梅切らぬバカ

『桜切るバカ、梅切らぬバカ』ということわざを初めて知りました。
桜と梅は手入れが違うということを知らないと
花を見ることは出来ないということですね。
チュウさんの大切な梅の木はチュウさんが嫌がるので剪定もしていないのに
何故か実をつける梅となっています。

もうすぐ50歳になる自閉症の息子、チュウさんの面倒を見ながら
占い師を営む母・たまこさん。
加賀まりこさん演じるたまこさんが、気風が良くて、スパっとしていて
それでいて優しさ溢れる女性で、とても素敵な女性でした。
息子を心から愛している。
自閉症であることは個性であって特別ではないと息子と自然と向き合う様が良かったです。

彼らを地域から締め出そうとする人たちがいることも現実でしょう。
では、どこで生きればいいと言うのですか？
『お互い様』。。これは日本人が持つ美徳ではないかと思いました。
譲り合う心、お互いに支え合う心、迷惑かけるのはお互い様ですから、
そういう気持ちが私たちにあるうちは
この国も捨てたものではないかもしれませんね。

何かが解決するわけではないですが
母と息子の日常を切り取った優しさ溢れる作品。
そして塚地さん、とても自然な演技で上手でした。

加賀まりこ久々の主演作品、４８歳になる自閉症の息子を抱える老いた母親珠子役を演じている。
「樹木はそれぞれ異なった特徴がありそれに合わせて世話しないと上手く育たない」という「梅切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」のことわざに由来する題名のとおり、息子の言動にイラつくわけでもなく、母親の全てを肯定する包容力と愛情が自由に枝を延ばし道路にはみ出している梅の木に象徴されているようだ。
朝は決まって６時４５分に起床、７時に朝食をとり、知的障碍者の仕事場に通う忠男こと忠さんを見送る母子の日常はしずかに流れている。
一人で自閉症の息子を育ててきた母、自身は占い(チト怪しげだが)で生計を立てているようだが唯一の不安は自分がいなくなったら息子はどう生きていくのだろうかというもの、当然のことだろう。
なんとか息子を一人立ちさせようとグループホームで別居させようとするが、そこで忠さんが思いがけない出来事に巻き込まれてしまう。
地域住民とコミュニティーの間に生じる偏見や不協和音、よくある光景である、子供の声がうるさいととう住民の声で閉鎖になった公園もあったぐらいだ。
グループホームの移転を求める住民の声、どちらの言い分も分かるような気がするのだが、やはり偏見や憶測でものを言うのではなく理解し合う事が一番大事なことなのであろう。
隣に引っ越ししてきた里村家のご主人茂、最初は隣家の珠子親子に対して否定的であり攻撃的であったのが、いつの間にか打ち解けて理解し合うという関係になったのは少しその変身ぶりに驚き。
つまり理解し合うと言う重要性を示唆してくれているようだ。
邪魔な物を排除するだけが人生ではないということなのだろう。
ストーリーは特にハッピーエンドという流れではなく静かに幕か引かれるところにも好感が持てる。

主演の２人はとても良い演技をされていました。
自閉症の息子を抱えた母の心がとても丁寧に描かれていて、トライ&エラーを繰り返して今までもこれからも進んできた親子の姿に心をうたれます。
人間はもともと優しい。だけど、疲れていたり、目的を追うことにやっきになることで、優しさを忘れてしまうのかもしれないと感じました。
全ての多様性を許せる世界になりますように

この映画に出てきた梅の木、見に行きたいなぁ

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

主旨はおそらく考えさせられる案件なはずなのに、何故かほっこりしてしまう作品でした。
タイトルがことわざから引用されてた事を知らなくて自分の知識のなさに反省。
でも知識がない故に惹かれてしまったタイトル。

５０歳を迎えた自閉症の息子と同居する母親。
実際にあるんだろな、こういうの。
自閉症って切実でやり切れないイメージしかなかったけど、この作品に出てくる忠さんは明るい。接する母親も明るい。
なんだか２人を見てると笑いさえ出てくる、いい意味で。

でも地域の住民達や引越てきた隣人家族は嫌悪をあからさまに示すんだよなー。まるで自閉症が悪そのものみたいな。
こういう奴らいるよなー、どこにでも。
そんな中で正直さと人間らしさを極めたあの少年ってカッコよかった。大人は恥を知れよ。
その少年を通じて、次第に変わっていく両親の姿に救われたし。
自閉症って地域が一丸となって受け入れてやるべき病じゃないのかなー。

この作品を観るまでは閉鎖的なイメージしかなかった自閉症。忠さんのおかげでそのイメージが変わりました。


いい作品だったけど、ラストがまとまりなく急に終わる感じで残念。
あれはハッピーエンドって事かもだけど。

母親が何故梅の木を切らないのか、忠さんが何故「切る」行為に嫌がる素振りを見せるのか・・・ちゃんと意味がありました。

それにしても塚地うまいなー。


おすすめ度 ８０％

心が温かくなる素敵な作品。
なぜか観ていて涙があふれた。
加賀まりこと塚地の演技が抜群。