テーラー　人生の仕立て屋

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（2020年制作・ギリシャ・ドイツ・ベルギー合作）
ギリシャ・アテネ。
ニコス（50歳）は36年間、高級スーツの仕立て屋を父と営んできた。
しかし不況により店は銀行に差し押さえられ、さらに父は倒れてしまう。
ニコスは、廃車や廃材を利用して屋台を作り、『高級紳士服』の移動販売を始める。
（いくらなんでも、ピーマンや魚と並んで紳士服が売れるものかね・・）
（並べたウール生地に、手の汚い客が触ろうものなら真っ青になるニコス）
（興味を持った客でも、800ユーロと聞いて、今度は客がのけぞる！）
客層も客単価も、購入動機からして場違いのマーケットに飛び込み、毎日棒立ちのニコス。

そこへ、場違いの最たるクライアント登場。『ウェディングドレス作って。』
自慢じゃないが、いや自慢だが36年紳士服一筋のニコス、しかし今や背水の陣、ノーとは言えぬ。
彼の技術と根性とセンスは、美しいドレスを完成させ、客の満足を得る。
世界に1点のニコスのオーダーメイドのウェディングドレスは次第に評判になる。
もしもあの時、ウチじゃやってません、と断ったら今頃首つりか？
（紳士服にも共通の、客のラインに合わせ、丁寧な着やすい服を作る技術は、
客の最高の笑顔を引き出すのだった。）
やがて、自転車で引いていた屋台は、スズキの赤い、カッコいいオートバイで牽引。
そして、ついにサイドパネルのついた本格的移動トラックへとレベルアップする。

劇中のドレスは、本作のためだけに作られた完全オリジナル。
登場するドレスはすべてベルギーのデザイナー、ジュリー・ルブランがデザインされたそうです。
サクセスストーリーではあるが、終始、ニコスは言葉少な。誠実なたたずまいが
抑えた作風の本作によく合う。
ラストも自然体のまま、プツリと終了する日常。ギリシャだなぁ。（苦笑）
ステキなドレスを沢山観賞できて、こちらも笑顔になりました。(^-^)/

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ロバート・デニーロとミスタービーンを足して2で割ったような主人公ニコスが
なんともおとぼけな感じだったので
これはコメディなんだな、と思って見始めましたが
それほどにはコメディという感じではなかったです。

経営難のテーラーを救うべく彼が考えたアイデアは
屋台で紳士服の仕立て注文を取るということ。
なかなか高級紳士服を注文する人はいなくて厳しい状況の中で
ウェディングドレスを注文する女性が現れ
ドレスはお針子の仕事だ！と怒る父親の言葉はスルーして
ニコスは世界で一つだけのドレスを作るのです。
やがて、口コミでそれが広がって。。。

もう少し感動的な展開を期待していたので
意外にも淡々とつづられていた内容には、ちょっと肩透かしでした。
それでも、ニコスが決してめげずに、色々なアイデアを駆使して
諦めずに前に進んでいく姿が良かったです。
お針子の仕事だと叱咤した父親に
最後は素晴らしい出来だと誉められたウェディング・ドレス。
やがてニコスは本格的な移動式ウェディングドレス仕立て屋となるのでした！

お隣の人妻との関係はその後どうなったのか？
気になるところですが、そこは明らかにはされませんでした。
（屋台を壊したのは、たぶん彼女の旦那の仕業ですよね？）

私の父親も紳士服のテーラーでしたので、親近感のある作品でした。

とは言っても、16歳の時から数十年、父親と一緒に仕立ての仕事一筋だった主役のニコスは至って真面目で、笑いも少なく会話が弾むわけでもなく、新しい試みにも淡々として、お愛想も言わず、ただ黙々と挑戦しているばかり。逆に大丈夫かと心配になり、頑張れ！と応援したくなります。

　解説には不況でとありますが、それだけではなく、1961年創業の老舗であったとしても、時代の趨勢によって、高級ブランドのオートクチュールと安価な既製品との狭間で、彼らのような個人経営の高級テーラーのお店が淘汰されていく運命は避けられない。お店の時計が故障してしまうのはいかにも象徴的。引退や死亡といった理由で今までの上客を失ってしまうと、新たな顧客の開拓は極めて困難。見るからに上質そうな三つ揃いのスーツを着こなして店頭に立っても、暇を持て余すばかり。銀行からはいよいよ差し押さえを宣告されてしまう。

