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ベルファスト / ジュード・ヒル

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「ベルファスト」 の解説・あらすじ・ストーリー

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解説・ストーリー

ケネス・ブラナー監督が故郷ベルファストを舞台に、自身の幼少期を投影して描いた自伝的ドラマ。分断による暴力の嵐が吹き荒れる中、それでも変わらぬ家族の愛に包まれて暮らす9歳の少年の目を通して、激動のベルファストと家族の絆をペーソスとユーモアを織り交ぜ郷愁あふれるモノクロ映像で描き出していく。主演は映画デビューとなる新星ジュード・ヒル。共演にカトリーナ・バルフ、ジュディ・デンチ、ジェイミー・ドーナン、キアラン・ハインズ。1969年、北アイルランドの首都ベルファスト。9歳の少年バディは、愛する家族と楽しい日々を送っていた。ところがある日、暴徒化したプロテスタントの若者が、カトリック系住民への攻撃を開始した。以来、街は暴力と恐怖に覆われていく。バディと家族にも危険が迫り、父親はロンドンへの移住を計画するのだったが…。 JAN:4550510025254

「ベルファスト」 の作品情報

作品情報

製作年:

2021年

製作国:

イギリス

原題:

BELFAST

「ベルファスト」 のキャスト・出演者/監督・スタッフ

関連作品

関連作品

J・エドガー

ジム・ヘンソンの不思議の国の物語

オリエント急行殺人事件

ハムレット

ユーザーレビュー:7件

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1〜 5件 / 全7件

宗教は厄介だ

投稿日:2022/08/30 レビュアー:kazupon

監督・脚本・製作:ケネス・ブラナー(2021年・英・98分・モノクロ一部カラー)
原題:Belfast

冒頭で映し出されるカラーの映像は、本作のタイトルとなった北アイルランドの首府・ベルファストの現代の風景です。
あの有名な「タイタニック号」は、此処、ベルファストで誕生しました。画面には、タイタニック関連の施設が映し出され、美しく趣のある都市だと思いました。
そして、モノクロの画面に変わると、そこは1969年のベルファストです。
住民みんなが顔なじみで、所番地など知らなくても、家の場所も住んでいる人も全部分かっているようなそんな町に、9歳のバディ少年(ジュード・ヒル)は暮らしていました。
食事時になると母親が子供の名前を呼び、近所の人も「ほら、早くお帰り。ママが探してたよ」と声をかけてくれる。まるで日本の長屋の風景のようです。
1969年8月15日、バディはいつものように路上で遊んでいましたが、突然、武装した集団が現れカトリックは出て行け!と襲撃して来たのです。
武装集団はプロテスタントの人々で、バディの家はプロテスタントなので襲撃は免れました。

ディスカスのイントロにもある通り、本作はケネス・ブラナー監督の子供時代を投影した半自伝的作品だそうです。
バディ少年を演じたジュード・ヒルの演技の瑞々しさによるところが大きいと思いますが、バディの視点から描かれた故郷や子供時代への郷愁が素直に伝わって来ました。
プロテスタントがカトリックを追い出そうとしたあの日を境に、バディは初めて自身のいる場所や立場を理解し始めたのではないでしょうか。
あの日が、彼の子供時代への一つのお別れだったように思います。大人への第一歩と言い直してもよいかも知れません。
描かれているのは、いわゆる「北アイルランド紛争」に突入していく時代ですが、あくまでもバディの視線とバディの理解の範囲で本作は描かれていると思います。
バディが好きな女の子キャサリンは、勉強でも良いライバルだけど、カトリック。バディはキャサリンと結婚したいけど、彼女はカトリックだからチャンスはないのかと心配します。
孫の悩みに大真面目に相談にのる祖父(キアラン・ハインズ)と祖母(ジュディ・デンチ)が温かいです。父は「宗教は厄介だ」と言っていました。
いよいよ暴動が激しくなり、バディも巻き込まれてしまいます。
父の大工の腕を見込んで、収入も住む所も保証してくれるという誘いがあり、父はイギリスへ行くことを提案しますが、祖父母を置いて行くことも、ベルファストを離れることも、バディや母親は反対でした。

