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ゾディアック

  • Zodiac
  • 2007
  • アメリカ
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    解説・あらすじ

    『セブン』、『ファイト・クラブ』の監督が放つ、実際に起こった未解決事件に基づくサスペンス・スリラー。“ゾディアック”と名乗る連続殺人犯と、その事件の解決に挑む者たち。「殺人」と「真実の究明」という全く逆の立場にいる人間たちが、謎が謎を呼ぶ事件を巡り、次第にその運命を狂わされていく…。ジェイク・ギレンホール、ロバード・ダウニーJr.、マーク・ラファロ、クロエ・セヴィニー等、豪華キャストのアンサンブルで贈る、至高のスリラー。

    キャスト・スタッフ
    監督:デビッド・フィンチャー 出演:ジェイク・ギレンホール マーク・ラファロ ロバート・ダウニー・Jr アンソニー・エドワーズ 音楽:デヴィッド・シャイア
    作品・情報
    再生時間 : 02:37:49
    字幕 : 日本語
    音声 : 英語
    視聴制限 : <レンタル>初回再生から48時間
    購入期限 : <レンタル>2022年08月31日 23:59
    対応機器:
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    男達の間に色濃く漂う閉塞感。
    投稿者:JUCE
    2007年11月16日

     この映画もきっと『トゥモロー・ワールド』と同じように長い割には犯人の描きこみが足りないという批判を受けるような気がします。そもそも題材が実際に起こった全米を震撼させた連続殺人事件をベースにしているし、『セブン』『ファイトクラブ』のでフィンチャー監督の最新作と来れば途轍もないサスペンスミステリーかと思い込んでしまうでしょう。
     しかしそういったサスペンスやミステリーの部分を期待してこの映画を観るとかなり肩透かしをくらうかもしれません。この映画は綿密に事件をリサーチしてかなり事実に基づいて話が進められているようです。従って実際に未解決に終わったこの事件がこの映画で解決されるわけではないのです。一応ラストではそれらしい推測は立てて幕を下ろしていますが、これは監督のサービスのような物でこの映画の描こうとした主題とはあまり関係がありません。私としては無くても良いシーンのような気さえしました。
     事件が解決しないのと同様、犯人が特定できていないのでこの事件の犯人の事件までの背景や事件時の犯人の心理的なプロセスに至ってはほとんどと言っていいほど語られていません。これはリアリティを追求すれば当然のことで、実際に犯人が捕まって自白などの資料があるわけではないのですから。
     この映画はドキュメンタリーライクな進行で、まさにドキュメンタリーを観ているような感覚に陥ります。いや実際に綿密なリサーチの上で構成された本作は一種のドキュメンタリー映画と呼んでも差し支えないのかもしれません。同じくドキュメンタリーライクなフィクション『ユナイテッド93』で私が感じたキナ臭いはこの映画からは感じる事はありませんでした。それはドキュメンタリータッチにする以上知りえない事は憶測で描かないという公正さがこの映画にはあるからです。
     メイキングでも監督自身が話していますが、ゾディアックの事件そのものは今から考えるとチープな殺人事件です。犯人もボロをたくさん出し、事件もかなり幼稚な部分があるにも関わらず、それ以上に当時の捜査の技術的あるいは構造的な問題で解決できなかっただけの話なのです。
     それでは監督はこの映画で何を描きたかったのか?それはズバリ当時この事件にある意味魅入られた男達のヒューマンドラマです。そういった視点で見ればこの映画はかなり違って見える筈です。特に主人公3人、記者エイブリーと風刺漫画家グレイスミス、そして
    サンフランシスコ市警の刑事トースキーの心の葛藤。閉塞感、絶望、希望といっためまぐるしく展開する心理状況は丁寧に描きこまれておりなかなかの迫力です。犯人に焦点を当てるのでは無くこうした地道に事件を追った人物たちの物語にしたのは成功だったのではないでしょうか。

     本作はは“VIPER”というフルデジタルカメラで全編撮影された映画です。デジカメのRAWデータ撮影の映画版と思っていただけるとイメージしやすいかと思いますが、デジタルデータでありながら色調やホワイトバランス、露出などの現像が出来るのです。ここにフィンチャー監督の映像へのこだわりが良く現れています。さらにフィンチャー監督はテークを重ねる事で有名だそうで、フィルムには戻れないと言っているようですね。人物の面白さに目を奪われて見落としがちですが最初の空撮の夜景や物語の中でも時代設定に合わせた映像処理が使われおり、違和感無く70年代が表現されています。この映画を観るとデジタル撮影もフィルムと遜色の無い表現力を身につけたと言えるのでは無いでしょうか。

     全体の長さもさることながら様々な観点から本当に見応えのある映画です。

    「セブン」への挑戦状
    投稿者:masamune
    2007年09月28日

    このユーザーレビューはネタバレを含みます

    1969年7月4日独立記念日、カルフォルニアでドライブ中のカップルを銃撃、女性は多数の弾丸を受け死亡、男性は命を取り留める。警察へ犯行声明の電話、新聞社に犯行の詳細と謎の暗号文を送付し一面に掲載しなければ大量殺人を決行と脅迫・・・全米を揺るがす連続殺人事件「Zodiac」が幕を開けた。

