英雄の証明

申し訳ないが話の80％は不愉快。
イランの国の文化とか理解できてない部分もあるけれども。
イランでは借金を返せないという理由で刑務所に入れられる事があるそうだ。
ムショの外へ仕事に出たり、「休暇」と呼ばれてたまに自宅へ帰る事もできるらしい。

主人公のラヒム（アミール・ジャディディ）は借金で服役中。ラヒムの再婚相手ファルコンデは街でバッグを拾った。
その中には金貨が入っていた。
ラヒムが出所することを望んでいるファルコンデはその金貨をネコババして、ラヒムの借金を　返してしまおうと画策する。
いざ金貨を換金しようとすると、金の相場は毎日変動し、思っていたほどの金にはならない。

拾った物をネコババするのは当然良くないわけで、ラヒムは、金貨を落とし主に返すことにした。
しかし、そのやり方があまりにもルーズ。迷子の犬じゃないんだから、『金貨の入ったカバンを拾いました。刑務所のラヒムまで連絡ください』
って。張り紙なんか・・・。
イラン的にはどうなのかわからないけど。

当然、張り紙は「悪い人」の目にも触れますよ。
そして、ラヒムに頼まれた姉は、やってきたご婦人の住所名前も聞かず、受領書さえ貰わない。（あちゃぁ・・）

金貨を落とし主へと返すという「当たり前の」行動を、刑務所はそれを美談と受け取り、その美談を利用しようとする。
そしてチャリティ募金会も・・。善意だ善意だ、みなさん寄付お願いと。

ラヒムは英雄になりたかったわけではなかった、が、テレビにも出て称賛と反感を同時に買う。
話題の人となったはいいが、SNSでは疑問が投げかけられ、美談は本当にあったことなのかという疑惑にまで発展することになってしまう。
世間は他人が失墜しようが構わない。面白ければいいのだ。
ラヒムも調子こいた性格なので、イケメン親父のわりには、ボロ出しまくりだが、最終的には「本当の英雄とは」みたいなラストだけれど・・
色々やらかす男に描かれているので同情は出来なかった。
作風は少し地味。『セールスマン』や『別離』よりまだ地味だと思った。

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若い女性がバッグを拾った。中には17枚の金貨。彼女は借金を返せずに刑務所に送られた彼氏のために使おうとする。借金全額には足りないが出所が早まるかもしれない。
彼氏はしかし持ち主を捜そうと提案する（せっかくの幸運なのに！）。刑期の休暇中に街に貼り紙をし、運良く？持ち主はみつかった。これが「美談」としてテレビや新聞に出た。同情が集まって結構な寄付が集まった。刑務所も自殺者が出て落ちこんでいた評価を回復するためにこの「美談」を利用した。

この「美談」には3つの失敗というか気になる点があった。
・囚人を英雄とするため、刑務所・テレビ局の意向で彼氏が拾ったことにしたこと。
・貼り紙の連絡先を刑務所の電話番号にしたこと。落とし主から電話がかかってきてこの件が刑務所に知れなければ「美談」は生まれなかった。彼氏は故意を否定する。じっさいそこまでは考えていなかったような気もする。わからないけど。
・借金の相手に近々まとまった金を返すとメールを送っていたこと。金貨をくすねるつもりだったと正直に告白することで逆に好感度がアップした。しかしメールの日付が休暇よりも前だったので、拾ったのが本人ではないとバレてしまった。

金貨を拾い、正直に持ち主に返した。これに嘘はない。しかし関係者の思惑でこれを「美談」に仕立ててメディアに出したことで、ネットでは上の3つを突っ込まれ「自作自演じゃないの？」と炎上してしまった。
名誉回復のためには金貨を落とした婦人に証言してもらうしかない。婦人を乗せたタクシーの運転手に協力してもらって懸命に探すが、なかなか見つからない。自分も2年服役していたという運転手の悪魔のアドバイスについに耳を貸すことになる。
「幸運を祈るが　いざとなりゃ　別の女を落とし主に仕立てればいい・・・」

一見無邪気な彼氏さんであるが、別れた妻の兄でもある借金の相手からはとことん嫌われペテン師呼ばわりされている。誠実なのか嘘つきなのか。ネットに翻弄されて英雄からペテン師へジェットコースターのように上下する姿は「真犯人フラグ」の相良凌介のようだった。

2021年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞

男は借金の罪で収監されている
ある日、彼の婚約者が金貨17枚を拾う、金貨で借金を返済すれば、出所できるのだが、男は罪悪感から落とし主に返すことを決意する

男は「正直者の囚人」という英雄なのか、世間を騒がす事件へと発展する衝撃の問題作

善行をした囚人が、SNSに追い詰められていく。証明できずに名誉を傷付けられていく男。何もかももとの黙阿弥で、刑務所に戻るところが淋しい。