寒い国から帰ったスパイ / リチャード・バートン
寒い国から帰ったスパイ
/マーティン・リット
平均評価点:
予告編を検索
全体の平均評価点: (5点満点)
(6)
解説・ストーリー
ジョン・ル・カレ原作の『寒い国から帰ってきたスパイ』を映画化。イギリス情報部のリーマスが密命を帯びて東ドイツに潜入した。彼への指令は、東ドイツ諜報機関の実力者、ムントを失脚させることだった。リーマスは、ムントに敵対するフィードラーに接触、ムントが二重スパイであると告発する。任務は上手くいき、ムントは査問機関にかけられることになったが……。重厚なタッチのスパイ・スリラー。 JAN:4589609948716
ジョン・ル・カレ原作の『寒い国から帰ってきたスパイ』を映画化。イギリス情報部のリーマスが密命を帯びて東ドイツに潜入した。彼への指令は、東ドイツ諜報機関の実力者、ムントを失脚させることだった。リーマスは、ムントに敵対するフィードラーに接触、ムントが二重スパイであると告発する。任務は上手くいき、ムントは査問機関にかけられることになったが……。重厚なタッチのスパイ・スリラー。 JAN:4589609948716
もっと見る▼
新規登録で
「定額レンタル4」月額1,026円(税込)を
14日間無料お試し!※
- ※本キャンペーンの無料お試しの対象者は、次の@ABのいずれかに該当する方に限ります。
- @「TSUTAYA DISCAS」の定額プラン(定額プランの種類は問いません。以下同じ)の利用開始時に「無料お試し」を利用したことがない方
- A2022年10月2日以前に「TSUTAYA DISCAS」の定額プランの利用を終了された方であって、2022年10月3日以降、「TSUTAYA DISCAS」の定額プランを利用していない方
- B上記@Aのほか、当社が不定期で実施する期間限定キャンペーンにおいて、キャンペーン開始時に、当社が定める参加条件を満たした方
- 無料お試し期間中(14日間)、新作はレンタル対象外です。(但し、上記Bの対象者に限り、新作もレンタル対象となる場合があります)
- 無料お試し期間終了後、登録プラン料金で自動更新となります。
「寒い国から帰ったスパイ」 の解説・あらすじ・ストーリー
解説・ストーリー
ジョン・ル・カレ原作の『寒い国から帰ってきたスパイ』を映画化。イギリス情報部のリーマスが密命を帯びて東ドイツに潜入した。彼への指令は、東ドイツ諜報機関の実力者、ムントを失脚させることだった。リーマスは、ムントに敵対するフィードラーに接触、ムントが二重スパイであると告発する。任務は上手くいき、ムントは査問機関にかけられることになったが……。重厚なタッチのスパイ・スリラー。 JAN:4589609948716
「寒い国から帰ったスパイ」 の作品情報
「寒い国から帰ったスパイ」 のキャスト・出演者/監督・スタッフ
【販売禁止】寒い国から帰ったスパイ(スペシャル・プライス)の詳細
収録時間: |
字幕: |
音声: |
112分 |
|
|
レイティング: |
記番: |
レンタル開始日: |
|
DLDP071 |
2019年11月06日
|
在庫枚数 |
1位登録者: |
2位登録者: |
6枚
|
1人
|
0人
|
【販売禁止】寒い国から帰ったスパイ(スペシャル・プライス)の詳細
収録時間: |
字幕: |
音声: |
112分 |
|
|
レイティング: |
記番: |
レンタル開始日: |
|
DLDP071 |
2019年11月06日
|
在庫枚数 |
1位登録者: |
2位登録者: |
6枚
|
1人
|
0人
|
TSUTAYAだから可能な圧倒的作品数!!
洋画・邦画
約35,500
タイトル以上
国内ドラマも一部含まれております
※2022年2月 現在のタイトル数
新規登録で
「定額レンタル4」月額1,026円(税込)を
14日間無料お試し!※
- ※本キャンペーンの無料お試しの対象者は、次の@ABのいずれかに該当する方に限ります。
- @「TSUTAYA DISCAS」の定額プラン(定額プランの種類は問いません。以下同じ)の利用開始時に「無料お試し」を利用したことがない方
- A2022年10月2日以前に「TSUTAYA DISCAS」の定額プランの利用を終了された方であって、2022年10月3日以降、「TSUTAYA DISCAS」の定額プランを利用していない方
- B上記@Aのほか、当社が不定期で実施する期間限定キャンペーンにおいて、キャンペーン開始時に、当社が定める参加条件を満たした方
- 無料お試し期間中(14日間)、新作はレンタル対象外です。(但し、上記Bの対象者に限り、新作もレンタル対象となる場合があります)
- 無料お試し期間終了後、登録プラン料金で自動更新となります。
ユーザーレビュー:6件
冷戦スパイ映画の傑作 待望のDVDレンタル
「寒い国から帰ったスパイ」(1965年、英国、白黒、112分)。
英国のスパイ小説作家ジョン・ル・カレ(1931生)の最初の成功した小説(1963刊)の映画化作品。
東西冷戦時代のベルリンを主な舞台にしています。
映画は、原作刊行の2年後に公開されていますから、当時いかにインパクトがあり、世界的にヒットした小説かということが分かります。
ベルリンの壁の崩壊(1989)を経て、ソ連邦の解体(1991)で、冷戦構造が終結し、世界に平和がやってきたと思ったは束の間の幻想で、現在の世界構造は複雑怪奇、市街地での無差別テロに怯える時代になっています。この「寒い〜」の原作・映画の描く世界は、今の世界に比べれば、単純明解、ベルリンの壁の両側で対峙する敵と味方の諜報戦なのです。西側(資本主義側、NATO、米英主導)、東側(共産主義体制、ワルシャワ条約機構、ソ連主導)の闘争は、現在に比べれば、敵がはっきりしているだけに、お互いに分かりやすく、相互管理しやすい。
