ファーザー / アンソニー・ホプキンス
ファーザー
/フロリアン・ゼレール
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全体の平均評価点: (5点満点)
(23)
解説・ストーリー
名優アンソニー・ホプキンスが認知症に苦しむ年老いた父親を演じアカデミー賞主演男優賞に輝いた感動のヒューマン・ドラマ。同賞では脚色賞と合わせ2冠に輝いた。認知症が進行していく父親と、その介護で疲弊していく娘の姿を、認知症の側の視点から描く画期的な表現スタイルで綴っていく。娘役は「女王陛下のお気に入り」のオリヴィア・コールマン。監督は本作の基になった舞台を手掛け、これが映画監督デビューとなるフロリアン・ゼレール。ロンドンで一人暮らしをしている81歳のアンソニー。ある日、介護人とトラブルを起こし、娘のアンが駆けつける。アンソニーには認知症の傾向が見え始め、それは日に日に悪化しているようだった。そんな中、アンから新しい恋人とパリで暮らすと告げられショックを受けるアンソニーだったが…。 JAN:4547286009922
名優アンソニー・ホプキンスが認知症に苦しむ年老いた父親を演じアカデミー賞主演男優賞に輝いた感動のヒューマン・ドラマ。同賞では脚色賞と合わせ2冠に輝いた。認知症が進行していく父親と、その介護で疲弊していく娘の姿を、認知症の側の視点から描く画期的な表現スタイルで綴っていく。娘役は「女王陛下のお気に入り」のオリヴィア・コールマン。監督は本作の基になった舞台を手掛け、これが映画監督デビューとなるフロリアン・ゼレール。ロンドンで一人暮らしをしている81歳のアンソニー。ある日、介護人とトラブルを起こし、娘のアンが駆けつける。アンソニーには認知症の傾向が見え始め、それは日に日に悪化しているようだった。そんな中、アンから新しい恋人とパリで暮らすと告げられショックを受けるアンソニーだったが…。 JAN:4547286009922
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「ファーザー」 の解説・あらすじ・ストーリー
解説・ストーリー
名優アンソニー・ホプキンスが認知症に苦しむ年老いた父親を演じアカデミー賞主演男優賞に輝いた感動のヒューマン・ドラマ。同賞では脚色賞と合わせ2冠に輝いた。認知症が進行していく父親と、その介護で疲弊していく娘の姿を、認知症の側の視点から描く画期的な表現スタイルで綴っていく。娘役は「女王陛下のお気に入り」のオリヴィア・コールマン。監督は本作の基になった舞台を手掛け、これが映画監督デビューとなるフロリアン・ゼレール。ロンドンで一人暮らしをしている81歳のアンソニー。ある日、介護人とトラブルを起こし、娘のアンが駆けつける。アンソニーには認知症の傾向が見え始め、それは日に日に悪化しているようだった。そんな中、アンから新しい恋人とパリで暮らすと告げられショックを受けるアンソニーだったが…。 JAN:4547286009922
「ファーザー」 の作品情報
「ファーザー」 のキャスト・出演者/監督・スタッフ
ファーザーの詳細
収録時間: |
字幕: |
音声: |
97分 |
|
|
レイティング: |
記番: |
レンタル開始日: |
|
IF210992 |
2021年10月06日
|
在庫枚数 |
1位登録者: |
2位登録者: |
98枚
|
0人
|
1人
|
ファーザーの詳細
収録時間: |
字幕: |
音声: |
97分 |
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レイティング: |
記番: |
レンタル開始日: |
|
IF210992 |
2021年10月06日
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在庫枚数 |
1位登録者: |
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ユーザーレビュー:23件
認知症患者に見える心象風景を映像化
投稿日:2021/09/01
レビュアー:アーモンド
2020年(イギリス/フランス)監督:フロリアン・ゼレール
恐ろしい映画でした。
認知症の父親役のアンソニー・ホプキンスが実に名演でした。
2度目のアカデミー賞主演男優賞受賞も納得です。
56年に渡る役者人生の集大成に相応しい演技でした。
同作品は同時にアカデミー賞の脚本賞も受賞。
非常に観客(わたし)を惑わせる映画でした。
娘(アン)の視点と、
父親(アンソニー)の視点の両方で描かれる。
そしてアンソニーは認知症がかなり進んでいます。
そこに脚本も映像も意地悪い。
娘のアンがある時は別人だったり、
アンの元夫なのか現夫なのか?居間にいる男。
この男は現実の人物なのかも不明です。
「お前(アンソニー)にはイライラする。俺たちの邪魔をいつまでするつもりか?」
と、面の向かって聞いてくる。
長生きは身勝手で我が儘・・・とまで言う。
私はちょっと考えたのですが、このポールと名乗る見知らぬ男は、アンの分身で、もしかして、アンの本音を話すのが彼なのではないのでしょうか?