    この事件はベトナム戦争の傷が癒えない米国民へ強烈なインパクトを与えた・・・犯人は未だ捕まらず、事件も未解決。陰湿なのは、テレビや新聞と言った当時の最先端メディアを駆使し、犯人と警察が公衆の場で頭脳ゲームを行う点だ。不謹慎極まりないが、犯行の残虐さが世論を動かし、警察は窮地に追い詰められる。
    この事件で思い出すのがClint Eastwood主演「ダーティハリー」。自己顕示欲の強いゾディアックへ、元ネタと公言すれば観に来ると警官を張り込ませた話は有名で、本作も自嘲気味に言及。

    David Fincher監督と言えば「セブン」と言う方も多い。確かに良く出来た映画だが、似た作品ばかりも作れない。本作も「パニック・ルーム」と同様、監督に染み付いた「殻」を打ち破る事を念頭に製作。
    未解決事件を悪戯に弄っても、警察が提示した証拠以上のモノは無い。迂闊に示唆すれば訴訟大国のアメリカ国民が黙って無い、もちろん幾人もの犠牲者が居る為に軽系に語れない。連続殺人鬼の代名詞ゾディアックを、どう料理するのか公開前から大いに注目された。

    私はスリラーとして、一定の評価は与える肯定派。多くの方は「セブン」の様な華麗なオチを期待なさり嵌まったかもしれない。無理も無いが異質なテーマと考えれば得心が行く。
    「セブン」は飽く迄も映画としての虚構の産物で在り、本作は実際に殺害された被害者も多い。現実に起きた事件を丁寧に描く一方で、出来事の「謎」を解き明かす事を敢て主眼とせず、稀代の犯罪者を探求する刹那、普通の人だった主人公が悪魔に魅入られた輪廻に呪縛され、社会性から乖離する様を、丁寧に描いた点にこそ活目したい。

    事件に入れ籠む事で、人としての情緒とか人間性が希薄に成る過程を真摯に描き、一般人も殺人者も等しく「人としての愚かさ」を痛烈に描く・・・「セブン」と言う稀代の傑作を前に、それと対極的な作品を描く事で、監督としての力量を自ら問う、センシティブな作品なのだ。
    更に結末に一定の根拠を導き出した点も評価したい。この様な未解決事件を題材にすれば、どうしてもオチは宙吊りに陥る。事件を物語の様にスッキリ解決出来るのは、虚構の映画の中だけ・・・名声を捨てる覚悟で挑んだ本作を、責める事は出来ないし、これで過去への禊は終わったと思う。

    ※補足
    一緒に見た友人は本作よりも面白い作品が有ると嘯く、それは韓国映画「殺人の追憶」。これも未解決事件を扱うが、登場人物の掘り下げ方も上手く、面白い・・・頑張れハリウッド!。

    リアルな狂気
    投稿者:よふかし
    2007年12月18日

    このユーザーレビューはネタバレを含みます

    (細かい内容に触れています)

     とても魅せられました。確かに上映時間は長いのですが、長いとは感じられませんでした。最後まで緊張感を失わない、見事なサスペンス映画であると思います。ことに恐ろしく、印象に残ったのは、湖畔でのアベック襲撃と、車に細工をして赤ん坊を連れた母親を誘い込む夜のシーンでした。
     真昼間の湖畔のシーンは、のんびりと明るく美しい風景の中に、あのような奇態な黒装束の男が林の向こうからのそのそとやってくる、その様子を引き気味の構図で淡々と捉えています。太陽に照らされたゾディアックの強烈な存在感は、ほんとうに恐ろしいのですが、同時にその映像はどこかズレた、とぼけたユーモアのようなものを生み出している。それを感じたとき、僕は、ああこの男はほんとうに狂っていると感じました。正常な世界とズレてしまったゾディアックの狂った世界を、このシーンは見事に、リアルに表現していると思います。
     夜の車のシーンは、対象的にスタンダードな演出でジリジリとしたサスペンスを濃縮して、その頂点にゾディアック(なのでしょうか)の恐ろしい台詞をぽんと投げ出し、その次に起こったろうことはばっさり省略してしまう。この語り方はとてもうまいと思いました。デヴィッド・フィンチャーの映画はしばしば、物語というよりも、語り口のうまさで愉しませてくれるような気がします。
     実話をもとにしているということは、犯人がはっきりしないとかカタルシスがない点で、枷のように感じられる場合もあるかもしれませんが、僕はほとんどマイナスではないと思いました。JUCEさんが見事に看破されている通り、本作は『ユナイテッド93』がまとっていたアンフェアな気配を免れ、映画としてフェアな印象を残します。
     それは(まだ自分でも確信はもてないのですが)、この作品がたとえば被害者の鎮魂であるとかいった表層的な意図で自らを着飾っていないこと、また事件に何らかの「意味」を付加しようとする傲慢な姿勢を持っていないためではないかと思います。まさに、事実に謙虚であるのです。
     そのように事実に謙虚な姿勢を可能にしているのは、主要な三人の登場人物の人間ドラマに的を絞ったことでした(グレイスミスがゾディアックの狂気に魅せられて行く過程は、むしろやや早急な感じでもっとじっくり見たかった気もします)。いくら資料や取材をもとにしても、ここには多くの虚構が混在していることが分かります。つまり、矛盾して聞こえるかもしれませんが、虚構(ドラマ)を持ち込むことによって、このような見事な「事実に基づいた作品」が生まれているのです。75点。

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