西ベルリン常駐の英国情報部員「アレック・リーマス」(リチャード・バートン)は、管理ミスで壁の向こうの協力者「リーメック」を殺され、英国に召還される。彼は酒に溺れ、転落の人生を送り始める。が、それは偽装で、彼を、東に寝返った「二重スパイ」に偽装し、「向こう」側に潜入させ情報を探らせる「三重スパイ」作戦に起用されたのだった。「リーマス」は東ベルリンで、英国共産党の女性「ナンシー」(クレア・ブルーム)と再会し、しだいに恋愛関係を生じる。彼の使命は、東独の諜報機関の最高権力者「ムント」を失脚させることにあった。そのため、「ムント」と対立する「フィードラー」(オスカー・ウェルナー)に接近する。「ムント」の不正を追及する裁判が始まる。
最後のどんでん返しと、それに続くベルリンの壁の劇。これは、原作・この映画に共通する魅力。
映画の魅力は、このモノクロ(映像)の美しさでしょう。英国のカメラマンのオスワルド・モリス(1915〜2014)は、キューブリック「ロリータ」(1962)をモノクロで撮っていた。
リチャード・バートン(1925〜1984)は、58歳で亡くなった名優だが、この映画では、「偽装落魄」していく場面がとても良い。コートの襟を立てて、肩をすくめ、雨に濡れながら歩いていく「リーマス」の姿を、モリスのモククロ映像が繊細に撮り、ソル・カプランの管楽器・弦楽器の音楽が、寒風として吹く。そして、最後の場面で彼は壁の上に屹立する。
「寒い国」とは、どこだったか?
東西南北、どこも寒かったし、今も変わらない。
このレビューは気に入りましたか?
5人の会員が気に入ったと投稿しています
冷徹スパイも女に負ける
投稿日:2020/02/04
レビュアー:趣味は洋画
※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。
レビューを表示する
寒い国から帰ったスパイ(1965年・イギリス、モノクロ、112分)
冷酷で非情、過酷なスパイの世界をまざまざと見せつけてくれます。
英国のスパイ小説の大家、ジョン・ル・カレの小説を映画化、さすがに脇が締まっていて隙がなく、緊張感あふれる展開に、モノクロ映像が実に効果的です。
イギリス諜報部のベルリン駐在主任アレク・リーマス(リチャード・バートン)がロンドンに呼び戻された。その目的は、東ドイツの諜報機関の大物で、かつてのナチ党員ムント(ペイター・ヴァン・アイク)を消すための工作指示を受ける為であった。準備を整えベルリンに潜入したリーマスは、ムントの部下で彼の失脚を狙っているフィードラー(オスカー・ウェルナー)と接触する。フィードラーは、リーマスからムントが二重スパイであると聞かされるが、査問会では非難の矛先がフィードラーに向けられる。リーマスは、全てがムントと英国諜報部が結託して仕組んだ大芝居であることに気づく...。
まさに騙し合いです。
主人公のリーマンは、わざと英国諜報部をクビになり、酒浸りの生活を送ります。更に小さな図書館に勤め、そこで働く娘ナン・ペリー(クレア・ブルーム)と愛し合うようになります。下宿屋の主人とトラブルを起こし、傷害罪で投獄されます。様々な土台や工作を経たうえで、あらためてドイツに潜入するわけですが、果たして思惑どおりコトが運ぶのでしょうか。
ストーリーは二転三転、私は二度騙されました。(ある意味、心地よい騙され方です)
後半からラストにかけて、ドイツ最高評議会の査問会のシーンがあるのですが、ここは最大の見せ場です。まさか...と思った途端、‘あの人’ が証言台に立つことになります。
当事者の目線と供述、張り詰めた緊張感が漂います。
(このときばかりは画面にくぎ付けで、水割りの氷はすっかり溶けていました)
モノクロ画面が美しく、カメラの構図も工夫されています。
ビルに入る人を真上から捉えたり、飛行機のタラップが下りるのを機材の真下から撮ったり。
撮影はイギリスの名カメラマン、オズワルド・モリスで、本作を含め3年連続でイギリスのアカデミー賞・撮影賞を受賞しています。「赤い風車」、「白鯨」、「ナバロンの要塞」、「オリバー!」、「屋根の上のバイオリン弾き」、「探偵スルース」、「007/黄金銃を持つ男」などの傑作があります。
監督はアメリカのマーティン・リット。
「ハッド」、「暴行」、「太陽の中の対決」でポール・ニューマンを起用、「ノーマ・レイ」、「アイリスへの手紙」といった秀作もありました。
主人公リーマスと愛し合うナン・ペリーを演じたクレア・ブルーム。(出演時は34歳)
チャップリンに見いだされた彼女は、52年「ライムライト」で清楚なバレリーナを演じ、俄然注目されました。本作でもその面影が残っています。比較的近作では、2010年「英国王のスピーチ」で主人公ジョージ6世(役・コリン・ファース)の母親役を演じていました。
現在も88歳で御健在のようです。(2020年2月4日現在)
なんといってもリチャード・バートンの演技に注目です。
スパイとして命を受けるときの目は、瞬きひとつせず、じっと上司(管理官)を見つめています。
厳しい視線です。
ベルリンに潜入してからの行動も、計算しつくされているのですが、どこかに落ち度はないか、油断はないかと常に自己をみつめています。この冷静沈着な所作は彼の俳優としての得意技かもしれません。
まるで氷のような心臓を持った彼(一流のスパイ)も、最後はなぜか女に負けてしまいます。
このレビューは気に入りましたか?