アンの姿は、優しく父親思いで献身的な娘そのものです。
しかしそんな優しい娘が、60歳過ぎて出会った男の住むパリへ移り住んだりするものだろうか?仕事も捨てて・・・。
あるシーンでは、精神科医にはハッキリとパリ行きを否定しています。
本当にこんがらがります。
新しい介護人のローラは、若く美しく妹娘のルーシーに似ていて、
嬉しくなったアンソニーはタップダンスを披露したりする。
しかし翌日現れたローラは中年の女の人でした。
全てはアンソニーの妄想で、顔の識別も出来なくなっている・・・
見知らぬ男が居間にいる・・・アンの顔も忘れる・・・
と、認知症の症状と思って観ることも出来ます。
認知症患者の見ている心象風景は、これほど歪んでいるのですよ!!・・・と。
娘のアン役は「女王陛下のお気に入り」でアカデミー賞主演女優賞を受賞したオリビア・コールマン。
善意の娘を演じて、「本音はそれだけではないだろう!」
と、ツッコミを入れたくなる好演でした。
監督は2012年にこの映画の元となる戯曲を書いたフロリアン・ゼレールで、
今回戯曲を自ら監督しました。
ミステリー映画やサスペンスのように謎がいっぱいで、疑心暗鬼になってしまいます。
騙し絵のようなシーンがいっぱい
アンソニーのフラット(家)から私(アン)のフラットに越して来たのよ、
ここは私(アン)の家・・・と言うのに、
アンソニーが慣れた手順で紅茶を入れるキッチンは、
キッチンの壁はベージュ模様のタイルだ。
(アンの家はブルーの壁紙。)
アンソニーの壁に飾られてるルーシーの絵は、アンが自宅だと言う居間にも
飾られていた。
騙してるのは誰?
記憶が薄れてるアンソニーを良いことに嘘を付いてるの?
映像は騙し絵のように仕組まれている。
アンソニーが窓から見下ろす景色にもフェイクが隠されているのだ。
年老いると自分の目に見えるものを疑わなくてはならないのか?
アンソニーは常に、自分の判断に懐疑的です。
自分で何も出来なくなる。決定権がなくなる。保護者の指示のままに行動するしかなくなる。
ここに相手への信頼が失われたら・・・と思うと本当に恐ろしい。
そこに付け込まれて、ロフト(住居)も財産も失い、
何より時間、自由、尊厳さえ失う。
死んだら何ひとつ持って行けないのだから当然なのだけれど、
生きてる間に奪われて行くのを見るのは辛い。
老いの現実を突きつける衝撃作でした。
このレビューは気に入りましたか?
11人の会員が気に入ったと投稿しています
観ているものは疑似認知症体験をすることになる
とても複雑な構成です。
何が本当で、何が偽物なのか、どれが現実で、どれが妄想なのか
こんがらがっていきます。
それはまるで自分が認知症に陥ったようにさえ感じさせます。
認知症になると、こんな風に観たり、聞いたり、感じたりするのだということを
疑似体験できる作品とも言えるのではないでしょうか
誰もがなる可能性のある認知症。
なってしまった当人に罪はなく
さりとて介護する人は振り回されてクタクタになります。
娘のアンが決断した選択は間違いではありません。
子供だからといって、とことん面倒みることは出来ませんから。
アカデミー主演男優賞に輝いたアンソニー・ホプキンスの真に迫った演技は
もしや本物では?と思わせる程の名演技。
特にラストの究極のシーンには胸が詰まる思いになりました。
『枝から葉が落ちていくような感じ。。』そうアンソニーは言います。
『何が何だか判らないんだ、自分が誰かもわからない。。。』
人間としての尊厳が失われる認知症の
恐ろしさと悲しさをまじまじと感じさせる作品でした。
このレビューは気に入りましたか?
