ブライズ・スピリット〜夫をシェアしたくはありません！

　ノエル・カワードの戯曲『陽気な幽霊（ブライズ・スピリット）』（1941）を翻案したコメディ映画。物語の時代設定は1937年と原作と同じ時代になっていますが、ストーリーはかなり複雑化していて結末は現代風。ふたりの妻エルヴィラとルースの人物像も現代の女性観を反映しています。そのため、原作の、ブラックさを笑いに包んだ、お気楽な感じが少し薄れているかも。

　フローレス刑事が活躍する15冊の犯罪小説の著者でベストセラー作家のチャールズ・コンドマインは、７年前の妻の事故死からルースと再婚して５年になる。ハリウッドへの進出を目指して、自作を基に脚本を執筆中だが、スランプに陥っている。脚本の参考にしようと、夏至の夜、霊媒師マダム・アルカティを自宅に招いて降霊会を催す。すると雷鳴と共に７年前に事故死した最初の妻エルヴィラの霊が召喚され、彼にしか姿の見えないエルヴィラにチャールズは翻弄され始める。エルヴィラの悪意あるいたずらの数々で、家庭の平和もすっかり乱されてしまう。

　ところが、実は彼の犯罪小説はエルヴィラのアイデアによるものであり、エルヴィラは彼のゴーストライターだったのだ。このサブプロットによって３人の関係はさらに複雑になる。チャールズのアメリカンドリーム、ハリウッドでの成功の懸かった脚本を完成するためには、エルヴィラの助けが必要不可欠。チャールズは、現在の妻ルースに愛しているのは君だけだとささやきつつ、脚本を手伝ってくれるエルヴィラにも甘言を弄する。エルヴィラの傍若無人ぶりに、ルースはマダム・アルカティに除霊を頼みに行き、脚本が無事完成すると、チャールズも次第にエルヴィラの霊を疎ましく思うようになる。エルヴィラは「女は手柄の横取りは慣れている」と言うのだけれど…。はたして３人の運命は？はたまた、チャールズのアメリカンドリームの行方は？

　舞台となるのは、内装やアンティーク家具のお洒落な、アール・デコ様式の美しく瀟洒な邸宅で、時代設定に合わせた美術や衣装も素晴らしいです。サセックスという設定の、マダム・アルカティの田舎家もイギリスらしい雰囲気で素敵です。ストーリーは、ブラックユーモアが効いていて、楽しいかどうかは微妙、立場によるかな。やや現代風に脚色し過ぎかも。霊媒師マダム・アルカティ役でジュディ・デンチが存在感を発揮しています。

ダン・スティーヴンス目当て観ましたが
ベストセラー作家でありながら、現在はスランプ状態であるチャールズ役の彼は
なかなかのクズ男でした(笑)
なにせ、ベストセラーになった作品はすべて
元妻のアイデアからきたものだったのです。
スランプを脱するために、元妻エルヴィラを召喚してしまったチャールズ。
エルヴィラの幽霊は夫を現妻から取り戻そうと
あれやこれやのいたずらを繰り返します。
エルヴィラの姿は、チャールズしか見えないものだから
暴言をはいたり、一人でドタバタしているチャールズは
スランプからおかしくなったのか？と思われる始末。
やがてエルヴィラの悪だくみはエスカレートしていき。。。

時代は1945年英国ということで、実名の映画監督や俳優の名前などが会話に出てきます。
ヒッチコックに映画を撮ってもらおう、なんていうシーンもあり楽しくなります。
女性たちの衣装もカラフルでとても素敵。
8週ぐらい回って、このファッションには新しさを感じました。
最終的には、実にブラックな結末がまっていて
苦笑せざるを得ませんが、意外にも爽やかな気持ちになって(笑)
楽しかったです。

公開当時御年85歳のジュディ・ディンチも健在。
この方も生涯現役を貫いて欲しい女優さんです。

誰かが亡くなると「ご愁傷様です」と嘆き悲しむ言葉が飛び交うけど、よく話すと恨みがあったり、戦争での死で讃えられたり、大往生で思い出話で盛り上がったり。
私も母の他界の時には「私が代わりに死んであげたかった」と嘆いたけど母が亡くなってから23年。
毎日毎日何気なく思い出すようにして悲しみから楽しい話で笑ったり、あの言い方ってないよねと怒ったり。

きっと今、うっかり幽霊となって母が出てきたら、思春期を思い出すように毎日喧嘩だろう。