家族や隣人への思い、路地に集まって歌やダンスを楽しむ人々、ふと耳にしてしまった両親の諍い、家々や路地全体を見渡せる視点、窓枠越しに見る祖父母の表情、子供らしい恋心…
モノクロで描かれる世界が活き活きと効果的でした。観ている方も懐かしい気持ちになりました。
監督自身が、「『ベルファスト』は、とてもパーソナルな作品だ。私が愛した場所、愛した人たちの物語だ。」と言っていますが、ケネス・ブラナーが、人々の思いや感情をここまで素直に表現した作品がこれまであったでしょうか。『オリエント急行』の映像は美しかったけれど、私は本作の方がずっとずっと好きです。

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ケネス・ブラナーのベルファストでの思い出

投稿日:2022/08/03 レビュアー:くまげらの森

監督であり俳優の、ケネス・ブラナーの半自伝的作品。
子供の頃に過ごした町、北アイルランドの「ベルファスト」を、子供時代の目線で描いた。

冒頭、現在のベルファストがカラーで映り、それが塀を越えると1969年のモノクロのベルファストになる。
その頃、町ではカトリックとプロテスタントの紛争が激しく、町にバリケードが出来たり、
火炎瓶が飛ぶ始末。(ちなみに日本は大阪万博も終わり、高度成長で未来に夢があった頃)
大人たちが不安を抱える中、主人公である9歳の男の子バディ(ジュード・ヒル)は、
勉強をがんばって好きな女の子に告白しようとしたり、家族と映画を観たり、
(『恐竜1万年』のラクウェル・ウェルチ、やはりすごい!ママはなぜかパパに怒ってる・・)
(あと、有名な映画のシーンが沢山出てくる)映画館で目を輝かせるケネス少年(バディ)だ。
おじいちゃん、おばあちゃんも物知りで愛情深くて暖かい。
お父さんはついに仕事が沢山あるロンドンへの移住を決める。
別れは突然やってくる・・。

北アイルランド紛争で大人が緊張状態が続く中、子供は案外子供の世界において
強い気持ちでいるんじゃないだろうか。
あまり経済的に余裕のない地域である故郷ベルファストを映画監督が振り返るという
ノスタルジックな作品であった。
モノクロ映像が郷愁的だ。(冒頭とラストの鮮やかなカラーが現実に引き戻す。)
いつかどこかで自分も見たことのある風景として思い出す人もいるのかもしれない。

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我が心の故郷ベルファスト

投稿日:2022/08/07 レビュアー:hinakksk

 生まれ育ち子ども時代を過ごした土地やそこに住む人々との思い出は、大人になっても、心の中のどこかに息づいていて、ある日突然鮮やかに甦ってくる。自分自身を育み、その後を生きる礎であり糧となった唯一無二の場所なのだから当然のことだ。そんな特別な場所に別れを告げることになる9歳の少年の視点から、懐かしい故郷(ベルファスト)やそこに住む人々とその時代(1969年8月15日から翌年まで)が生き生きと回想されている。

 バディは、素直で子どもらしく、無邪気で好奇心いっぱいの活発な9歳の少年。両親と兄のウィルの4人家族で、近くには母方の祖父母や伯母の家族が住んでいる。決して豊かとは言えず、税金の支払いにも難渋するほどで、そのことで両親は時々口論している。父親はロンドンの建築現場で働いており、2週間に1度、週末にしか帰ってこないけれど、祖父母が優しく見守ってくれるし、地域の人々はみんな顔見知りで、どこにいても温かく声をかけてくれる。

 ところが、プロテスタントとカトリック系の住民との反目が激しくなり、1969年8月15日、プロテスタント地区に住む少数派のカトリック教徒に対し、プロテスタントの過激派が攻撃を始める事態となる。軍が出動し一旦は収まるけれど、バディの住む通りには暴徒を防ぐバリケードが築かれる。地域住民の間には緊張が走り、複雑な大人の事情を見聞きして子どもなりに咀嚼するけれど、そんなことは子どもたちには関係なし。すぐにいつもの日常を取り戻し、元気に通学し、放課後には祖父から、好きな女の子との付き合い方やちょっと怪しげな算数の点数の取り方を教えてもらったり、祖母からこっそりお小遣いをもらったり。

