遠い接近

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遠い接近 / 小林桂樹

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「遠い接近」 の解説・あらすじ・ストーリー

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解説・ストーリー

松本清張の同名の原作小説を斬新な脚本と演出で実写化したサスペンス。昭和17年。印刷色版画工・山尾の下に召集令状が届く。彼は前線に配属され、復員すると家族は広島に堕ちた原爆で亡くなっていた。その後、山尾は自分の召集のからくりを知り…。

「遠い接近」 の作品情報

作品情報

製作年: 1975年
製作国: 日本

「遠い接近」 のキャスト・出演者/監督・スタッフ

キャスト・スタッフ

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「良子、もうすぐそちらへ行く、もうすぐだ」

投稿日:2020/05/06 レビュアー:ちゅく

NHKの土曜ドラマシリーズ「遠い接近」(1975年、カラー、70分)。原作は松本清張の同名小説(1972)。
映像化はこの作品のみでしょう。初鑑賞です。脚本は大野靖子、演出は和田勉。音楽はあの眞鍋理一郎の曲。
和田勉が演出した清張TVドラマとしては最初期のもので、このあと「中央流沙」(1975★)、「棲息分布」(1977)、「最後の自画像」(1977)、「天城越え」(1978★)、「火の記憶」(1978)、「けものみち」(1982)、「波の塔」(1983★)と続きます。
★の3作のDVDレンタルを待望します。

戦争末期の東京。色版画工の職人仕事で一家を支えてきた「山尾信治」(小林桂樹)は、補充兵の教育召集を受ける。胸の旧疾患がある30代の彼は、検査で即日免除されると思っていたが、なぜか千葉・佐倉の陸軍聯隊に入隊させられる。
召集直後、地元の在郷軍人から「ハンドウを回されたな」と言われるが、その言葉の意味が分からなかった。
佐倉では、中隊の古参兵「安川」(荒井注)に目を付けられ、毎日、暴力を受ける。やがて、彼は本召集を受け、彼の属する中隊は外地に配属されることになった。

原作者の清張自身の経験に基づく作品。(以下、「松本清張記念館」HP中の「松本清張年譜」による)
==============================================
昭和8年 (1933) 24歳  福岡市の島井オフセット印刷所で、半年間版下工の修業。
昭和12年(1937) 28歳 朝日新聞九州支社の広告版下を手がける。(14年広告部嘱託、15年常勤嘱託)
昭和18年(1943) 34歳 正社員となる。10月から3ヶ月間、教育召集により入隊。
昭和19年(1944) 35歳 6月、臨時召集により再度入隊。
昭和20年(1945) 36歳 敗戦を朝鮮全羅北道井邑で迎え、10月復員。
===============================================

「版下工」という仕事は、デジタルの時代に滅びたのだが、印刷物の整版前の実物「版下」に非常に細かい修正を施したり、「点と線」を描く仕事である。
昔、出版社にいたころ、この真似事をさせてもらったことがあるが、とても繊細で集中力を必要とする仕事だ。
描線は通常「0.1ミリ」のロトリングペンで行うのだが、目が良くなければいけないし、病気や中毒で手が震えてもいけないのである。
「息を止めて素早くやるんや」と職人さんは言った。その人は1ミリの間に20本線を引けた。0.05ミリの線である。瓶の底のような分厚い眼鏡をかけていた。
この映画の「色絵画工」はそんな細かい世界ではなく、染め物を下絵を描く職人だが、腕一本で仕事を支え、無理な仕事をこなして信用を得るため、町内の軍事教練に出ていなかった。


「信治」の外地転属が決まると、父「英太郎」(笠智衆)と母、妻「良子」(吉行和子)と三人の子は、東京を離れ、縁戚に頼ることにした。

彼は、朝鮮に転属し、衛生兵として軍医の補佐を務めた。この間、彼は知人の兵隊に会い、「ハンドウを回す」とは、町内の軍事教練に積極的に出席していなかった者が「懲らしめ」のために召集されることと知った。
逆に、金持ち、有力者などの本人とその子弟は召集を免除されていたのだ、ということも知った。それを差配していたのは、各区役所の兵事課長であることも。「嫌がらせ、見せしめ」のために「非国民」「反動分子」と決めつけられた者も、意図的に徴収されたということも。
「安川」は「偽リューマチ」で除隊になっていた。「信治」は終戦になり帰国したが、家族六人は全員亡くなっていた。骨も拾えない状況で。
自分が「埋め合わせ」のために召集されていなければ、こんなことはなかった。

「遠い接近」が始まる。仮病で除隊後、軍物資を横取りして闇屋の小ボスになっていた「安川」と「出会う」。
闇市の煙草売りの役で、清張が出演している。眼光が鋭い。やがて区役所の兵事課長(下元勉)に接近する。

