ちょっと思い出しただけ

タクシードライバーの葉と
ケガでダンサーの道をあきらめた証明係の照生。
二人の6年間を照生の誕生日である7月26日の一日を遡っていく形で描いていく。
二人がどう知り合って、どう別れたのか
時間を遡る手法が新鮮でした。
何がどうっていうこともないストーリーなのですが
なんだか良かったです。
台本がまるでないような
伊藤沙莉と池松壮亮の二人の自然な演技もとても良かったです。

ああ、そうだよね。
こんな風に昔一緒に過ごした時間を思い出す日もあるよね。
忘れていた記憶が何かのスイッチで思いだすこともあるよね。
誰にでも、そんな日があるよね。
それは懐かしくて甘酸っぱくて、そして苦い思い出でもあるのですが
時の経過は優しく心の傷を癒してくれていたわけですね。

昔好きだった人にちょっと会いたくなるような気持ちになる、
そんな作品でした。

今はもう別れてしまって、別々のパートナーがいる男女が、自分たちの出会い、付き合っていた頃のいろんなこと、そして別れを「ちょっと思い出しただけ」というタイトルである。ちょっとどころか、メチャメチャ思い出して、メチャメチャ引きずって、切ない思いをしているのである。カッコいいダンサーだった彼が、足を怪我して踊れなくなった。絶望して、心を閉ざしてしまった。彼女は心配して、そばで支えたいと願っているのに、LINEに2週間も返信しなかった。彼がようやく立ち直りかけた頃、今度は彼女が続けていく自信をなくしていた。
煮え切らない彼氏を演じるのは池松壮亮、小さいけど芯の強い彼女役は伊藤沙莉、タバコを喫うキュートなタクシードライバーである。「ナイト・オン・ザ・プラネット（ジム・ジャームッシュ、1991）にインスパイアされた脚本とのことだが、別れてしまった現在を起点に、知り合うところまでを逆時系列に遡っていくところは「ふたりの５つの分かれ路」（フランソア・オゾン、2004）みたいだった。

二人の男女、照生と葉が出会いから別れまでの6年間を年毎に遡りながら描いている作品で男女の機微がなかなか興味深いところ。
冒頭は現在、タクシードライバーをしている葉がミュージシャンを客として乗せるところろから始まり、葉が一人舞台で踊る照生を見つめるシーン、注意しないと次の場面が過去に戻っているので、ちょっと混乱してしまう。
毎年の日付は７月26日、照生の部屋の時計がそれを示しているが年代は表示されていない。
最初はダンサーを目指していた照生、足の怪我でそれを断念し、今は照明助手として働いているみたい、葉はずっとドライバーの仕事を続けているが年代毎に乗っている車が変わっているのも時の推移を表している、2020年は東京オリンピックのマークがある。
7月26日は照生の誕生日、その特別な日の一日だけを切り取って構成されているストーリー、出会いの時、照生が怪我をして悩んでいる時「一緒に考えたい葉と一人で決めたがる照生」との微妙なスレ違い、水族館での秘密のデート、「伝えたら壊れちゃうんじゃないか」とその思いを告白できない照生とつい茶化してしまう葉。
いろんなシーンがちりばめられ、結局はっきりとした「告白も別れ」のシーンがないまま現在に至っている二人、過ぎた日を「ちよっと思い出す」だけになってしまっているのだろう。

ちょっと思い出しただけ


演劇の照明のスタッフの池松さん
タクシードライバーの女性
コロナ禍で毎日淡々と過ぎる日々。

この二人の過去の出会いが少しづつわかってくる。毎日の単調な時間の中で少しづつ変化する日常。ほんのりちょっと思い出す。ゆったりラブドラマ。



◎71点。
★なんか恋していた昔を思い出せる絶妙な映画でした。なんか良いですね。役者さんの力が良い意味で抜けていて楽に見れてしまう。

★彡題名の通りの良作でした。

◇良かった点。
★池松さんのファーストショットが出ただけで私はこの人の独特な雰囲気に呑まれました。
凄いなこの役者さん。

★伊藤さんのハスキーボイスにやられました。本当に恋人同士ってのは煮ても焼いても食えないですね。

時間の無駄
日本映画ってなんでこうなんだろう
わかってるはずなのに見てしまった