 しかし、治安は徐々に悪化するばかり。正社員になれるという仕事の都合もあり、父親がロンドンへの転居を提案するけれど、自分の全てのある生まれ育ったベルファストを離れるのは絶対にイヤと、母親もバディも大反対。そんなとき祖父が入院することになる。お見舞いに行ったバディに祖父は「お前がどこに行って何になろうと家族みんながお前の味方だ。それは一生変わらない、それが分かっていれば、一生不幸にはならない」と伝える。バディ一家が転居を先延ばしにしているうちに、バディに生命の危険が及ぶ決定的な事態に直面し、家族はいよいよ決断を迫られる。「行きなさい、振り返らずに」と陰でひとり呟く祖母の凛とした姿勢に胸をうたれる。

 映画は、緊迫した状況下でもアイルランド人らしく大らかに生活を楽しむ人々を温かく描いて、その土地に残った者たち、去って行った者たち、そして命を落とした者たちに捧げられている。最初から最後まで、故郷ベルファストへの深い想いや愛情、そこに生きた人々への畏敬の念が感じられて、静かな感動が残る。とても個人的、だが同時に、とても普遍的でもある作品だ。

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故郷への深い愛情を感じる作品

投稿日:2022/09/06 レビュアー:飛べない魔女

北アイルランドの首都ベルファストに住む少年バディの目線から描く家族の物語。
とても良かったです。
2022年のアカデミー賞では、多くの部門にノミネートされ、
ケネス・ブラナーが脚本賞を受賞しましたね。

1969年、ベルファストは激動の時代でした。街に住む多くのプロテスタント教徒が、少数派のカトリック教徒を排除しようと、暴挙に出て、街は住民同士の対立が深まっていくのです。
混乱に巻き込まれていく中、バディの父親はベルファストを離れようと家族を説得します。
大好きなおじいちゃん、おばあちゃん、友だち、そして何より結婚したいと思っている女子と会えなくなるなんて!
とバディはここから離れたくない気持ちが強くなるのです。

最初のシーン(現代のベルファストの街並み)がカラーで映し出され
時は1969年に遡ると、モノクロ画面へ。
そして、物語は意外にも静かに進みます。
劇中に名作映画が沢山出てきます。
映画好きの少年らしく、映画を見ているときのバディはなんて生き生きとしていることでしょう。
『チキチキバンバン』(映画はカラーで映し出される)が空を飛んだときの
観客のシーンが面白かったです。

ラストにバディが『僕はカトリックのあの子と結婚出来るの?』と父親に問い、
それに対して言う父親の言葉がこの映画の本質でしょう。
宗教間の対立は理解しづらいことではありますが、
宗教で争うこと、宗教の違いで人を差別したり、いがみ合ったり
そんなことをもういい加減に人間は止めるべきですね。

バディ役の子役ちゃん、自然な演技がお見事でした。
あと、おじいちゃんとおばあちゃんの愛情が温かくて素敵でした。

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自分の暮らしている街が、ある日から戦場になってしまった話

投稿日:2022/09/10 レビュアー:ロキュータス

( ネタばれあり )
昨年のアカデミー作品賞『 コーダ あいのうた 』に異論はないけれども、ロシアのウクライナ侵攻の時期が少しずれていたら、「 自分の暮らしている街が、ある日から戦場になってしまった話 」である本作が獲っていたかもしれない、と考えます。

 1969年の北アイルランド・ベルファスト。
子どもの視線から見た北アイルランド紛争を描きますが、ケネス・ブラナ―の半自伝的作品。
 彼が同地出身とは知りませんでしたが、今回は出演せず、脚本( アカデミー賞受賞 )と監督(作品賞とともにアカデミー賞ノミネート ) に徹しています。