6人の会員が気に入ったと投稿しています
「鍵」が見つからないパズル
「ファーザー」(2020、英国/フランス、カラー、97分)。
監督・原作・脚本はフローリアン・ゼレール(1979年パリ生)。彼は小説家・劇作家であり、本作は自作戯曲「Le Père(父)」をクリストファー・ハンプトンを共同で脚本化し、映画化したものである。二人は第93回アカデミー賞の脚色賞を受けた。主演のアンソニー・ホプキンス(1937生)は、「羊たちの沈黙」(1991)に続いて二度目の主演男優賞を受けた。彼を想定して監督は原作を書いていたのだろう。
ロンドンで一人暮らしを送る81歳の「アンソニー」(ホプキンス)。娘の「アン」(オリヴィア・コールマン)は父に徐々に認知症のきざしが出てきたので、ヘルパーを付けたが、「アンソニー」は「被害妄想」を「装い」、追い出してしまっていた。自分には「アン」のほかに「ルーシー」という娘がいたはずだが、家のどこにもいない──そう思って「アン」に尋ねるが、なぜか彼女は口ごもってしまう。その直後、「アン」は父に、新しい恋人とパリで暮らすことにしたと告げた。また別の日、「ポール」と名乗る知らない男(マーク・ゲイティス)が訪問し、「自分は『アン』と結婚して10年以上になり、ここは自分と『アン』の家だ」と告げる。しかし、あとで出てくる「ポール」はルーファス・シーウェルが演じている。「アン」を演じる女優もオリヴィア・ウィリアムズに変化したりする。どれが本物なのか。「アンソニー」の症状は急速に悪化していく。記憶が失われ、やがて自分の現在状況すら分からなくなっていく。新しく来たヘルパー「ローラ」(イモージェン・プーツ)を気に入り、「ルーシーに似ている」と言ったあと、急に憎しみの言葉を口にする。「アン」は父を必死で介護しようとするが、逆につらく当たられて、彼女自身も病になりそうになっていく。
以上の物語の簡単な・なぞりも、どこまでが、真に起きたことか「アンソニー」の妄想か、その区別があいまいになっています。原作戯曲を読んでいないが、舞台の場合、セリフによる細かい表現で妄想を組み立てていくのだろう。映画は「何でも有り」の表現手段だから、現実・非現実の区分がより曖昧にできる。そこに観客は惑わされるのだが、監督は正にそこを狙っているのかもしれない。実は、老人は意外と冷静で、自分のフラット(家)を奪おうとする周囲のたくらみを認知症を装いながら見破ろうとしているのかもしれないと思ったりもする。「ルーシー」が鍵か?
現実が分解してジグソーパズルのようになっています。組み立てては壊れていく。
私の年代になると他人事ではなく、徐々に始まっていると思います。
突然、正常に戻ることもあるそうです。一瞬、周囲がそこを捉えないと、また元に戻ってしまう、と。
音楽の趣味のいい映画でもあります。ルドヴィコ・エイナウディのオリジナル・ピアノ曲「冷たい風」が基調になっていますが、挿入されるクラシック音楽の選択が素晴らしい。これは「アンソニー」が聴いている曲ですが、パーセル「アーサー王」、ベッリーニ「ノルマ」、ビゼー「真珠採り」のアリアがとても効いています。音楽を聴いているときだけは、正常でいられたら……。
このレビューは気に入りましたか?