4人の会員が気に入ったと投稿しています
合わせ鏡
投稿日:2022/11/16
レビュアー:さっちゃん
さて、ジョン・ル・カレだ。地味でリアルで、じわじわと怖くなってくるイアン・フレミングの対極に位置するエスピオナージュ。派手さはないが悪夢のような戦慄がある。
冒頭の東西ベルリンの境界線を越えて逃げようとする西側の協力者リーメックが正体がばれて東ドイツ兵から銃撃を受ける場面でも顔色ひとつ変えないアレックス・リーマス(リチャード・バートン)。それに被さるようにパンナムのボーイング707が着陸する映像。イギリス情報部に呼び戻されたリーマスは東ドイツの防諜担当者ムント(ペーター・ファン・アイク)を西側に取り込まれた二重スパイとして陥れる作戦のために、解雇されたことにして酒浸りの生活を過ごすようになる。
リーマスと上司との会話でも、自分たちの活動が敵である東側と大差ないものになっているという台詞が出てくるが、これは時代的にスターリンの神格化と粛清、それに対するアメリカのマッカーシズムを連想してしまう。政治的合わせ鏡とでも言おうか。それが現実の活動として出てきたのが諜報戦ということなのだろう。
リーマスの偽装はどこからどこまでが演技で、どこからが地なのかが分からない。雑貨屋の親父を殴ったのは、せっかく就いた図書館の仕事をクビになり、敵側の接近を容易にするためではないかと推測するのだが、素でやったようにも見える。まぁ、それぐらいでなければ敵を騙せないということなのだろう。
その中で唯一、図書館で知り合った司書ナン・ペリー(クレア・ブルーム)との恋愛だけがリーマスを慰める。言い方を変えれば権謀術数の世界の中で、彼女との関係だけが異質なのだ。
やがてリーマスに、失業者を支援する組織というふれこみで東側の諜報機関が接触してくる。最初はオランダに移動して、彼の経験を本にするということで尋問を受ける。本作(というかジョン・ル・カレの小説)がリアルな諜報戦を描いているのは、こういうところにも出ている気がする。とにかく会話が多いのだ。情報を手に入れるためには相手にも情報を与えざるを得ない。バンバン、銃を撃ち合って相手を排除すればいいというものではない。こういう書き方をすると『007』シリーズを馬鹿にしていると勘違いをする方もいるかもしれないが、ああいう能天気スパイものも大好きなので誤解のないよう。
何だか話があさっての方向に逸れたような気がする。話を戻して、オランダを経由して東ドイツへ入る(ほとんど拉致だが)と物語は不条理劇の様相を呈してくる。敵地での尋問と時には暴力がリーマスを襲う。ムントの右腕だがお互いに不仲なフィードラー(オスカー・ウェルナー)はリーマスの計画通りムントが二重スパイであるという疑惑を募らせる。さて、作戦はどのように転がっていくのか。というところで後はご自分の眼で確かめていただきたい。これこそ諜報戦の神髄なんだろう。
ラストの協力者の裏切りと見える行為は、多分、諜報戦の秘密を知り過ぎた素人を排除するためと推測するのだが、ここでリーマスの糸がぷつりと切れる。「自分の世界に帰るんだ。」と言われた、その世界に帰ることを拒否した男は人間として死んだのかもしれない。
ここまでシリアスに進めてきたところで何だが、私のレビューではお馴染みの“趣味の時間”と行きたい。まず、銃撃戦のない物語なので出てくる銃は東ドイツ兵の持つカービンとムントがリーマスを殴打するときに持っていた拳銃くらいだが、前者は当時、入手すら困難だったSKSカービンである。有名なカラシニコフと同じ弾薬を使うセミオートマティック、装弾数10発の固定弾倉の銃だ。制式化は1944年だが、フルオートによる制圧力のあるカラシニコフが1949年に制式化されると短い期間で二線級の銃となった。
ムントが持っていた拳銃は多分、トカレフだと思う。なにせ、鮮明に見える場面がなかったので推測だが。
あと、空港の場面ではパンナム(今は亡きという枕詞がつくが)のシンボルマークも眩しいボーイング707が着陸したと思うとヴィッカース・バイカウントからリーマスが降りてくる。英国製のターボプロップ旅客機で面白いのは機名が「フライング・ダッチマン」だったりする。他にもDC8もいたような気がする。
とまあ、なかなかに重くて暗い作品だが私もタイトルだけは知っていたくらいであるからリアル・スパイ映画としての見ごたえは十分にあった。陰謀に翻弄されるリチャード・バートンの演技が特に。
(ykk1976さんの映画会 第134回)
このレビューは気に入りましたか?
