ゴーストブック　おばけずかん

事故にあったクラスメートの命を助けたい一樹（城桧吏）たち3人は、願いを叶えるという
『おばけ図鑑』を手に入れる。古本屋の長い廊下から出た3人は、今までの世界ではなく、異世界に迷い込んだ事を知る。
3人を追ってきたよう子先生（新垣結衣）も一緒だった。

『おばけ図鑑』は全ページ白紙で、ゴーストを捕獲するごとにページに画像と説明が刻まれる。7体揃うと願いが叶うわけだ。
一反木綿や百目小僧・・うんていおばけ、やまびこおばけ・・少年たちはどうやって戦うのだろうか・・
と思うも、バトルというわけではなくたとえば百目なら、目に染みる玉ねぎのみじん切りを投げつけて
大泣きさせたりするわけで、アイデア戦かな（笑）
特に、「身代わりおばけ」というヤツが、一樹そっくりに変身するのだが、ポイと投げると
一樹が二人になり、次は4人に、8人に分裂してゆく。（そのかわりミニサイズになって、お人形みたくなる。）可愛い。笑。

異世界のありさまが、エッシャーのだまし絵のようで不思議で面白い。屋根が垂直だったり、部屋自体がコーヒーカップみたいに回転する。
車も直立して建築材になっている。
素晴らしい美術、美しい混沌の世界だ。さすが、CGとVFX映像の第一人者、山崎貴監督である。
街の看板や標識も意味不明で楽しい。（そもそも車は一台も走ってない）

さて、危険と困難をくぐり抜けて、みごと7体を収めた『おばけ図鑑』。
命を賭けた願いが自分じゃなくて「友達を救う事」なのが泣かせるね。
そして、現実世界に戻ったらこの体験は忘れてしまうんだってよ。
ちょっと悲しいけど、忘れられない大切ななにかを、思い出そうとして思い出せないのが
少年時代、なのかもしれないですね。

いつも感じることだが、山崎監督の演出は常にタメが足りない。
よくできた絵が、緩急なくサラサラと流れて行き、あまりインパクトを感じさせることなく、物語が終わってしまう。
カットごとの画作りにこだわり過ぎてしまって、モンタージュが疎かになりがちなのだ。
そのせいで山崎監督作品はどれも見終わったあとに、もどかしさと物足りなさを感じてしまう。唯一の例外と言えるのは「鎌倉ものがたり」か。
例えば百目が登場するシーンなど、細かいアップやロングショットを駆使して、百目の威圧感と子供たちのリアクションにもっとメリハリがつけられた筈だ。
それともジュブナイル作品だからと、敢えて緊張感をなくしてゆるい表現に徹したのか。ならば、子供の感性を読み間違えている。
次回作が新たな「ゴジラ」だと聞いて、一抹の不安を感じるのは私だけだろうか？

雰囲気は「DESTINY 鎌倉ものがたり」で、暴力シーンはゼロ。
はじめから終わりまでなごやか。
ただ、子どもたちのはにかんだ演技が観ていてこっぱずかしくなる。
テンポも遅い。わけのわからないダラダラシーンが長い。
種々のオバケはマンガ。
山崎監督の限界が見えたって感じがした。