5人の会員が気に入ったと投稿しています
天気が良い日は散歩に行きましょう
投稿日:2023/03/25
レビュアー:趣味は洋画
ファーザー(2020年、イギリス・フランス、カラー、97分)
この映画の成功は、認知症による記憶と時間の混乱が、主人公アンソニーの視点で描かれていること。
そして、観る側も同じ視点で体感できること。
なので、辻褄の合わないストーリー展開に困惑したり、認知症の哀しさ、やるせなさを感じることになります。
奇しくもアンソニーを演じたアンソニー・ホプキンスのセリフの中に、 ‘私の生年月日は1937年12月31日(金)だ’ と言うシーンがあります。
これは実際に彼の誕生日であり、生年月日も含めて「役に成りきっている」のですね。
ロンドン。認知症を患っている一人暮らしのアンソニー(アンソニー・ホプキンス)は、日を追うごとに症状が重くなっている。娘のアン(オリヴィア・コールマン)が父親を心配して訪ねてくるが、アンは ‘恋人とパリで暮らすことになったので、今までのように毎日来ることは出来ない’ と言う。
納得できないアンソニーに対し、アンは ‘今まで何度も説明してきたこと’ と説いた。ある日、アンソニーは家に見知らぬ男がいることに気づく。男は自分をポールと名乗り、アンと結婚して10年になると言う。更に続けて ‘ここはアンソニーの家ではなく、自分とアンの家だ’ と言った。すると暫くして、自分をアンと名乗る見知らぬ女(オリヴィア・ウィリアムス)が帰ってくる。奇妙なことの連続に、アンソニーは混乱する。数日後、新しい介護士のローラ(イモージェン・プーツ)がアンに連れられてやって来た。アンソニーは、ローラが若い頃のルーシー(アンの妹)に似ていることに機嫌をよくし、ローラにウィスキーを振舞った。ところが自分を見て笑うローラに対し、突然、辛辣な言葉を浴びせたりした。アンは悲しくなって涙を流すが、時にはアンに対して感謝の言葉を発する父親を、心底憎むことは出来なかった。ある日の夕刻、アンソニーは先日会ったポールとは別人のポールが、 ‘アンソニーを施設へ入れるべきだ’ とアンに話しているのを聞いてしまう。
なんといってもアンソニー・ホプキンスの名演技に尽きると思います。
本作出演時は83歳だと思いますが、「羊たちの沈黙」(91年)に続いてアカデミー賞・主演男優賞を受賞しました。
彼の出演作品は31本観ていますが、最も若いときの作品が「冬のライオン」と「鏡の国の戦争」で、共に1968年の作品でした。
それでも31歳の頃ですから、まさに遅咲きの大スターといったところでしょうか。
一方、二人のオリヴィアの名演技も素晴らしいです。
オリヴィア・コールマンは、「女王陛下のお気に入り」(2018年)におけるアン女王役の強烈な個性が印象的ですが、本作では一転して父親思いの普通の女性を演じています。ただ、普通の女性...これが演ずるうえで最も難しいと思いますが、さすがに内面の心情表現が上手いです。
本作の演技で、アカデミー賞・助演女優賞にノミネートされました。
もうひとりのオリヴィア・ウィリアムス。
彼女も遅咲きスターのひとりで、「ポストマン」(97年)でデビューしたときは29歳。
ケビン・コスナーが監督・主演を務めていましたが、作品の出来栄えは酷評。
でも「シックス・センス」のオリヴィアは、知的で抑制の効いた演技が評価されました。
落ち着きと味わいを感じる不思議な魅力をもった女優サンです。
因みに、老人が混乱すると泣き出してしまうことがあるのですね。
それを見ていても、普通に受け入れられる映画でした。
アカデミー賞・作品賞ノミネートも当然の結果です。
このレビューは気に入りましたか?
3人の会員が気に入ったと投稿しています
こんがらがる展開、でも素晴らしい
投稿日:2021/10/09
レビュアー:たかちゃん
アカデミーを受賞したに値する最高傑作。でも観客はこんがらがる。でもジーと観てストーリーを追いたくなる。観る人それぞれの人生に重ね合わせていく。
このレビューは気に入りましたか?
