』『ザ・デッド』『ライアンの娘』などは、アイルランドの歴史と結びついた傑作とも言えるのですが、ぞれままた別の機会に)。
第一次大戦中のイースター蜂起を契機に、南部がアイルランド共和国として独立しましたが、北部は北アイルランドとして英領に残りました。このあたりはニール・ジョーダン『マイケル・コリンズ』に詳しいですが、ちなみにこの独立運動の武装組織が、アイルランド共和国軍=IRAです(後に分裂)。
なぜ北アイルランドが残されたかというと、英国の植民政策により、この地域に限ればプロテスタント住民が多かったからです。以後、北アイルランドでは少数派となったカトリック住民には、プロテスタント住民に掌握された地域政府によって、住む地域や就職など、さまざまな差別が課せられました。それは宗教的対立というより、アメリカの黒人差別を彷彿とさせるものです。
IRAが武装闘争を行えば、プロテスタント側の武装組織が報復を繰り返す。出口の見えない問題解決のため、60年代以降、平和的な公民権運動に可能性を見る人たちが出てきました。
そのデモ行進に対する英軍の襲撃が、本作が描き、U2の歌う血の日曜日事件です。この事件以後、北アイルランドはまさに泥沼の戦争状態に突入していくのです。
このあと『ボーン・スプレマシー』に抜擢されるグリーングラス監督は、手持ちカメラのみ、照明なしで撮影された徹底したドキュメンタリー・タッチの中にも、登場人物たちのドラマをくっきりと浮かび上がらせることに成功しています。80点。
長々読んでくださった方、ありがとう。