完全犯罪を狙った殺人が用意周到すぎ、犯人自らの墓穴を掘ることがある。
最後の「山尾信治」(小林桂樹)と、刑事(中条静夫)の対決場面は息づまるが、意外なほどあっけなく「一証拠」によって砕ける。
彼は言う。「良子、もうすぐそちらへ行く、もうすぐだ」。この断ち切り方は凄い。

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「良子、もうすぐそちらへ行く、もうすぐだ」

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2020/05/06

レビュアー

ちゅく

NHKの土曜ドラマシリーズ「遠い接近」(1975年、カラー、70分)。原作は松本清張の同名小説(1972)。
映像化はこの作品のみでしょう。初鑑賞です。脚本は大野靖子、演出は和田勉。音楽はあの眞鍋理一郎の曲。
和田勉が演出した清張TVドラマとしては最初期のもので、このあと「中央流沙」(1975★)、「棲息分布」(1977)、「最後の自画像」(1977)、「天城越え」(1978★)、「火の記憶」(1978)、「けものみち」(1982)、「波の塔」(1983★)と続きます。
★の3作のDVDレンタルを待望します。

戦争末期の東京。色版画工の職人仕事で一家を支えてきた「山尾信治」(小林桂樹)は、補充兵の教育召集を受ける。胸の旧疾患がある30代の彼は、検査で即日免除されると思っていたが、なぜか千葉・佐倉の陸軍聯隊に入隊させられる。
召集直後、地元の在郷軍人から「ハンドウを回されたな」と言われるが、その言葉の意味が分からなかった。
佐倉では、中隊の古参兵「安川」(荒井注)に目を付けられ、毎日、暴力を受ける。やがて、彼は本召集を受け、彼の属する中隊は外地に配属されることになった。

原作者の清張自身の経験に基づく作品。(以下、「松本清張記念館」HP中の「松本清張年譜」による)
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昭和8年 (1933) 24歳  福岡市の島井オフセット印刷所で、半年間版下工の修業。
昭和12年(1937) 28歳 朝日新聞九州支社の広告版下を手がける。(14年広告部嘱託、15年常勤嘱託)
昭和18年(1943) 34歳 正社員となる。10月から3ヶ月間、教育召集により入隊。
昭和19年(1944) 35歳 6月、臨時召集により再度入隊。
昭和20年(1945) 36歳 敗戦を朝鮮全羅北道井邑で迎え、10月復員。
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「版下工」という仕事は、デジタルの時代に滅びたのだが、印刷物の整版前の実物「版下」に非常に細かい修正を施したり、「点と線」を描く仕事である。
昔、出版社にいたころ、この真似事をさせてもらったことがあるが、とても繊細で集中力を必要とする仕事だ。
描線は通常「0.1ミリ」のロトリングペンで行うのだが、目が良くなければいけないし、病気や中毒で手が震えてもいけないのである。
「息を止めて素早くやるんや」と職人さんは言った。その人は1ミリの間に20本線を引けた。0.05ミリの線である。瓶の底のような分厚い眼鏡をかけていた。
この映画の「色絵画工」はそんな細かい世界ではなく、染め物を下絵を描く職人だが、腕一本で仕事を支え、無理な仕事をこなして信用を得るため、町内の軍事教練に出ていなかった。


「信治」の外地転属が決まると、父「英太郎」(笠智衆)と母、妻「良子」(吉行和子)と三人の子は、東京を離れ、縁戚に頼ることにした。

彼は、朝鮮に転属し、衛生兵として軍医の補佐を務めた。この間、彼は知人の兵隊に会い、「ハンドウを回す」とは、町内の軍事教練に積極的に出席していなかった者が「懲らしめ」のために召集されることと知った。
逆に、金持ち、有力者などの本人とその子弟は召集を免除されていたのだ、ということも知った。それを差配していたのは、各区役所の兵事課長であることも。「嫌がらせ、見せしめ」のために「非国民」「反動分子」と決めつけられた者も、意図的に徴収されたということも。
「安川」は「偽リューマチ」で除隊になっていた。「信治」は終戦になり帰国したが、家族六人は全員亡くなっていた。骨も拾えない状況で。
自分が「埋め合わせ」のために召集されていなければ、こんなことはなかった。

「遠い接近」が始まる。仮病で除隊後、軍物資を横取りして闇屋の小ボスになっていた「安川」と「出会う」。
闇市の煙草売りの役で、清張が出演している。眼光が鋭い。やがて区役所の兵事課長(下元勉)に接近する。

完全犯罪を狙った殺人が用意周到すぎ、犯人自らの墓穴を掘ることがある。
最後の「山尾信治」(小林桂樹)と、刑事(中条静夫)の対決場面は息づまるが、意外なほどあっけなく「一証拠」によって砕ける。
彼は言う。「良子、もうすぐそちらへ行く、もうすぐだ」。この断ち切り方は凄い。

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