オフィシャル・シークレット

２０１９年(イギリス/アメリカ)監督:ギャビン・フッド
イラク戦争開戦前夜にイギリスの諜報機関に勤務する女性が取った行動の実話です。
女性の名前はキャサリン・ガン。
まだ30歳足らずのGCHQ(英国諜報機関)の中国語分析官。
ガンは２００３年アメリカのNSA(アメリカ諜報機関)よりきたメールに衝撃を受ける。

それは米国ブッシュ大統領が、イラク戦争開戦するために国連の支持を得るため、途上国の票を集めるための違法工作の依頼メールだった。

イラク戦争が起これば罪のないイラク国民が犠牲になり、イギリスの兵士も命を落とすだろう！！
《国家機密を守るより、国民の命、イラク人の命を守りたい》

キャサリンはリークを決意し、実行する。
2週間後、オブザーバー誌面をリーク記事が飾る。
しかしイラク侵攻を止めることはできなかった・・・
そしてキャサリンは逮捕されてしまう。

勇気ある女性キャサリン・ガンをキーラ・ナイトレイが演じています。
トルコ移民の夫を持つキャサリンは国家に弱みを握られているようなもの。
それでも人権弁護士のエマーソン(レイフ・ファインズ)や、オブザーバー誌の記者フライト(マット・スミス)の後ろ盾もあり、毅然と法廷に立ちます。
法廷場面はやや意外な方向へ！
残念ながら、リーガル・サスペンス要素は少ないです。

それにしても完全にジョージ・W・ブッシュ政権の汚点であり、世紀の大失敗
「イラク戦争、イラク侵攻」は誰をしても止めることが出来なかった。
その事実は重たいです。
イギリス国民の70％以上が反対しようが、ブッシュの愛犬と笑われていたブレア首相を
誰も止めることは出来なかったのです。

しかし国家に背くと言うことは勇気ある行動。
多くを失う覚悟が要ります。
信念に従ったキャサリン・ガンの勇気に拍手を送ります。

　イギリス、チェルトナムにある英国諜報機関の政府通信本部（GCHQ）に勤める女性が、イラク戦争へと突き進むアメリカ政府による英国政府への不正行為を依頼するメールに義憤を抱き、公務機密（オフィシャル・シークレット）法違反になるのを承知しながらその情報をリーク、国際政治を揺るがす大問題となった実際の事件を、いい意味でも悪い意味でも、とても丁寧に描いている。

　軽い気持ちで国家機密をリークした女性が裁判に至るまでの経緯、イギリス移民であるクルド系トルコ人の夫との夫婦関係、彼女のリークを記事にしたオブザーバー紙の記者たちの奮闘、彼女の弁護を担当することになった人権派弁護士たちの懸命の弁護活動等が、並列的に描かれているので、何を強調したいのかがやや曖昧で、メリハリに欠ける点がドラマとしては残念だ。ラストシーンを見ると、ひとりひとりの国民を単なる政府の駒としか考えていない公権力の横暴が一番のテーマだったのかな、とは思う。不確かな根拠と愚かな思い込みでイラク戦争を引き起こし、多数の生命をいわれなく犠牲にしたのだから。しかも、それを恥じることも反省することもなく、その不法を告発したひとりの女性を、１年もの間、単なる見せしめのため、苦しめたのだから。

　リークした女性キャサリン・ガンは真面目に働き、スパイ行為をするつもりもなければ、反戦運動のような政治活動をするわけでもなく、多くの命が失われる戦争に反対し、不正や嘘には憤る、ごく普通の女性だ。自分の行為で戦争が止められるとも思っていない。深い考えもなく自分の感情だけで、国際政治にかかわる公務機密をリークしたことは軽率だったかもしれない。けれど彼女は自分に降りかかるその結果や責任を正面から受け止め、たとえどんな重大な事態になろうとも、たとえ相手が政府であっても、嘘や不正は許せないと堂々とはっきり主張する。彼女を理解し支えてくれる夫、彼女の正当性を認め支援してくれる記者や弁護士たちがいたことは幸いだった。さもなければ、彼女は有罪になり、彼女のささやかな個人的義憤は、強大な公権力によって抹殺されてしまったことだろう。

　キャサリンの、まだ市民権が取得できていない移民の夫を、嫌がらせのように突然逮捕し、強制送還しようとする政府の卑劣さ。正式に裁判になったら、政府の不都合な真実が白日の下になってしまうと、結局、証拠開示の必要な裁判から逃げて、裁判官を呆れさせてしまう検察。事件から１年も経って彼女を起訴した理由を友人の弁護士から問われた政府高官の、「彼女は見せしめに１年放置したんだ。すぐに不起訴にしたら何の脅しにもならないからね」という驕った台詞には、本当に反吐が出る。無力な一市民に過ぎない私たちは、このような政府の横暴や不正に、どう対抗すればいいのだろう。暗澹とした気分になる。

2003年、イラク戦争の開戦直前に起きた英米政府を揺るがせた世紀の告発事件の実話

英国の諜報機関GCHQで働く女性が米国の諜報機関NSAからイラク攻撃の米国の違法工作を知る

真実を告発する緊張感の展開に引き込まれる

サスペンスとしても完成度が高く素晴らしい

アメリカのジョージ・ブッシュ大統領にとって、サダム・フセインの国、イラクを叩くことは悲願だった。国連は待ったをかけていたけれど、イギリスのブレア首相や日本の小泉首相は支持した。この作品は、国連の中でイラク攻撃に賛成する国を増やすために、アメリカが汚い手を使っているという極秘情報を、イギリスの政府機関の一女性職員がメディアにリークしたという実話に基づく。彼女の大義は、「私は（嘘をつく）国のためではなく、国民のために働いている。脅しと嘘にもとづいた不法な戦争によって尊い人命が失われるのは許されない」であった。しごく真っ当。それにくらべて、強引に戦争をはじめてしまったブッシュ大統領の「イラクは大量破壊兵器を有する、テロ支援国家」という大義は嘘だったではないか。とはいえ、彼女がヒロイン扱いされて、個人的な正義感から国家機密をリークする職員が増えたら、国は困るよね。

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イラク戦争開戦を阻止しようとした女性の実話。

政府に一矢報いたラストが良かった。
彼女は政府に勝てず 開戦を阻止できなかったけれど、
負けもしなかったのだ。