ボイリング・ポイント／沸騰

（2021年製作・イギリス）監督・フィリップ・バランティーニ
90分驚異のワンショット、という触れ込みでロッテントマトも99％の高評価だそうだ。
しかし私は、それこそ新作料金を返してもらいたいくらいの不愉快な厨房内の争いを見せられ、
感動も面白みもなく、「なにこの結末・・」という残念さしかなかった。

ロンドン、人気高級レストランのオーナーシェフ、アンディ（スティーヴン・グレアム）は、開店前から疲れ切っていた。
今日は、一年で最もにぎわうクリスマス前の金曜日だ。
店は予約でいっぱいだった。
それなのに、衛生管理検査管が来てあれこれ点検のうえ、評価を下げていった。
アンディの発注ミスで食材が不足、有名なグルメ評論家が来て、メニューにないものを注文。
ナッツアレルギーのお客の情報は伝達済みも、どこかで手違いがあり救急車を呼ぶはめになる。
要するに、レストランと言いながら、ダメダメレストランである。

レストランが忙しければ、どこでも多少は修羅場にはなろう。
だが、厨房のメンバーはそれぞれ険悪。厨房で大声を出すなとフロアマネージャーが注意するも、
今度は厨房とフロアの対立が先鋭化し客に聞こえるところで、
「お前なんか辞めろ！」「お前こそ辞めさせてやる！」と大声でやり合う始末。
そんな時、シェフのアンディは客席でワインをごちそうになっている。

普通は、大繁盛してれば「良かったじゃないか♪」と思うもの。
この映画から何も学ぶものがない。
ワンショットで「逃げ場のない緊迫感」を共有してほしかったのだろうか。
あったのは（なに、その結末〜）という虚しさだけで、ラストも失敗している。
シェフのストレスは共有出来なかったが、別の意味でストレスが残った。

レストランの喧騒が実にリアルに描かれていて
ワンカット撮影なので、見ているこちら側もリアルタイムにこの喧騒を体験することになる。
登場人物は多いが、ちょっとした言葉や会話で人間関係と個々のキャラを知ることができ、
こんがらがることもない。
とてもうまい作り方。
演じている俳優さんたちの演技が実に自然で
ほんとうにレストランで働いている人たちのようだった。
(アドリブも多かったらしい）

クリスマスの金曜日夜。
ロンドンにある高級レストランは予約で満席。
営業開始前からトラブル続きで、人間関係がぎくしゃくしてくる。
それでも、次から次へと起こるトラブルに対応しながらも
何とか乗り越えようと奮闘するスタッフたち。

90分というコンパクトな枠の中に、様々な社会問題なども織り込ませて
観る者を見事に引き付けていく。
どういう落としどころが待っているのかと最後まで目が離せず
疲れたけど、とても面白かった。