3人の会員が気に入ったと投稿しています
原題の「 The Cold 」の意味。
( ネタばれあり )
そんなに読んでも観てもいないから個人的印象( と言うか偏見 )だけれども、スパイもののエンタメと言えば、1970年代まではイギリスをモチーフにしたものが質量とも図抜けておもしろいと思います。
1980年代レーガン政権になって以降、アメリカが開き直って帝国主義の総本山であることを隠さなくなるので、エンタメでもお株を奪われてしまいますが、鉄のカーテンを挟んでの駆け引きから、アイルランド問題、アフリカの傭兵にいたるまで、1970年代までのイギリスは国際陰謀ものの題材に事欠くことはありませんでした。
エンタメ素材としての、歴史に根ざしたイギリスの階級社会、帝国主義、陰謀術数、ですね。
それにしてもリチャード・バートンは暗く重いキャラですね。
正直エリザベス・テーラーとのゴシップ報道のイメージもあって苦手な俳優でした。
ローレンス・オリヴィエ、ピーター・オトゥール、アンソニー・ホプキンス、マイケル・ケイン、リチャード・ハリスなどは重厚でシリアスな演技もする一方で、コミカルで軽妙な役もあるけれど、リチャード・バートンで『 イグアナの夜 』とかでも壊れてしまった男の役で狂気と重苦しさがあります。 闇を見た男の眼と言うか、内に濁りをたたえた眼ですね。
遺作は『 1984 』 。
オスカー・ウエルナーも青年期にナチス体制下のオーストリアを生き延びていて、『 華氏451 』『 さすらいの航海 』など、これも社会の闇をくぐって来た眼を感じます。
一方、クレア・ブルームと言えば、『 ライムライト 』ですし、『 まごころを君に 』( 「アルジャーノンに花束を 」)などと同様、本作でもイノセンス、男が生きる意味を表すキャラ。
で、リーマスを演じるバートンの眼の演技にそれが生かされていました。
本作の当時はロッド・スタイガーと結婚していて、『 英国王のスピーチ 』でも健在ぶりを示し、現在もご存命です。
バートンがシェークスピア役者として売り出した若手時代、彼の舞台「 ハムレット 」でオフィーリアを演じたのも彼女だったそうです。
ジョン・ル・カレのベストセラーになった原作もさることながら、脚本がすばらしいと思う。
脚色は『007 ゴールドフィンガー 』『 将軍たちの夜 』『 オリエント急行殺人事件 』(1974)などのポール・デーンと『 終身犯 』などのガイ。とローパー。
白黒のクールな映像の撮影は『 赤い風車 』『 ナバロンの要塞 』『 探偵 スルース 』などのオズワルド・モリス。
編集のアンソニー・ハーヴェイは『 ロリータ 』『 博士の異常な愛情 』を編集し、『 冬のライオン 』を監督した人。
音楽のソル・カプランは赤狩りで20世紀FOXから解雇されイギリスへ逃れて来ていました。義兄はヴァン・へフリン。息子は『 告発の行方 』を監督「 ER 」の中心ディレクターの一人のジョナサン・カプラン。
出演者の一人サム・ワナメイカーも赤狩りを逃れてこの時期イギリスで活動。 監督作に『 シンドバッド虎の目大冒険 』がある。
監督のマーティン・リットは『 長く暑い夜 』『 ハッド 』『 ノーマ・レイ 』などで知られるが、出発点はニューディール期のリベラルな時代の演劇運動への参加。
しかし1950年代には赤狩りで干され、のちにその赤狩りを題材にした『 ザ・フロント 』(ウディ・アレン主演)がある。
さて邦題の『 寒い国 』からはソ連( ロシア )あるいは冷戦期の東側( 共産圏 )を想いますし、原題『 The Spy Who Came in from the Cold 』の『 the Cold 』 でも連想してしまいますが、作中バートン演じるリーマスが言うようにそうではありません。
1965年当時だと、まだアメリカも日本もヒューマニズムもヒロイズムも根強くて、自分たちの国や社会そして自分自身への信頼が一般的だったと思いますが、本作の冷徹なトーンは価値観が揺れたその後の時代を先行していると思います。
マーティン・リットの演出も、そしてリーマスを演じるバートンの眼も、冷徹なリアリズムを越えてもなお強く訴えるものがありました。
それは過酷な時代を生きてきた表現者たちが、心から渇望するものではないでしょうか。
名画です。
( ykk1976さんの映画会 第134回のレビュー )
このレビューは気に入りましたか?