アイルランド紛争と言うと、『 邪魔者を殺せ 』『麦の穂を揺らす風』『プルートで朝食を』『パトリオット・ゲーム』などなど、これまでカトリック側あるいはその武装組織IRAが描かれることがほとんど( ちなみに本作とは関係ないですが、リーアム・ニーソンは北アイルランド出身でカトリック )でしたが、今回はプロテスタント側。

本作が描く家族の父親はイングランドに出稼ぎに行っていて、週末とかには帰ってくるけれども、少年は母と祖父母らと暮らしています。
ある日突然紛争が始まり、彼らの日常は一変してしまう。

 歴史的に見ればイングランドのアイルランド征服は1649年のオリバー・クロムウェルの侵略にさかのぼる。 たとえれば、豊臣秀吉の朝鮮出兵が成功したようなもので、35年間の日韓併合の後遺症と比較しても、彼の地の確執の根深さは容易に想像できる。
 第三者から見ればイギリスの中央政府から治安出動をする軍隊も含め、プロテスタントは「 征服者側 」、でも住民はもはやよそ者ではなく、何世代も住んできたここがふるさと。 
扇動されてプロテスタント住民たちは、カトリック住民の敬遠する商店を襲撃するなどしますが、劇中の少年たちの家族も巻き込まれてします。

劇中、少年がテレビで観ている映画は『 真昼の決闘 』と『 リバティ・バランスを射った男 』
そして「 スター・トレック( 宇宙大作戦 ) 」と「 サンダーバード 」に夢中で、多様性と共存、暴力に直面する現実と平和への希求を表しています。

出演者で注目は、祖父役の「 第一容疑者3 」から注目しているキアラン・ハインズ。 彼もベルファスト出身で、ケネス・ブラナ―がプロテスタントなのに対し、彼はカトリック。 アカデミー助演男優賞ノミネート。
そして祖母役のジュディ・デンチ。 さすがの名演で作品を締めています。

プロレスタント側の組織からの勧誘を断る父親ですが、家族は迷います。
生まれ育った愛着あるこの地を去るのか、それとも留まるのか。
ラストの家族の下した選択はせつなく、重い。

ちなみに映画に関連して書くと、北アイルランドのプロテスタント側の武装テロ組織・アルスター義勇軍の元メンバーだったヒュー・ブラウン氏は、その後回心し牧師となって来日、兵庫県で今も活動し非暴力を訴えています。

 北アイルランド紛争が収まった要因の一つは、イギリス、アイルランド両国のEU加盟と考えられます。 フランスとドイツ国境地帯のアルザス=ロレーヌの例もそうですが、国家を越える大きな構造が両国の関係をより対等に近いものにし、国境を事実上なくすものでした。 ですが、イギリスはEUを脱退してしまい、再び国境問題が立ち上がってきました。 スコットランドの分離・独立運動も合わせて、今後の動向が懸念されます。

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ベルファスト

ユーザーレビュー

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宗教は厄介だ

投稿日

2022/08/30

レビュアー

kazupon

監督・脚本・製作:ケネス・ブラナー(2021年・英・98分・モノクロ一部カラー)
原題:Belfast

冒頭で映し出されるカラーの映像は、本作のタイトルとなった北アイルランドの首府・ベルファストの現代の風景です。
あの有名な「タイタニック号」は、此処、ベルファストで誕生しました。画面には、タイタニック関連の施設が映し出され、美しく趣のある都市だと思いました。
そして、モノクロの画面に変わると、そこは1969年のベルファストです。
住民みんなが顔なじみで、所番地など知らなくても、家の場所も住んでいる人も全部分かっているようなそんな町に、9歳のバディ少年(ジュード・ヒル)は暮らしていました。
食事時になると母親が子供の名前を呼び、近所の人も「ほら、早くお帰り。ママが探してたよ」と声をかけてくれる。まるで日本の長屋の風景のようです。
1969年8月15日、バディはいつものように路上で遊んでいましたが、突然、武装した集団が現れカトリックは出て行け!と襲撃して来たのです。
武装集団はプロテスタントの人々で、バディの家はプロテスタントなので襲撃は免れました。

