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フランク・ミラー(『シン・シティ』)のグラフィック・ノベルを基に、レオニダス(ジェラルド・バトラー)率いる地上最強と謳われた300人のスパルタ軍が、クセルクセス(ロドリゴ・サントロ)率いる桁違いの軍力を誇るペルシア軍の巨大軍勢を迎え撃った“テルモピュライの戦い”を、迫力のライブアクションと斬新なCGIアニメーションを融合し、新たな映像革命を起こした!人類史上最強の男たちの勇姿を描いた、衝撃の歴史スペクタクル超大作!
映画館で見たときの感想。こりゃバカ映画。前編、CGで加工されており、実写というよりアニメに近い感じです。
首が飛んだり、手足が切られたり、結構残酷な場面があって、首の切り口をスローで見せるなど、スプラッターですが、アニメみたいな映像なのであんまり残酷さを感じません。
悪役のペルシャ軍は王様からして両性具有みたいなイメージで、軍隊も巨人だったり顔面が崩れた日本の忍者みたいな連中だったり、スパルタを裏切るせむし男は全身がフリークスだったり、もうバケモノばっかりです。王の陣地なんか、顔が半分崩れた半裸の女たちが絡み合って、ベックフォードの「ヴァテク王物語」みたいな感じで、凄いです。泥臭い昭和の紙芝居のイラストを絵巻風に見ているような印象で、私はもの凄く面白かったです。
その分、リアリティは犠牲になってます。というか、まったくリアリティがありません。いきなり身体障害者は生まれるとすぐ谷に放り投げて殺すというようなスパルタの狂った風習が描かれ、その後は子供たちが殴り合って強くなる反ヒューマニズムな教育。それでいて、そんなムチャな国に、テロと闘う現在の米国を無理やりイメージとして継ぎ足しております。そこがこの映画の決定的にダメなところです。応援したくなくなっちゃうというか、しらけちゃいます。
300人のスパルタ軍たちは、10万人のペルシャ軍と闘うのに、やたらと「自由」「民主主義」を口にします。自由のため、民主主義のための闘いだ、というわけですが、前半で狂った国であることを存分に見せつけられておりますので、「コンナ国で自由も民主主義もあったもんじゃないだろ」と思ってしまいます。相手がアラブ系や東洋系の異形の人たちで、それに対しヒロイックな白人たちが闘うとなると、どうも9・11以降のテロに対する自由と民主主義の闘いを思い浮かべてしまいます。
ひょっとしたら、「自由」「民主主義」といって戦っている現在の米国は、ホントは狂った国なんだ、ということがいいたいのでしょうか?いやそんなことはないみたいです。
現実は数が圧倒的に多い(ペルシャ側)のは米国で、数が少ない(スパルタ側)はイスラム勢力(ゲリラ側)なのではないか、など余計なことも考えて紙芝居風絵巻物を素直に楽しめません。なんか、知能指数ゼロの映画なら面白かったのに、中途半端に知能指数が低いというか。
しかし、そんな余計なことを考えずに素直に残酷紙芝居を楽しめば良いのかも知れません。動く怪奇イラスト集としては非常に良く出来ていると思います。
年に数本は後年へ語り継ぐ映画に出逢うが、本作はソノ資格十分と絶賛したい。300人 vs 1000000人なんて戦国の、真田家 vs 徳川家以上の趣だが、そのヴィジュアルの凄さは「マトリックス」の衝撃を凌ぐ!ハリウッド復権のスペクタクル巨編。
私はFrank Millerの一連の作品は評価しないが、本作を見てテーマが悪かったと思い直す程の出来栄え。「シン・シティ」のグラフィック・ノベルをベースに「テルモピュライの戦い」を描くが、最大のポイントは史実で有りつつ、かなり前(ざっと2500年)と言う古さが良い意味で脚本に作用し、「歴史モノ」と「空想モノ」との境界を見事に捉えた着想の勝利、と思う。
まるでプレイステーション3の様な、超リアルなC.Gはまるでアニメの様だが、其処に汗臭さは無い。このリアル感溢れる映像美と、相反する演出のリアル感の無さ(わざと痛みを感じない)描き方は秀逸。
