アラビアンナイト　三千年の願い

ナラトロジー研究者であるアリシア（ティルダ・スウィントン）。
（ナラトロジーとは物語論の事で、物語や語りの技術や構造について研究する学問分野である。）
（日々、ワクワクするお話にめぐり逢いたいと思い、心揺さぶる本や映像作品に接したいと願う我々が
「物語」についての「物語」をレビューするとは、こそばゆい気分であるが、
ジョージ・ミラー監督のこの作品がワクワクするものになっているかどうかはまた別の話である。）
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アリシアはトルコで行われた研究会に出席した際、イスタンブールのバザールで綺麗なガラスの瓶を買った。
ホテルでちょっとこすったら、驚け！瓶の中から魔神ジン（イドリス・エルバ）が出てきたではないか。
ジンは出してくれたお礼にアリシアの3つの願いを叶えると言う、叶えたら呪いが解けてジンも自由を手に入れるので「さぁ、どうぞ！」と促すのだが。
相手は物語の専門家だ。３つの願いというものが、みんなアンハッピーな結末になった事を知っている。

魔人は自分の言葉を信用してもらうために、アリシアに3000年に渡る彼の物語を語ることになる。
（ふむふむ。ここは荒ぶる王様をシェヘラザードが夜毎、物語を語る構成の男女逆の枠組みになってるのね）
ここで語られる魔人の話が前半の見どころである。極彩色で表現された古代の美術や、踊りも美しく栄華を感じさせる。
魔人は3000年の間に三度も瓶の中に幽閉された。。魔人を最初に幽閉したのはソロモン王。
ソロモン王に愛されたシバの女王のお話。、次はオスマン帝国のスルタンと結婚することを願ったグルタン、（オスマン帝国のハーレムがすごい）、
そして最後の女性はトルコの商人に嫁いだゼフィールだった。
それぞれの女性の腹黒さがなかなか面白い。

だが、アリシアの現在パートに戻ると、なんか地味。昔の女性ほど金に困っていないし、
地位だって満足しているからギラギラ欲していない。
そうすると、あとは「マイ・パートナー」なのか。おやつを鼻先に掲げたまま長々と犬に『待て！』をするがごとくジラしまくるアリシア。
（性格悪いなぁ。笑）

結局、「愛」を要求して、愛し合うことになったふたり。（そりゃ、3000年分の愛の話を聞かせられちゃ好きにもなるよね）、
二人はアリシアの暮らしていたロンドンへと移ることになる。ところがロンドンという場所の過剰な電波が原因で、魔人は体調を崩す。
（どんどん死人みたいになってゆくイドリス・エルバ・・その崩壊ぶりはなかなか美しい）
これではダメだと、やり方を変えるアリシアとジン。

以後は、失速というか、つまらないと言ったら言い過ぎか、わかりにくい、何だか理解しかねる展開になってゆく。
ここがシャキッとしてたらいい映画になったのに！
でも、願いを完遂させない事でいつまでも魔神を繋ぎ止めておくとしたら・・・
いっちばん腹黒いのはアリシア、お前さんでないのかえ？

それとも・・ナラトロジー命のアリシアは、「ナラトロジーの枠」という小瓶に魔神を閉じ込めてしまいたいのかも！

マッドマックスシリーズをつくったジョージ・ミラーの最新作というので観てみたのだが、アクションシーンはほとんどなかった。
CGで古代オリエントの王朝を映像化したりしていて、カネはけっこうかかっていた。
なので、出だしは面白そうだったが、中盤からお話が失速し、そのまま終わった。

壷だとかランプのなかから出てくる魔法使いのジニというキャラクターは1960年代のテレビシリーズの「かわいい魔女ジニー」が最初なのかと思っていたが、そうではなく、これはもともとアラビアの神話上のキャラクターらしい。魔法使いだと人間の一種だが、もともとの形態は精霊、妖怪、魔人など一群の超自然的な生き物の総称だそう。で、これはひとりではなくて多数いて、イスラム教徒のジニもいればそうでないジニもいるそう。
1960年代のアニメの「大魔王シャザーン」や「ハクション大魔王」もこのジニのよう。2019年のディズニー作品の「アラジン」に登場したウィル・スミスもジニである。

で、この作品では、イドリス・エルバが演じるジニを呼びだした者は3つの願い事を叶えてもらえる。で、イドリスはその3つの願い事を叶えると自由になれる。ただし、願い事には限界がある。永遠の命や罪の赦しや苦しみを取り除くようなことは願っても叶えられない・・という設定。

イドリスを壷の中に閉じ込めたのは古代イスラエルの3代目の王のソロモン。
ソロモンはシバの女王とねんごろになるのだが、シバの女王はそれまではイドリスと暮らしていた。で、イドリスが邪魔になったソロモン王はイドリスを壷の中に閉じ込めて海に捨ててしまう。で、イドリスは2千年もの間、海底でじっと世に出られるのを待っていた。で、何人かイドリスを壷や瓶の中から呼びだした者がいたが、どれも3つの願い事を完了しないまま死んでしまう。
で、現代に至り、ティルダ・スウィントンがトルコのお土産屋で買ったガラス瓶をこすっていたらイドリスが出てくる。

ティルダはしかし、3つの願い事を言わない。彼女は物語を研究する大学教授らしいのだが、何不自由のない生活をしていて、魔法の力で人生を変えてもらいたいとは思わないそう。で、なんにも起きずに映画は終わる。

何不自由のない暮らしをしていても、何かあるんじゃないの？・・って思う。ポルシェを買いたいとか、高級マンションに引っ越したいとか、なにかの賞を受賞したいとか、大富豪になれるだけのカネが欲しいとか・・。
わたしならば、とりあえず無限にカネを引き出せる銀行口座をつくってもらう。で、日本のテレビ局を全部買い取ってバカな放送をやめさせ、新聞社を全部倒産させる。で、ちゃんと仕事のできる者を立候補させて総理にし、日本経済を建て直す。あと、iPS細胞の研究にどかどかカネを入れて自分の肉体をまるまるつくり直してもらう。2つ目の願い事はアメリカの外交問題評議会を解散させ、ロックフェラーやロスチャイルドによる世界支配を終わらせること。3つ目の願い事はやっぱり女だろうなあ・・。

序盤は７０点、中盤６０点、
終盤３０点といったところでしょうか。
終盤の失速が とても残念です。

あ〜〜〜あ。無念。睡魔に襲われ・・・・・・

４点

まあまあでした。