3人の会員が気に入ったと投稿しています
ユーザーレビュー
認知症患者に見える心象風景を映像化
投稿日
2021/09/01
レビュアー
アーモンド
2020年(イギリス/フランス)監督:フロリアン・ゼレール
恐ろしい映画でした。
認知症の父親役のアンソニー・ホプキンスが実に名演でした。
2度目のアカデミー賞主演男優賞受賞も納得です。
56年に渡る役者人生の集大成に相応しい演技でした。
同作品は同時にアカデミー賞の脚本賞も受賞。
非常に観客(わたし)を惑わせる映画でした。
娘(アン)の視点と、
父親(アンソニー)の視点の両方で描かれる。
そしてアンソニーは認知症がかなり進んでいます。
そこに脚本も映像も意地悪い。
娘のアンがある時は別人だったり、
アンの元夫なのか現夫なのか?居間にいる男。
この男は現実の人物なのかも不明です。
「お前(アンソニー)にはイライラする。俺たちの邪魔をいつまでするつもりか?」
と、面の向かって聞いてくる。
長生きは身勝手で我が儘・・・とまで言う。
私はちょっと考えたのですが、このポールと名乗る見知らぬ男は、アンの分身で、もしかして、アンの本音を話すのが彼なのではないのでしょうか?
アンの姿は、優しく父親思いで献身的な娘そのものです。
しかしそんな優しい娘が、60歳過ぎて出会った男の住むパリへ移り住んだりするものだろうか?仕事も捨てて・・・。
あるシーンでは、精神科医にはハッキリとパリ行きを否定しています。
本当にこんがらがります。
新しい介護人のローラは、若く美しく妹娘のルーシーに似ていて、
嬉しくなったアンソニーはタップダンスを披露したりする。
しかし翌日現れたローラは中年の女の人でした。
全てはアンソニーの妄想で、顔の識別も出来なくなっている・・・
見知らぬ男が居間にいる・・・アンの顔も忘れる・・・
と、認知症の症状と思って観ることも出来ます。
認知症患者の見ている心象風景は、これほど歪んでいるのですよ!!・・・と。
娘のアン役は「女王陛下のお気に入り」でアカデミー賞主演女優賞を受賞したオリビア・コールマン。
善意の娘を演じて、「本音はそれだけではないだろう!」
と、ツッコミを入れたくなる好演でした。
監督は2012年にこの映画の元となる戯曲を書いたフロリアン・ゼレールで、
今回戯曲を自ら監督しました。
ミステリー映画やサスペンスのように謎がいっぱいで、疑心暗鬼になってしまいます。
騙し絵のようなシーンがいっぱい
アンソニーのフラット(家)から私(アン)のフラットに越して来たのよ、
ここは私(アン)の家・・・と言うのに、
アンソニーが慣れた手順で紅茶を入れるキッチンは、
キッチンの壁はベージュ模様のタイルだ。
(アンの家はブルーの壁紙。)
アンソニーの壁に飾られてるルーシーの絵は、アンが自宅だと言う居間にも
飾られていた。
騙してるのは誰?
記憶が薄れてるアンソニーを良いことに嘘を付いてるの?
映像は騙し絵のように仕組まれている。
アンソニーが窓から見下ろす景色にもフェイクが隠されているのだ。
年老いると自分の目に見えるものを疑わなくてはならないのか?
