オートクチュール

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（2021年製作・フランス）
エステル（ナタリー・バイ）は、駅でバッグをひったくられる。金目の物を物色したあと、
名刺があったからとノコノコ返しに来たのが移民のジャド（リナ・クードリ）だ。
ひったくり犯人だとわかっているのに、その手がしなやかなのを見て、裁縫の才能があると見抜き、
自分の職場クリスチャン・ディオールのアトリエに連れてきた。
そこは熟練のお針子さんたちが長年厳しい仕事をしてきた神聖な場所だ。
ディオールのオートクチュール部門の責任者であるエステルが、連れてきたからと言って
ジャドが何か出来るわけもない。
意地悪なアンドレがジャドに失敗させる。
ジャドの反抗的な態度がハンパない。ディオールの香水を盗んだりもする。
「辞める」と言い、「出ていけ」と言われる。
しかし、平気な顔して、しれっと次の日に来る。

エステルがジャドの針運びを見て、やっぱりねと満足そうな顔をするのではあるが、
もう少し、お針子さん仕事、アトリエの雰囲気とかドレスを映してほしかった。
ジャケットの赤いドレスの登場を心待ちにしていたが、ついにそれはなかった・・。
ただ、豪華なプリーツドレスをモデルに試着させるシーンはため息が出た。
白い布地の真珠のような輝き。

そんな美しい環境と背景なのに、ジャドが怒りまくって発する言葉があまりにも汚い。
エステルをクソババアよばわり、エステルはジャドの横っ面を殴る！
移民だからと、母親が病気だからとブチ切れていいものでない。

この作品は、貧しいものが才能を開花されて一人前のお針子になる成長物語だと予想したが、
そうではなく、対立と偏見からの、和解、相互理解を描いてるようだ。
手がきれいだからと言って裁縫の才能があるとは限らないだろう。
（スリやかっぱらいで鍛えた指なのだ）
ジャドの言葉、それは内面から出る、若い内は外見で愛されるかもしれないが。
ドレスはきれいだが、ジャドに好感が持てず、私はあまり好きな作品ではない。

　タイトルやジャケット写真から想像するような華やかな作品ではありません。パリのモンテーニュ通りにあるディオールのアトリエと、パリ郊外にある移民の多い貧困層の住む団地とが対比的に舞台となっています。アトリエの責任者エステルは、亡き母親に対しても絶縁している娘に対しても葛藤を抱えつつ仕事一筋で、お針子の仕事に誇りを持っているが、年齢による技術の衰えから、次のショーが終われば引退と決まっている。一方、団地に住む貧しい移民の少女ジャドは、家族は世話の必要な鬱病の母親だけで、定職もなく、友人と盗みをして荒れた暮らしをしている。

　偶然ジャドがエステルのバッグを盗んだことから、ふたりは知り合い、ジャドの手を見たエステルは、お針子に向いている器用な手だと見抜く。エステルはジャドを自分の仕事場、ディオールのアトリエに連れていき、お針子見習いとして雇うことにする。ジャドの団地での暮らしぶりやエステルの引退までの揺れ動く気持ち等と並行して、反撥や対立を繰り返しながら、ジャドがお針子となっていく過程が描かれている。

　オートクチュールのお針子の仕事がどれだけ繊細で、神経を張りつめなければならない仕事なのかは描かれているけれど、刺繍や美しいレース細工といった手仕事の見事さ自体、その具体的な成果はあまり紹介されておらず、それが残念。登場するエレガントなロングドレスも、ほとんど白を中心にした無彩色で、ジャケット写真の赤いドレスのようなカラフルなものは全く出てこない。華やかなショーの場面もない。ちょっと期待はずれ。

　物語の方は、ストーリー展開が強引でスムーズではなく、ギクシャクしている。プロット次第ではもっといい映画になったのではないだろうか。忖度せずに本音で悪口を言ったり毒舌を吐く喧嘩のシーンは興味深かったけれど、何のフォローもなく終わって、また口論、そしていつの間にか和解する。気持ちが変化していく描写が足りないような気がする。最初はフリースばかり着ていたジャドが、最後のアトリエの場面では（たぶん）ディオールの清楚なワンピースを着ていて、お針子の仕事に対する彼女の前向きさや矜持がうかがえて、そこは良かったかなと思います。

お針子の恋愛ドラマだと思ったら、違っていた。有名デザイナーの洋服だとデザインや印象で評価をするけど、実際は丁寧に素材にこだわり、1ミリ単位で作り上げる職人のこだわりも大事なのだと目が釘付け。
二人の出会いはひったくりと被害者で二人を含め、言葉の暴力も溢れる中で隠れた才能を手先で見出しお互いの生活を前向きにする。
人の出会いってどんなきっかけでもすごく大事なのだと思う。