ソフト／クワイエット

幼稚園教諭エミリーは、白人ナショナリズムの小さな女性組織（総勢6名）の初会合に出席した。
会合後、エミリーは食料品店経営者キムと従業員レスリー、小売店員マージョリーの同志3人を自宅に誘う。
しかし、途中で立ち寄ったキムの店で、エミリーは買い物に来たアジア人姉妹と激しい口論になってしまう。
激怒したエミリーたちは、アジア人姉妹の留守宅に侵入し、パスポートを盗み出す。
その時、折悪しくアジア人姉妹が帰宅し、彼女たちと鉢合わせしてしまうのだった…

序盤でエミリー達の悩みや不満、差別意識が描かれる。
彼女たちは多様性、アファーマティブアクション、BLM運動などを否定し、白人優位の思想を語る。
フェミニズムよりフェミニン、聖書が示す妻の役割を！等々、女性なのに女性の権利に無頓着であった。
「伝統的家族観は60年代に終わった…」とエミリーは涙を流す。おぉ…
一方で、エミリーは不妊、キムは店の経営不振、マージョリーは昇進失敗など、彼女たちは悩みや不満を抱える。
過激な主張を掲げる彼女たちだが、実施予定の活動（ヨガ教室、育児支援など）は意外に無害で平和的であった。
タイトル「soft＆quiet」は、会報創刊号の方針「表向きは穏当で密やかに、慎重に心に入り込む」を指すようだ。
しかし、会合後の彼女たちの行為は、穏当でも密やかでもなかった…

過激な主張を語るだけだったエミリーたちの行為は、アジア人姉妹の登場で危険なものへと変わる。
ある理由で、エミリーはアジア人姉妹に怒り（理不尽な私怨である）を抱いていることが明かされる。
エミリーの抱く怒りは、キムたちにも我が事として受け止められた。
猛り狂う彼女たちの「パスポートを盗んで困らせる」計画が瓦解していく様は、ただただ不快で恐ろしい。

幼稚園の清掃員に対するエミリーの言動には、寒々とした気持ちになった。
彼女は作業中の清掃員に声もかけず、冷たい一瞥を向ける。
さらに、エミリーは「モップは園児の退園後にしなさい」という清掃員への注意を園児（白人）に言わせる。
「強い子でしょ。勇気を出して言うのよ！」とか園児を励ましちゃってさー…やだなー…
単一民族社会を目指す！等の言説、下品な物言いを嫌う当たり、彼女はデヴィッド・デューク女性版を目指しているのだろうか…
エミリーは、アジア人姉妹宅で飼われている小型犬を抱きしめて「なんて可愛いの」とか言う。
犬が怯えないように戸棚に入れ、犯行終了後には解放する気遣いも見せる。
なぜ、人にも優しくできないのだろう…

キムの店の従業員レスリーは服役経験があり「指示に従っているのが楽だ」と思っている。
会合には、キムに誘われて参加しただけだった。大した意見はないらしく、お菓子を食べてばかり。
「ネットで古着を売りたいからモデルをやってよ」とスリム体型のエミリーに頼む。無害な人に見えた。
そんな彼女が、アジア人姉妹襲撃では中心的役割を果たす。はぁ…

これはすごい‼
設定、展開、全てにおいてヘドが出る。超絶胸くそ映画。