ディスカスのイントロにもある通り、本作はケネス・ブラナー監督の子供時代を投影した半自伝的作品だそうです。
バディ少年を演じたジュード・ヒルの演技の瑞々しさによるところが大きいと思いますが、バディの視点から描かれた故郷や子供時代への郷愁が素直に伝わって来ました。
プロテスタントがカトリックを追い出そうとしたあの日を境に、バディは初めて自身のいる場所や立場を理解し始めたのではないでしょうか。
あの日が、彼の子供時代への一つのお別れだったように思います。大人への第一歩と言い直してもよいかも知れません。
描かれているのは、いわゆる「北アイルランド紛争」に突入していく時代ですが、あくまでもバディの視線とバディの理解の範囲で本作は描かれていると思います。
バディが好きな女の子キャサリンは、勉強でも良いライバルだけど、カトリック。バディはキャサリンと結婚したいけど、彼女はカトリックだからチャンスはないのかと心配します。
孫の悩みに大真面目に相談にのる祖父(キアラン・ハインズ)と祖母(ジュディ・デンチ)が温かいです。父は「宗教は厄介だ」と言っていました。
いよいよ暴動が激しくなり、バディも巻き込まれてしまいます。
父の大工の腕を見込んで、収入も住む所も保証してくれるという誘いがあり、父はイギリスへ行くことを提案しますが、祖父母を置いて行くことも、ベルファストを離れることも、バディや母親は反対でした。

家族や隣人への思い、路地に集まって歌やダンスを楽しむ人々、ふと耳にしてしまった両親の諍い、家々や路地全体を見渡せる視点、窓枠越しに見る祖父母の表情、子供らしい恋心…
モノクロで描かれる世界が活き活きと効果的でした。観ている方も懐かしい気持ちになりました。
監督自身が、「『ベルファスト』は、とてもパーソナルな作品だ。私が愛した場所、愛した人たちの物語だ。」と言っていますが、ケネス・ブラナーが、人々の思いや感情をここまで素直に表現した作品がこれまであったでしょうか。『オリエント急行』の映像は美しかったけれど、私は本作の方がずっとずっと好きです。

ケネス・ブラナーのベルファストでの思い出

投稿日

2022/08/03

レビュアー

くまげらの森

監督であり俳優の、ケネス・ブラナーの半自伝的作品。
子供の頃に過ごした町、北アイルランドの「ベルファスト」を、子供時代の目線で描いた。

冒頭、現在のベルファストがカラーで映り、それが塀を越えると1969年のモノクロのベルファストになる。
その頃、町ではカトリックとプロテスタントの紛争が激しく、町にバリケードが出来たり、
火炎瓶が飛ぶ始末。(ちなみに日本は大阪万博も終わり、高度成長で未来に夢があった頃)
大人たちが不安を抱える中、主人公である9歳の男の子バディ(ジュード・ヒル)は、
勉強をがんばって好きな女の子に告白しようとしたり、家族と映画を観たり、
(『恐竜1万年』のラクウェル・ウェルチ、やはりすごい!ママはなぜかパパに怒ってる・・)
(あと、有名な映画のシーンが沢山出てくる)映画館で目を輝かせるケネス少年(バディ)だ。
おじいちゃん、おばあちゃんも物知りで愛情深くて暖かい。
お父さんはついに仕事が沢山あるロンドンへの移住を決める。
別れは突然やってくる・・。

北アイルランド紛争で大人が緊張状態が続く中、子供は案外子供の世界において
強い気持ちでいるんじゃないだろうか。
あまり経済的に余裕のない地域である故郷ベルファストを映画監督が振り返るという
ノスタルジックな作品であった。
モノクロ映像が郷愁的だ。(冒頭とラストの鮮やかなカラーが現実に引き戻す。)
いつかどこかで自分も見たことのある風景として思い出す人もいるのかもしれない。