アンソニーは常に、自分の判断に懐疑的です。
自分で何も出来なくなる。決定権がなくなる。保護者の指示のままに行動するしかなくなる。
ここに相手への信頼が失われたら・・・と思うと本当に恐ろしい。
そこに付け込まれて、ロフト(住居)も財産も失い、
何より時間、自由、尊厳さえ失う。
死んだら何ひとつ持って行けないのだから当然なのだけれど、
生きてる間に奪われて行くのを見るのは辛い。
老いの現実を突きつける衝撃作でした。
観ているものは疑似認知症体験をすることになる
投稿日
2021/10/20
レビュアー
飛べない魔女
とても複雑な構成です。
何が本当で、何が偽物なのか、どれが現実で、どれが妄想なのか
こんがらがっていきます。
それはまるで自分が認知症に陥ったようにさえ感じさせます。
認知症になると、こんな風に観たり、聞いたり、感じたりするのだということを
疑似体験できる作品とも言えるのではないでしょうか
誰もがなる可能性のある認知症。
なってしまった当人に罪はなく
さりとて介護する人は振り回されてクタクタになります。
娘のアンが決断した選択は間違いではありません。
子供だからといって、とことん面倒みることは出来ませんから。
アカデミー主演男優賞に輝いたアンソニー・ホプキンスの真に迫った演技は
もしや本物では?と思わせる程の名演技。
特にラストの究極のシーンには胸が詰まる思いになりました。
『枝から葉が落ちていくような感じ。。』そうアンソニーは言います。
『何が何だか判らないんだ、自分が誰かもわからない。。。』
人間としての尊厳が失われる認知症の
恐ろしさと悲しさをまじまじと感じさせる作品でした。
「鍵」が見つからないパズル
投稿日
2021/10/10
レビュアー
ちゅく
「ファーザー」(2020、英国/フランス、カラー、97分)。
監督・原作・脚本はフローリアン・ゼレール(1979年パリ生)。彼は小説家・劇作家であり、本作は自作戯曲「Le Père(父)」をクリストファー・ハンプトンを共同で脚本化し、映画化したものである。二人は第93回アカデミー賞の脚色賞を受けた。主演のアンソニー・ホプキンス(1937生)は、「羊たちの沈黙」(1991)に続いて二度目の主演男優賞を受けた。彼を想定して監督は原作を書いていたのだろう。
ロンドンで一人暮らしを送る81歳の「アンソニー」(ホプキンス)。娘の「アン」(オリヴィア・コールマン)は父に徐々に認知症のきざしが出てきたので、ヘルパーを付けたが、「アンソニー」は「被害妄想」を「装い」、追い出してしまっていた。自分には「アン」のほかに「ルーシー」という娘がいたはずだが、家のどこにもいない──そう思って「アン」に尋ねるが、なぜか彼女は口ごもってしまう。その直後、「アン」は父に、新しい恋人とパリで暮らすことにしたと告げた。また別の日、「ポール」と名乗る知らない男(マーク・ゲイティス)が訪問し、「自分は『アン』と結婚して10年以上になり、ここは自分と『アン』の家だ」と告げる。しかし、あとで出てくる「ポール」はルーファス・シーウェルが演じている。「アン」を演じる女優もオリヴィア・ウィリアムズに変化したりする。どれが本物なのか。「アンソニー」の症状は急速に悪化していく。記憶が失われ、やがて自分の現在状況すら分からなくなっていく。新しく来たヘルパー「ローラ」(イモージェン・プーツ)を気に入り、「ルーシーに似ている」と言ったあと、急に憎しみの言葉を口にする。「アン」は父を必死で介護しようとするが、逆につらく当たられて、彼女自身も病になりそうになっていく。
以上の物語の簡単な・なぞりも、どこまでが、真に起きたことか「アンソニー」の妄想か、その区別があいまいになっています。原作戯曲を読んでいないが、舞台の場合、セリフによる細かい表現で妄想を組み立てていくのだろう。映画は「何でも有り」の表現手段だから、現実・非現実の区分がより曖昧にできる。そこに観客は惑わされるのだが、監督は正にそこを狙っているのかもしれない。実は、老人は意外と冷静で、自分のフラット(家)を奪おうとする周囲のたくらみを認知症を装いながら見破ろうとしているのかもしれないと思ったりもする。「ルーシー」が鍵か?