これだけ殺戮ばかりならウンザリする筈が、爽快感すら感じるのは、リアル感の欠如に尽きる。それが十分に計算されて演出されてる点も小憎らしい(笑)。
戦闘モノで重要な「戦う理由と正義」を丁寧に描き、その高い物語性も評価したい。なぜ無謀と言える数の違いを超越して戦うのか?その答えも思想感の観点から上手く説明してる。単なるアクション映画と格の違いを感じるのは、緻密に計算された脚本の一貫性の成せる業だ。
世紀の映像美は、コントラスト、グラデーション、フォーカス、クオリティ・モデファイの何れを撮っても素晴らしく、其処にはツルツルの触感と言うより、ザラ目の質感とも言える究極の装飾美を目撃できる。
単にコマとしての映像美に留まらず、フィルムの多様なスピード感も凄い!スロー、コマ送り、早回しと変幻自在な編集はダンサブルで、リアル感の喪失を敢えて鮮明にする事で、飛び散る「血」さえ美しく感じる・・・極めて鮮烈なヴィジュアルだ。
更に凄いのは、見せ方の「距離感」だ。此れほどまでの大軍を描く場合、画角を広く撮って全体を見渡す映像を撮りがちだが、それは×。確かに数の多さは確認できるが迫力不足は否めない。逆に接写だとスピード感は得られるが、何をやってるのか解り辛い。
この格闘戦の微妙な「間合い」も実に絶妙で、これは実写では難しいV.F.Xの賜物。近接撮影でも動きが分かり易い甲冑のデザイン一つを見ても、細かいディティールに配慮してるのも憎い。
しかし作品の全てが手放しで褒められるかと言えば、そうでも無い。
特定の宗教国が公式に抗議した事でも分かる様に「歴史劇」としてのリアリティも本作には無い。日本の大河ドラマも史実と異なる演出過多が散見されるが、本作は確信犯的に歴史認識を歪曲化してる。
其処には民主国家を標榜する唯我独尊国と、専制国家を堅持するマイノリティとの国家観の違いまで言及する、シビアなプロパガンダも垣間見える。そこで配給元がユダヤ系のWarnerと思い出す・・・相変わらず思慮深いスタジオだ(笑)。
それでも私は本作を見て、このヴィジュアルを使った「風林火山」を見たくなった・・・その意味でハリウッドは少し復権したと思う。
一時期音楽ではビジュアル系バンドなるものが流行りましたが、最近ではムービーも内容云々はともかくビジュアル重視で押す映画が多くなってきて、これはこれでひとつのムービーのジャンルを形成してきているんでは無いでしょうか。こうした作品群はいわゆる王道のこれまで映画と言われていた部分とは若干異質な存在のような気もします。従来の映画と芸術祭に出展されるアート系の実験映像の中間のような存在。
同じくフランク・ミラー原作の「シン・シティ」しかり「ルネッサンス」しかり、そして「ベオウルフ3D」などもこのジャンルに含まれると思います。
こうした映画が多くなってきた背景にはやはり映画のデジタル化とそれに伴うCM業界の監督の参入が大きく影響していうようです。
従来の映画と同列で考えるとストーリー的には、なんとも底が浅く、人物描写も平板。
でも私自信はこの手の映画はキライじゃないです。これらの映画は内容はともかくのビジュアルセンスを観るだけでも私は十分に楽しめます。でもその評価は例えば私が最近高く評価したアルモドバル監督の「ボルベール」を評価するのとはベクトルの方向が全く違った部分での評価なのです。
ビジュアル系バンドもその後は実力が無いと生き残れなくなったように、いずれはこうした実験映像的作品も淘汰されて行くのかもしれません。言わば映画も過渡期にあたるのかもしれません。
すっかり横道にそれましたが、本作には深い内容はほとんど無いに等しいです。おそらく史実もかなり捻じ曲げてありフィクションに近いものだと思います。脳内まで筋肉にしてご覧頂くと実に痛快な映画です。「反イスラムをアジテートするプロパガンダ」だとも言われているようですがそこまで深い考えも無さそうな気がします。
なんだか褒めているのか貶しているのかよく分からなくなってきましたが、大人向けの血みどろファンタジーとしてお楽しみ下さい。(アッ、あくまで自己責任でお願いします)