3人の会員が気に入ったと投稿しています
国境が意味がなくなる瞬間。
投稿日:2022/11/15
レビュアー:ぴよさん
いや、凄い映画だ。なにしろジョン・ル・カレの名篇である。自身がM15の職員であった経験から、
リアリティを持って冷戦下のスパイ像が描写されていた。 イアン・フレミングが「冒険スパイ的小説」
を著したのに比べ、ル・カレのそれは、派手さの無い地道なスパイたちの姿だった。諜報員リーマスに
ヒロイックな要素は微塵も無い。本人も「自分を偽ること」を続けるがあまり、自らのレゾンデートル
に混乱を生じているかのようだ。
メイン登場人物の設定としてムント(元ナチであるが〇〇)、フィードラー(東側であるがユダヤ人
でありムントと敵対)、ナンシー(西側なのに共産主義者)という立場の錯綜のせいで、複雑性が増し
ている。「二重スパイ」の存在が常に示唆されており、それが綿密に計算された作戦のどこに配置され
ているか、それらは巧く機能しているのかが、隠し続けられる。
映画ではその「騙し」を上手く映像化せねばならず、それは監督マーティー・リットの手によって、
見事に実現されている。終盤の展開は、原作を読んでいなければ「まさかそう来るか」と驚いてしまう
ことだろう。作品全体のトーンは寒々しく、ソリッド。特に物語の二幕目から、一気に堕落するリーマス
を演じるリチャード・バートンの説得力の高さときたら!
小説にあっては、それでも何かが進行しているという感じが拭えなかったのに、映画では本当に彼が
ただ堕ちてしまったかのように見える。ここが多感覚を使える映画表現の素晴らしいところだ。余計な
セリフを排した脚本の出来の良さ。ほぼ完璧とも見えるカメラの仕事。そして控えめながら神経を振る
わせて来る音楽。そして演者達の説得力に満ちた演技と、すべてに申し分ない。
諜報員であるリーマスが、「寒い国」から脱する為には…最後のあの行動をとるしか無かった。彼は
あの刹那、諜報員であることを止め、戻ってきたのだろう。人として生きるために。
その時、国境は意味を為さない。
( ykk1976’s movie club 134th )
このレビューは気に入りましたか?
2人の会員が気に入ったと投稿しています
ユーザーレビュー
冷戦スパイ映画の傑作 待望のDVDレンタル
投稿日
2019/11/04
レビュアー
ちゅく
「寒い国から帰ったスパイ」(1965年、英国、白黒、112分)。
英国のスパイ小説作家ジョン・ル・カレ(1931生)の最初の成功した小説(1963刊)の映画化作品。
東西冷戦時代のベルリンを主な舞台にしています。
映画は、原作刊行の2年後に公開されていますから、当時いかにインパクトがあり、世界的にヒットした小説かということが分かります。
ベルリンの壁の崩壊(1989)を経て、ソ連邦の解体(1991)で、冷戦構造が終結し、世界に平和がやってきたと思ったは束の間の幻想で、現在の世界構造は複雑怪奇、市街地での無差別テロに怯える時代になっています。この「寒い〜」の原作・映画の描く世界は、今の世界に比べれば、単純明解、ベルリンの壁の両側で対峙する敵と味方の諜報戦なのです。西側(資本主義側、NATO、米英主導)、東側(共産主義体制、ワルシャワ条約機構、ソ連主導)の闘争は、現在に比べれば、敵がはっきりしているだけに、お互いに分かりやすく、相互管理しやすい。
西ベルリン常駐の英国情報部員「アレック・リーマス」(リチャード・バートン)は、管理ミスで壁の向こうの協力者「リーメック」を殺され、英国に召還される。彼は酒に溺れ、転落の人生を送り始める。が、それは偽装で、彼を、東に寝返った「二重スパイ」に偽装し、「向こう」側に潜入させ情報を探らせる「三重スパイ」作戦に起用されたのだった。「リーマス」は東ベルリンで、英国共産党の女性「ナンシー」(クレア・ブルーム)と再会し、しだいに恋愛関係を生じる。彼の使命は、東独の諜報機関の最高権力者「ムント」を失脚させることにあった。そのため、「ムント」と対立する「フィードラー」(オスカー・ウェルナー)に接近する。「ムント」の不正を追及する裁判が始まる。
最後のどんでん返しと、それに続くベルリンの壁の劇。これは、原作・この映画に共通する魅力。
映画の魅力は、このモノクロ(映像)の美しさでしょう。英国のカメラマンのオスワルド・モリス(1915〜2014)は、キューブリック「ロリータ」(1962)をモノクロで撮っていた。
リチャード・バートン(1925〜1984)は、58歳で亡くなった名優だが、この映画では、「偽装落魄」していく場面がとても良い。コートの襟を立てて、肩をすくめ、雨に濡れながら歩いていく「リーマス」の姿を、モリスのモククロ映像が繊細に撮り、ソル・カプランの管楽器・弦楽器の音楽が、寒風として吹く。そして、最後の場面で彼は壁の上に屹立する。
「寒い国」とは、どこだったか?