現実が分解してジグソーパズルのようになっています。組み立てては壊れていく。
私の年代になると他人事ではなく、徐々に始まっていると思います。
突然、正常に戻ることもあるそうです。一瞬、周囲がそこを捉えないと、また元に戻ってしまう、と。
音楽の趣味のいい映画でもあります。ルドヴィコ・エイナウディのオリジナル・ピアノ曲「冷たい風」が基調になっていますが、挿入されるクラシック音楽の選択が素晴らしい。これは「アンソニー」が聴いている曲ですが、パーセル「アーサー王」、ベッリーニ「ノルマ」、ビゼー「真珠採り」のアリアがとても効いています。音楽を聴いているときだけは、正常でいられたら……。
天気が良い日は散歩に行きましょう
投稿日
2023/03/25
レビュアー
趣味は洋画
ファーザー(2020年、イギリス・フランス、カラー、97分)
この映画の成功は、認知症による記憶と時間の混乱が、主人公アンソニーの視点で描かれていること。
そして、観る側も同じ視点で体感できること。
なので、辻褄の合わないストーリー展開に困惑したり、認知症の哀しさ、やるせなさを感じることになります。
奇しくもアンソニーを演じたアンソニー・ホプキンスのセリフの中に、 ‘私の生年月日は1937年12月31日(金)だ’ と言うシーンがあります。
これは実際に彼の誕生日であり、生年月日も含めて「役に成りきっている」のですね。
ロンドン。認知症を患っている一人暮らしのアンソニー(アンソニー・ホプキンス)は、日を追うごとに症状が重くなっている。娘のアン(オリヴィア・コールマン)が父親を心配して訪ねてくるが、アンは ‘恋人とパリで暮らすことになったので、今までのように毎日来ることは出来ない’ と言う。
納得できないアンソニーに対し、アンは ‘今まで何度も説明してきたこと’ と説いた。ある日、アンソニーは家に見知らぬ男がいることに気づく。男は自分をポールと名乗り、アンと結婚して10年になると言う。更に続けて ‘ここはアンソニーの家ではなく、自分とアンの家だ’ と言った。すると暫くして、自分をアンと名乗る見知らぬ女(オリヴィア・ウィリアムス)が帰ってくる。奇妙なことの連続に、アンソニーは混乱する。数日後、新しい介護士のローラ(イモージェン・プーツ)がアンに連れられてやって来た。アンソニーは、ローラが若い頃のルーシー(アンの妹)に似ていることに機嫌をよくし、ローラにウィスキーを振舞った。ところが自分を見て笑うローラに対し、突然、辛辣な言葉を浴びせたりした。アンは悲しくなって涙を流すが、時にはアンに対して感謝の言葉を発する父親を、心底憎むことは出来なかった。ある日の夕刻、アンソニーは先日会ったポールとは別人のポールが、 ‘アンソニーを施設へ入れるべきだ’ とアンに話しているのを聞いてしまう。
なんといってもアンソニー・ホプキンスの名演技に尽きると思います。
本作出演時は83歳だと思いますが、「羊たちの沈黙」(91年)に続いてアカデミー賞・主演男優賞を受賞しました。
彼の出演作品は31本観ていますが、最も若いときの作品が「冬のライオン」と「鏡の国の戦争」で、共に1968年の作品でした。
それでも31歳の頃ですから、まさに遅咲きの大スターといったところでしょうか。
一方、二人のオリヴィアの名演技も素晴らしいです。
オリヴィア・コールマンは、「女王陛下のお気に入り」(2018年)におけるアン女王役の強烈な個性が印象的ですが、本作では一転して父親思いの普通の女性を演じています。ただ、普通の女性...これが演ずるうえで最も難しいと思いますが、さすがに内面の心情表現が上手いです。
本作の演技で、アカデミー賞・助演女優賞にノミネートされました。
もうひとりのオリヴィア・ウィリアムス。
彼女も遅咲きスターのひとりで、「ポストマン」(97年)でデビューしたときは29歳。
ケビン・コスナーが監督・主演を務めていましたが、作品の出来栄えは酷評。
でも「シックス・センス」のオリヴィアは、知的で抑制の効いた演技が評価されました。
落ち着きと味わいを感じる不思議な魅力をもった女優サンです。
因みに、老人が混乱すると泣き出してしまうことがあるのですね。
それを見ていても、普通に受け入れられる映画でした。
アカデミー賞・作品賞ノミネートも当然の結果です。
こんがらがる展開、でも素晴らしい
投稿日
2021/10/09
レビュアー
たかちゃん
アカデミーを受賞したに値する最高傑作。でも観客はこんがらがる。でもジーと観てストーリーを追いたくなる。観る人それぞれの人生に重ね合わせていく。
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ファーザー