ジョン・デロリアン

　この映画を、自らデロリアンと命名した夢の車の設計者ジョン・デロリアンの半生を描いていると言うのはおそらく正確ではないだろう。なぜなら、彼が麻薬法違反でFBIに逮捕され、その後の裁判の模様、しかも原告側の証人ジム・ホフマンに被告側の弁護士が事実関係を確認していく過程が、プロットの中心になっているからだ。

　ジョン・デロリアンを描きつつ、この映画で彼は、アメリカンドリームのアイコンとなっている。巨額の資金を集め、抱き続けてきた夢を実現する。高級住宅街のプール付きの豪華な邸宅、華やかなパーティ、完璧な成功は目前だ。デロリアンは言う、「スポットライトの近くが最も暗い闇だ」と。そして資金繰りに窮して、麻薬の密売という違法な資金調達に手を染めてしまう。アメリカンドリームに到達できなかった他の多くの人々のように、彼もまたその闇に落ちてしまったのだ。

　FBIに協力してデロリアンを陥れ、裁判で証人となるジム・ホフマンは、デロリアンの対極にいるような人物だ。飛行機で麻薬の運び屋をしているところをFBIに逮捕され、刑を逃れるためにFBIの情報屋となって偶然デロリアンの隣に住むようになり、彼と親しくなる。ふたりは、表と裏、光と影。やがてドッペルゲンガーのようにも思えてくる。ホフマンはデロリアンを破滅に導くが、裁判の証人になることで、そこにはまた裏がある。

　ジム・ホフマンがジョン・デロリアンの隣人となり、ふたりが知り合って、デロリアンが自動車業界の異端児として、夢の車のための自動車会社を創設し、やがて挫折するまでが、彼の裁判の進行状況と並行して描かれている。ホフマンとの関係を通して、デロリアンの人となりと、彼の夢と現実が浮き彫りになっている。

　

2018年(アメリカ)原題は「DRIVEN」

天才自動車設計エンジニアであり、バックトゥザフューチャーの空飛ぶ未来カーの元を作った男・・ジョン・デロリアン。

しかし主役はほとんど隣家の元パイロット(ジェイソン・サダイキス)なのだった。
ジョン・デロリアン(リー・ペイス)は、カリフォルニアのプール付き豪邸でパーティ三昧の日々を送っているだけ。
そして金策に明け暮れている。
その額が3000万ドルとか桁外れ。

デロリアンが設計エンジニアとして活躍したのはわずか3年ほどで、
詐欺に横領、脱税を行い、何とイギリス、アメリカ、スイスの政府からお金を巻き上げていたのだ。

しかしこの映画、そんなデロリアンの犯罪者の資質やヤバさにほとんど触れていない。
資金繰りのため、隣家の男(麻薬がらみの逮捕を猶予してもらうため、FBIの情報提供者なのだ、彼は)
その隣家の男に資金繰りを麻薬の大物ディーラーに、口利きしてくれと頼むのがデイロリアンで、その一点しか彼の犯罪シーンは出てこないのだ。
まぁ中途半端な作品です。

デロリアンカーを作ったカリスマ設計士の格好良さも感じられない。
犯罪者として稀代の詐欺師の側面も掘り下げていない。

デロリアンカーは、30台出てきますが、左右のドアが縦開きする程度と、ステンレススチール・ボディとガルヴィン・ドアだけでは実用性が足りずコストパフォーマンスも悪かった。

デロリアンカーは、バックトゥザフューチャーの中のように、空を飛ぶタイムマシーンだからこそ値打ちがあるのだ。

こんな地味な話なのに、製作陣や出演者のおかげか、最後まで楽しめる作品になるんですね。