東西南北、どこも寒かったし、今も変わらない。
冷徹スパイも女に負ける
投稿日
2020/02/04
レビュアー
趣味は洋画
※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。
レビューを表示する
寒い国から帰ったスパイ(1965年・イギリス、モノクロ、112分)
冷酷で非情、過酷なスパイの世界をまざまざと見せつけてくれます。
英国のスパイ小説の大家、ジョン・ル・カレの小説を映画化、さすがに脇が締まっていて隙がなく、緊張感あふれる展開に、モノクロ映像が実に効果的です。
イギリス諜報部のベルリン駐在主任アレク・リーマス(リチャード・バートン)がロンドンに呼び戻された。その目的は、東ドイツの諜報機関の大物で、かつてのナチ党員ムント(ペイター・ヴァン・アイク)を消すための工作指示を受ける為であった。準備を整えベルリンに潜入したリーマスは、ムントの部下で彼の失脚を狙っているフィードラー(オスカー・ウェルナー)と接触する。フィードラーは、リーマスからムントが二重スパイであると聞かされるが、査問会では非難の矛先がフィードラーに向けられる。リーマスは、全てがムントと英国諜報部が結託して仕組んだ大芝居であることに気づく...。
まさに騙し合いです。
主人公のリーマンは、わざと英国諜報部をクビになり、酒浸りの生活を送ります。更に小さな図書館に勤め、そこで働く娘ナン・ペリー(クレア・ブルーム)と愛し合うようになります。下宿屋の主人とトラブルを起こし、傷害罪で投獄されます。様々な土台や工作を経たうえで、あらためてドイツに潜入するわけですが、果たして思惑どおりコトが運ぶのでしょうか。
ストーリーは二転三転、私は二度騙されました。(ある意味、心地よい騙され方です)
後半からラストにかけて、ドイツ最高評議会の査問会のシーンがあるのですが、ここは最大の見せ場です。まさか...と思った途端、‘あの人’ が証言台に立つことになります。
当事者の目線と供述、張り詰めた緊張感が漂います。
(このときばかりは画面にくぎ付けで、水割りの氷はすっかり溶けていました)
モノクロ画面が美しく、カメラの構図も工夫されています。
ビルに入る人を真上から捉えたり、飛行機のタラップが下りるのを機材の真下から撮ったり。
撮影はイギリスの名カメラマン、オズワルド・モリスで、本作を含め3年連続でイギリスのアカデミー賞・撮影賞を受賞しています。「赤い風車」、「白鯨」、「ナバロンの要塞」、「オリバー!」、「屋根の上のバイオリン弾き」、「探偵スルース」、「007/黄金銃を持つ男」などの傑作があります。
監督はアメリカのマーティン・リット。
「ハッド」、「暴行」、「太陽の中の対決」でポール・ニューマンを起用、「ノーマ・レイ」、「アイリスへの手紙」といった秀作もありました。
主人公リーマスと愛し合うナン・ペリーを演じたクレア・ブルーム。(出演時は34歳)
チャップリンに見いだされた彼女は、52年「ライムライト」で清楚なバレリーナを演じ、俄然注目されました。本作でもその面影が残っています。比較的近作では、2010年「英国王のスピーチ」で主人公ジョージ6世(役・コリン・ファース)の母親役を演じていました。
現在も88歳で御健在のようです。(2020年2月4日現在)
なんといってもリチャード・バートンの演技に注目です。
スパイとして命を受けるときの目は、瞬きひとつせず、じっと上司(管理官)を見つめています。
厳しい視線です。
ベルリンに潜入してからの行動も、計算しつくされているのですが、どこかに落ち度はないか、油断はないかと常に自己をみつめています。この冷静沈着な所作は彼の俳優としての得意技かもしれません。
まるで氷のような心臓を持った彼(一流のスパイ)も、最後はなぜか女に負けてしまいます。
合わせ鏡
投稿日
2022/11/16
レビュアー
さっちゃん
さて、ジョン・ル・カレだ。地味でリアルで、じわじわと怖くなってくるイアン・フレミングの対極に位置するエスピオナージュ。派手さはないが悪夢のような戦慄がある。
冒頭の東西ベルリンの境界線を越えて逃げようとする西側の協力者リーメックが正体がばれて東ドイツ兵から銃撃を受ける場面でも顔色ひとつ変えないアレックス・リーマス(リチャード・バートン)。それに被さるようにパンナムのボーイング707が着陸する映像。イギリス情報部に呼び戻されたリーマスは東ドイツの防諜担当者ムント(ペーター・ファン・アイク)を西側に取り込まれた二重スパイとして陥れる作戦のために、解雇されたことにして酒浸りの生活を過ごすようになる。
リーマスと上司との会話でも、自分たちの活動が敵である東側と大差ないものになっているという台詞が出てくるが、これは時代的にスターリンの神格化と粛清、それに対するアメリカのマッカーシズムを連想してしまう。政治的合わせ鏡とでも言おうか。それが現実の活動として出てきたのが諜報戦ということなのだろう。
リーマスの偽装はどこからどこまでが演技で、どこからが地なのかが分からない。雑貨屋の親父を殴ったのは、せっかく就いた図書館の仕事をクビになり、敵側の接近を容易にするためではないかと推測するのだが、素でやったようにも見える。まぁ、それぐらいでなければ敵を騙せないということなのだろう。
その中で唯一、図書館で知り合った司書ナン・ペリー(クレア・ブルーム)との恋愛だけがリーマスを慰める。言い方を変えれば権謀術数の世界の中で、彼女との関係だけが異質なのだ。
