パーフェクト・プラン　人生逆転のパリ大作戦！

　ヤシンの出身地はトルコではなくモロッコです。ご指摘いただき、お詫びして訂正いたします。

　途中まで見ただけで発言する資格はないのかもしれませんが、この映画を何となく不愉快に感じるのはなぜだろうと考えていました。私自身は面白みのない常識人なので、たとえコメディであっても、ある程度の節度は必要ではないかと思っています。他者の出身地とか宗教や異文化、職業、嗜好や身体的なこと等を、あからさまに面白おかしく単なる笑いのネタにすることに抵抗があります。人の気持ちを無神経に扱うことも。この映画の笑いは、それが中心だという気がします。

　例えば、ゲイに対して理解も尊重もしていないのに、ヤシンは自分に都合がいいからとゲイのカップルを偽装します。そこから起きる悲喜こもごもを笑いにするなんて、先入観と偏見もいいところです。過剰なポリティカル・コレクトネスに賛成はしませんが、たとえコメディであっても、異なるものへの最低限のリスペクトは必要なのではないかと。

　ジャケットの宣伝文句によると、フランスでは興行成績１位だったそうですから、たぶん無意識であっても、こういう笑いがフランス社会に受け入れられ浸透しているということなのでしょう。そのことにも憂鬱になります。　

　この作品も「シティーコップ」と同じ主演俳優、同じ制作陣ということで、全く同じテイストのコメディ。同じドタバタでも、少なくとも「シティーコップ」には、主人公に捜査をしようとする姿勢があって、何とか最後まで付き合えたけど、今作の主人公ヤシンは人として余りにいい加減で、コメディなのに次第に付き合うのが苦痛になってきて、ついにリタイア。彼と親友になる無職のフレッドは、憎めない感じで嫌いじゃないのだけれど、ヤシンにはどうにも好感がもてない。

　ヤシンの家族は彼に夢と希望を託して、犠牲を払って彼を建築の勉強のためにトルコからフランスに留学させてくれる。学校で彼は優秀だったのに、悪友に誘われてお酒を飲み過ぎ寝込んでしまい、肝心の卒業試験を欠席、ビザの更新ができず強制送還となってしまう。その後、不法滞在のまま、建築現場で仕事をしたりしながら、家族には嘘をつき、借金をして仕送りする始末。

　隣に越してきた無職のフレッドと仲良くなり、フレッドがヤシンのために助言してくれても、やることなすことドジばかり。同窓会で女性同士のカップルを見て閃いたヤシンは、労働許可を得るために、フレッドとの偽装結婚を思いつく。恋人リザがいるのに、親友のためにしぶしぶ承知するフレッドだったが、という展開。以降は、たぶん偽装結婚を見破られないようにするための、ドタバタが繰り広げられるのだろうと思う。

　面白いからといって、留学させてくれた家族の想いや友人の親切心を利用するだけというのは、あまりいい気分じゃない。

想像より面白かったです。主人公のヤシネが少し自分勝手というか周りを振り回しすぎて友人、彼女、母親が見ていて気の毒に思えました。ラストで正直に打ち明けて良かったです。