　職人気質の頑固一徹の父親がショックで入院し、今が変革のチャンスとばかり、お客が来ないのならこっちから出掛けて行けばいいさと案外柔軟に、廃品を材料に器用に手作りした手押しの屋台で街頭販売を始めてみたものの、ニーズが全く合わず、商品の高級スーツどころか彼自身もおおよそ露天商には不向きこの上ない。ところが、ひょんなことからウェディングドレスの注文を受け、それをきっかけにドレスの出張販売を始める。近所の仲良しの少女ヴィクトリアや裁縫の得意な彼女の母親オルガも手伝ってくれる。

　丁寧に作られたニコスのウェディングドレスは徐々に評判になっていくのだけれど…。彼のささやかな成功を示すように、手押しの屋台はスズキの格好いいオートバイに牽引されるようになり、最後には「ウェディングドレス　ニコス・カラリス」と車体にペイントされた立派なバンへと変身します。既製服の時代になっても、女性たちの夢であるウェディングドレスだけは特別ということなのでしょう。様々なデザインの工夫を凝らした素敵なウェディングドレスが次々登場するので、それを見るだけでも楽しいです。

　軽快な足踏みミシンの音、布を切る鋏のシャープな音、使い込まれ整理された道具類、大切に保存されている顧客毎の型紙等々、失われつつある職人の手仕事の世界が丁寧に撮影されています。テーラーはお針子とは違うと、息子の新たな試みに批判的だった父親が、ついには彼のドレスを見ていい出来だと褒めてくれるのは、テーラーとしての矜持があっても、生きるために時代の変化に対応して新たな挑戦をせざるを得ないニコスにとって、せめてものはなむけの言葉になったのではないでしょうか。

　恋は、子どもに反対されたら、継続したり成就したりするのは難しい。ふたりで岸壁に並んで座って黄昏れていく美しい海をずっと眺めていた思い出は、心の奥に秘められて、挑戦を続けていくニコスの支えとなってくれるのではないかと、願わずにはいられない。

ギリシャ映画って初めて観た。
他がどんななのかわからないが、これはじんわりとした穏やかな映画で、「かもめ食堂」にちょっと似ている。
主役のおっさんは複数の演劇学校で教鞭を執るほどだから教養豊かな人なんだろうと思う。が、この映画では、16歳から父親の下でスーツの仕立てしかしてこず、新規の顧客もつかまえられず、ボンヤリしているうちにお店が銀行に差し押さえられてしまうというノロマなな人物をそれらしく演じていた。

ストーリーは一応あるが、ほとんどないに近い。
銀行にお店が差し押さえられることになり、そのショックからか店主のジイさんは入院してしまう。息子は父親に言われたことを真面目にやってるうちに５０歳をすぎたって感じの男で、自分が店をなんとかせねばならないと気づいて屋台をつくる。屋台で仕立屋をやろうということだ。ギリシャってところはほとんど雨が降らないらしく、露天商でもテーラーがやれるようで、ウェディングドレスの注文を受けてるうちにちょっとはカネを稼げるようになる。隣家の奥さんが手伝ってくれたことも大助かりだったようで、ラストのほうではその奥さんと不倫関係になってしまうが、だからどうというお話でもない。

たゆとうように時間が経過し、毎日天気がよくて気持ちいい・・っていうだけの映画。
だけど、なんとなく面白かった。

16歳のときかから父のもとで36年間スーツの仕立てに従事してきたニコス。
老いた父も、父と仲の良い友人たちも、普段からきちんとスーツを着こなしている。
紳士はスーツを着るものだ、という哲学が生きている。
ニコスは朝起きると髭をあたり、身づくろいをしてネクタイを締め、ポケットチーフをさして店に出る。
しかし客が来ることはない。店を出て街に出ると、ほとんどの男たちはTシャツと半ズボン、サンダル履きだ。
テナント料を払えなくなり、店は差し押さえられ、ショックで父は倒れてしまう。
時の流れるのは早い。ノスタルジーにばかり浸っていると、取り残されてしまうのだ。
このままではいかん。50歳を過ぎたニコスが、人生の仕立て直しにとりかかる。
隣に住むチャーミングな小学生、ヴィクトリアとニコスは仲がよい。この娘がなかなかよい仕事をする。
勢いあまって夫あるヴィクトリアのママに恋をして、ちょっとややこしいことになるのであるが。