我が心の故郷ベルファスト

投稿日

2022/08/07

レビュアー

hinakksk

 生まれ育ち子ども時代を過ごした土地やそこに住む人々との思い出は、大人になっても、心の中のどこかに息づいていて、ある日突然鮮やかに甦ってくる。自分自身を育み、その後を生きる礎であり糧となった唯一無二の場所なのだから当然のことだ。そんな特別な場所に別れを告げることになる9歳の少年の視点から、懐かしい故郷(ベルファスト)やそこに住む人々とその時代(1969年8月15日から翌年まで)が生き生きと回想されている。

 バディは、素直で子どもらしく、無邪気で好奇心いっぱいの活発な9歳の少年。両親と兄のウィルの4人家族で、近くには母方の祖父母や伯母の家族が住んでいる。決して豊かとは言えず、税金の支払いにも難渋するほどで、そのことで両親は時々口論している。父親はロンドンの建築現場で働いており、2週間に1度、週末にしか帰ってこないけれど、祖父母が優しく見守ってくれるし、地域の人々はみんな顔見知りで、どこにいても温かく声をかけてくれる。

 ところが、プロテスタントとカトリック系の住民との反目が激しくなり、1969年8月15日、プロテスタント地区に住む少数派のカトリック教徒に対し、プロテスタントの過激派が攻撃を始める事態となる。軍が出動し一旦は収まるけれど、バディの住む通りには暴徒を防ぐバリケードが築かれる。地域住民の間には緊張が走り、複雑な大人の事情を見聞きして子どもなりに咀嚼するけれど、そんなことは子どもたちには関係なし。すぐにいつもの日常を取り戻し、元気に通学し、放課後には祖父から、好きな女の子との付き合い方やちょっと怪しげな算数の点数の取り方を教えてもらったり、祖母からこっそりお小遣いをもらったり。

 しかし、治安は徐々に悪化するばかり。正社員になれるという仕事の都合もあり、父親がロンドンへの転居を提案するけれど、自分の全てのある生まれ育ったベルファストを離れるのは絶対にイヤと、母親もバディも大反対。そんなとき祖父が入院することになる。お見舞いに行ったバディに祖父は「お前がどこに行って何になろうと家族みんながお前の味方だ。それは一生変わらない、それが分かっていれば、一生不幸にはならない」と伝える。バディ一家が転居を先延ばしにしているうちに、バディに生命の危険が及ぶ決定的な事態に直面し、家族はいよいよ決断を迫られる。「行きなさい、振り返らずに」と陰でひとり呟く祖母の凛とした姿勢に胸をうたれる。

 映画は、緊迫した状況下でもアイルランド人らしく大らかに生活を楽しむ人々を温かく描いて、その土地に残った者たち、去って行った者たち、そして命を落とした者たちに捧げられている。最初から最後まで、故郷ベルファストへの深い想いや愛情、そこに生きた人々への畏敬の念が感じられて、静かな感動が残る。とても個人的、だが同時に、とても普遍的でもある作品だ。

故郷への深い愛情を感じる作品

投稿日

2022/09/06

レビュアー

飛べない魔女

北アイルランドの首都ベルファストに住む少年バディの目線から描く家族の物語。
とても良かったです。
2022年のアカデミー賞では、多くの部門にノミネートされ、
ケネス・ブラナーが脚本賞を受賞しましたね。

1969年、ベルファストは激動の時代でした。街に住む多くのプロテスタント教徒が、少数派のカトリック教徒を排除しようと、暴挙に出て、街は住民同士の対立が深まっていくのです。
混乱に巻き込まれていく中、バディの父親はベルファストを離れようと家族を説得します。
大好きなおじいちゃん、おばあちゃん、友だち、そして何より結婚したいと思っている女子と会えなくなるなんて!
とバディはここから離れたくない気持ちが強くなるのです。

最初のシーン(現代のベルファストの街並み)がカラーで映し出され
時は1969年に遡ると、モノクロ画面へ。
そして、物語は意外にも静かに進みます。
劇中に名作映画が沢山出てきます。
映画好きの少年らしく、映画を見ているときのバディはなんて生き生きとしていることでしょう。
『チキチキバンバン』(映画はカラーで映し出される)が空を飛んだときの
観客のシーンが面白かったです。