やがてリーマスに、失業者を支援する組織というふれこみで東側の諜報機関が接触してくる。最初はオランダに移動して、彼の経験を本にするということで尋問を受ける。本作(というかジョン・ル・カレの小説)がリアルな諜報戦を描いているのは、こういうところにも出ている気がする。とにかく会話が多いのだ。情報を手に入れるためには相手にも情報を与えざるを得ない。バンバン、銃を撃ち合って相手を排除すればいいというものではない。こういう書き方をすると『007』シリーズを馬鹿にしていると勘違いをする方もいるかもしれないが、ああいう能天気スパイものも大好きなので誤解のないよう。
何だか話があさっての方向に逸れたような気がする。話を戻して、オランダを経由して東ドイツへ入る(ほとんど拉致だが)と物語は不条理劇の様相を呈してくる。敵地での尋問と時には暴力がリーマスを襲う。ムントの右腕だがお互いに不仲なフィードラー(オスカー・ウェルナー)はリーマスの計画通りムントが二重スパイであるという疑惑を募らせる。さて、作戦はどのように転がっていくのか。というところで後はご自分の眼で確かめていただきたい。これこそ諜報戦の神髄なんだろう。
ラストの協力者の裏切りと見える行為は、多分、諜報戦の秘密を知り過ぎた素人を排除するためと推測するのだが、ここでリーマスの糸がぷつりと切れる。「自分の世界に帰るんだ。」と言われた、その世界に帰ることを拒否した男は人間として死んだのかもしれない。
ここまでシリアスに進めてきたところで何だが、私のレビューではお馴染みの“趣味の時間”と行きたい。まず、銃撃戦のない物語なので出てくる銃は東ドイツ兵の持つカービンとムントがリーマスを殴打するときに持っていた拳銃くらいだが、前者は当時、入手すら困難だったSKSカービンである。有名なカラシニコフと同じ弾薬を使うセミオートマティック、装弾数10発の固定弾倉の銃だ。制式化は1944年だが、フルオートによる制圧力のあるカラシニコフが1949年に制式化されると短い期間で二線級の銃となった。
ムントが持っていた拳銃は多分、トカレフだと思う。なにせ、鮮明に見える場面がなかったので推測だが。
あと、空港の場面ではパンナム(今は亡きという枕詞がつくが)のシンボルマークも眩しいボーイング707が着陸したと思うとヴィッカース・バイカウントからリーマスが降りてくる。英国製のターボプロップ旅客機で面白いのは機名が「フライング・ダッチマン」だったりする。他にもDC8もいたような気がする。
とまあ、なかなかに重くて暗い作品だが私もタイトルだけは知っていたくらいであるからリアル・スパイ映画としての見ごたえは十分にあった。陰謀に翻弄されるリチャード・バートンの演技が特に。
(ykk1976さんの映画会 第134回)
原題の「 The Cold 」の意味。
投稿日
2022/11/15
レビュアー
ロキュータス
( ネタばれあり )
そんなに読んでも観てもいないから個人的印象( と言うか偏見 )だけれども、スパイもののエンタメと言えば、1970年代まではイギリスをモチーフにしたものが質量とも図抜けておもしろいと思います。
1980年代レーガン政権になって以降、アメリカが開き直って帝国主義の総本山であることを隠さなくなるので、エンタメでもお株を奪われてしまいますが、鉄のカーテンを挟んでの駆け引きから、アイルランド問題、アフリカの傭兵にいたるまで、1970年代までのイギリスは国際陰謀ものの題材に事欠くことはありませんでした。
エンタメ素材としての、歴史に根ざしたイギリスの階級社会、帝国主義、陰謀術数、ですね。
それにしてもリチャード・バートンは暗く重いキャラですね。
正直エリザベス・テーラーとのゴシップ報道のイメージもあって苦手な俳優でした。
ローレンス・オリヴィエ、ピーター・オトゥール、アンソニー・ホプキンス、マイケル・ケイン、リチャード・ハリスなどは重厚でシリアスな演技もする一方で、コミカルで軽妙な役もあるけれど、リチャード・バートンで『 イグアナの夜 』とかでも壊れてしまった男の役で狂気と重苦しさがあります。 闇を見た男の眼と言うか、内に濁りをたたえた眼ですね。
遺作は『 1984 』 。
オスカー・ウエルナーも青年期にナチス体制下のオーストリアを生き延びていて、『 華氏451 』『 さすらいの航海 』など、これも社会の闇をくぐって来た眼を感じます。
一方、クレア・ブルームと言えば、『 ライムライト 』ですし、『 まごころを君に 』( 「アルジャーノンに花束を 」)などと同様、本作でもイノセンス、男が生きる意味を表すキャラ。
で、リーマスを演じるバートンの眼の演技にそれが生かされていました。
本作の当時はロッド・スタイガーと結婚していて、『 英国王のスピーチ 』でも健在ぶりを示し、現在もご存命です。
バートンがシェークスピア役者として売り出した若手時代、彼の舞台「 ハムレット 」でオフィーリアを演じたのも彼女だったそうです。
ジョン・ル・カレのベストセラーになった原作もさることながら、脚本がすばらしいと思う。
脚色は『007 ゴールドフィンガー 』『 将軍たちの夜 』『 オリエント急行殺人事件 』(1974)などのポール・デーンと『 終身犯 』などのガイ。とローパー。
白黒のクールな映像の撮影は『 赤い風車 』『 ナバロンの要塞 』『 探偵 スルース 』などのオズワルド・モリス。
編集のアンソニー・ハーヴェイは『 ロリータ 』『 博士の異常な愛情 』を編集し、『 冬のライオン 』を監督した人。
音楽のソル・カプランは赤狩りで20世紀FOXから解雇されイギリスへ逃れて来ていました。義兄はヴァン・へフリン。息子は『 告発の行方 』を監督「 ER 」の中心ディレクターの一人のジョナサン・カプラン。
出演者の一人サム・ワナメイカーも赤狩りを逃れてこの時期イギリスで活動。 監督作に『 シンドバッド虎の目大冒険 』がある。
監督のマーティン・リットは『 長く暑い夜 』『 ハッド 』『 ノーマ・レイ 』などで知られるが、出発点はニューディール期のリベラルな時代の演劇運動への参加。
しかし1950年代には赤狩りで干され、のちにその赤狩りを題材にした『 ザ・フロント 』(ウディ・アレン主演)がある。
さて邦題の『 寒い国 』からはソ連( ロシア )あるいは冷戦期の東側( 共産圏 )を想いますし、原題『 The Spy Who Came in from the Cold 』の『 the Cold 』 でも連想してしまいますが、作中バートン演じるリーマスが言うようにそうではありません。
1965年当時だと、まだアメリカも日本もヒューマニズムもヒロイズムも根強くて、自分たちの国や社会そして自分自身への信頼が一般的だったと思いますが、本作の冷徹なトーンは価値観が揺れたその後の時代を先行していると思います。
マーティン・リットの演出も、そしてリーマスを演じるバートンの眼も、冷徹なリアリズムを越えてもなお強く訴えるものがありました。
それは過酷な時代を生きてきた表現者たちが、心から渇望するものではないでしょうか。
名画です。
( ykk1976さんの映画会 第134回のレビュー )
国境が意味がなくなる瞬間。
投稿日
2022/11/15
レビュアー
ぴよさん
いや、凄い映画だ。なにしろジョン・ル・カレの名篇である。自身がM15の職員であった経験から、
リアリティを持って冷戦下のスパイ像が描写されていた。 イアン・フレミングが「冒険スパイ的小説」
を著したのに比べ、ル・カレのそれは、派手さの無い地道なスパイたちの姿だった。諜報員リーマスに
ヒロイックな要素は微塵も無い。本人も「自分を偽ること」を続けるがあまり、自らのレゾンデートル
に混乱を生じているかのようだ。
メイン登場人物の設定としてムント(元ナチであるが〇〇)、フィードラー(東側であるがユダヤ人
でありムントと敵対)、ナンシー(西側なのに共産主義者)という立場の錯綜のせいで、複雑性が増し
ている。「二重スパイ」の存在が常に示唆されており、それが綿密に計算された作戦のどこに配置され
ているか、それらは巧く機能しているのかが、隠し続けられる。
映画ではその「騙し」を上手く映像化せねばならず、それは監督マーティー・リットの手によって、
見事に実現されている。終盤の展開は、原作を読んでいなければ「まさかそう来るか」と驚いてしまう
ことだろう。作品全体のトーンは寒々しく、ソリッド。特に物語の二幕目から、一気に堕落するリーマス
を演じるリチャード・バートンの説得力の高さときたら!
小説にあっては、それでも何かが進行しているという感じが拭えなかったのに、映画では本当に彼が
ただ堕ちてしまったかのように見える。ここが多感覚を使える映画表現の素晴らしいところだ。余計な
セリフを排した脚本の出来の良さ。ほぼ完璧とも見えるカメラの仕事。そして控えめながら神経を振る
わせて来る音楽。そして演者達の説得力に満ちた演技と、すべてに申し分ない。
諜報員であるリーマスが、「寒い国」から脱する為には…最後のあの行動をとるしか無かった。彼は
あの刹那、諜報員であることを止め、戻ってきたのだろう。人として生きるために。
その時、国境は意味を為さない。
( ykk1976’s movie club 134th )
新規登録で
「定額レンタル4」月額1,026円(税込)を
14日間無料お試し!※
- ※本キャンペーンの無料お試しの対象者は、次の@ABのいずれかに該当する方に限ります。
- @「TSUTAYA DISCAS」の定額プラン(定額プランの種類は問いません。以下同じ)の利用開始時に「無料お試し」を利用したことがない方
- A2022年10月2日以前に「TSUTAYA DISCAS」の定額プランの利用を終了された方であって、2022年10月3日以降、「TSUTAYA DISCAS」の定額プランを利用していない方
- B上記@Aのほか、当社が不定期で実施する期間限定キャンペーンにおいて、キャンペーン開始時に、当社が定める参加条件を満たした方
- 無料お試し期間中(14日間)、新作はレンタル対象外です。(但し、上記Bの対象者に限り、新作もレンタル対象となる場合があります)
- 無料お試し期間終了後、登録プラン料金で自動更新となります。
ご利用の流れ
@ 会員登録
申し込みフォームへ記入したら登録完了!
A 作品をレンタル
借りたい作品をリストアップするだけ!
発送可能な商品を自宅にお届けします。
B ポストに返却
商品をポストに投函すればOK!
各プランはこちら
-
- 宅配レンタル 定額8プラン

-
- 「新作・準新作」が定額で月8枚レンタルできる!※1借り放題付き※2
- 新規登録する
-
- 宅配レンタル 定額4プラン

-
- 新規登録する
-
- 都度課金 プラン

-
- 新規登録する
※1 無料お試し期間中の「新作」レンタルは対象外です。
※2 借り放題はDVD「旧作」、CD「新作・準新作・旧作」が対象です。
寒い国から帰ったスパイ