ラストにバディが『僕はカトリックのあの子と結婚出来るの?』と父親に問い、
それに対して言う父親の言葉がこの映画の本質でしょう。
宗教間の対立は理解しづらいことではありますが、
宗教で争うこと、宗教の違いで人を差別したり、いがみ合ったり
そんなことをもういい加減に人間は止めるべきですね。

バディ役の子役ちゃん、自然な演技がお見事でした。
あと、おじいちゃんとおばあちゃんの愛情が温かくて素敵でした。

自分の暮らしている街が、ある日から戦場になってしまった話

投稿日

2022/09/10

レビュアー

ロキュータス

( ネタばれあり )
昨年のアカデミー作品賞『 コーダ あいのうた 』に異論はないけれども、ロシアのウクライナ侵攻の時期が少しずれていたら、「 自分の暮らしている街が、ある日から戦場になってしまった話 」である本作が獲っていたかもしれない、と考えます。

 1969年の北アイルランド・ベルファスト。
子どもの視線から見た北アイルランド紛争を描きますが、ケネス・ブラナ―の半自伝的作品。
 彼が同地出身とは知りませんでしたが、今回は出演せず、脚本( アカデミー賞受賞 )と監督(作品賞とともにアカデミー賞ノミネート ) に徹しています。

アイルランド紛争と言うと、『 邪魔者を殺せ 』『麦の穂を揺らす風』『プルートで朝食を』『パトリオット・ゲーム』などなど、これまでカトリック側あるいはその武装組織IRAが描かれることがほとんど( ちなみに本作とは関係ないですが、リーアム・ニーソンは北アイルランド出身でカトリック )でしたが、今回はプロテスタント側。

本作が描く家族の父親はイングランドに出稼ぎに行っていて、週末とかには帰ってくるけれども、少年は母と祖父母らと暮らしています。
ある日突然紛争が始まり、彼らの日常は一変してしまう。

 歴史的に見ればイングランドのアイルランド征服は1649年のオリバー・クロムウェルの侵略にさかのぼる。 たとえれば、豊臣秀吉の朝鮮出兵が成功したようなもので、35年間の日韓併合の後遺症と比較しても、彼の地の確執の根深さは容易に想像できる。
 第三者から見ればイギリスの中央政府から治安出動をする軍隊も含め、プロテスタントは「 征服者側 」、でも住民はもはやよそ者ではなく、何世代も住んできたここがふるさと。 
扇動されてプロテスタント住民たちは、カトリック住民の敬遠する商店を襲撃するなどしますが、劇中の少年たちの家族も巻き込まれてします。

劇中、少年がテレビで観ている映画は『 真昼の決闘 』と『 リバティ・バランスを射った男 』
そして「 スター・トレック( 宇宙大作戦 ) 」と「 サンダーバード 」に夢中で、多様性と共存、暴力に直面する現実と平和への希求を表しています。

出演者で注目は、祖父役の「 第一容疑者3 」から注目しているキアラン・ハインズ。 彼もベルファスト出身で、ケネス・ブラナ―がプロテスタントなのに対し、彼はカトリック。 アカデミー助演男優賞ノミネート。
そして祖母役のジュディ・デンチ。 さすがの名演で作品を締めています。

プロレスタント側の組織からの勧誘を断る父親ですが、家族は迷います。
生まれ育った愛着あるこの地を去るのか、それとも留まるのか。
ラストの家族の下した選択はせつなく、重い。

ちなみに映画に関連して書くと、北アイルランドのプロテスタント側の武装テロ組織・アルスター義勇軍の元メンバーだったヒュー・ブラウン氏は、その後回心し牧師となって来日、兵庫県で今も活動し非暴力を訴えています。

 北アイルランド紛争が収まった要因の一つは、イギリス、アイルランド両国のEU加盟と考えられます。 フランスとドイツ国境地帯のアルザス=ロレーヌの例もそうですが、国家を越える大きな構造が両国の関係をより対等に近いものにし、国境を事実上なくすものでした。 ですが、イギリスはEUを脱退してしまい、再び国境問題が立ち上がってきました。 スコットランドの分離・独立運動も合わせて、今後の動向が懸念されます。

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