ジブリがいっぱいＳＰＥＣＩＡＬ　ショートショート　１９９２−２０１６

ジブリがつくったＣＭやジブリ美術館で上映されている短編映画などが入っている。で、それらのなかにまじって「ＯＮ　ＹＯＵＲ　ＭＡＲＫ」というチャゲ・アスの曲にアニメで映像をつけたものがある。コンサートのバックで上映するためにつくられたＰＶなのだが、宮崎アニメのターニングポイントとなった６分３６秒のショートフィルムである。

なんとも不思議な作品で、一度観ただけではストーリーもよくわからないのだが、何回も観たくなるし、ラストの美しい終わり方が心に深く残る。
岡田斗司夫の解説によれば、これは「風の谷のナウシカ」の前日譚で、火の七日間直後の日本のとある町の様子を描いているらしい。

火の七日間とは、巨神兵というバイオ兵器（巨人の形をしていてクチから強烈な破壊力をもった光線を吐く）が世界を燃やし尽くし、千年たっても消え去らない深刻な環境汚染を残した事件・・・と、「風の谷のナウシカ」では設定されている。が、実際には世界中の原発が同時多発的にメルトダウンを起こしたことによる放射能汚染の大災害で、それが巨神兵によってもたらされたものとして語り伝えられたのだ・・と、この短編映画では設定されている・・ように見受けられる。

人々は大きな穴の底に都市を建設して生き残っているが、地表は放射能汚染がひどく、普通の人間は無防備で地表に出ると数分で死んでしまう。主人公のチャゲとアスカはその汚染された地表に点在する原発施設を点検してまわるような仕事をしているらしく、重装備の黄色いトラックを運転している。が、映像には汚染は映らないので、あたりの景色はのんびりしており、生い茂る草木や青い空は平和そのもの。
が、曲が転調すると場面が未来都市の夜景になり、チャゲとアスカは警察の特殊部隊の隊員になっている。謎の宗教団体のビルの壁を破って突入すると、内部には「ふしぎの国のナディア」に登場したような三角形のズキンをかぶった信者たちが多数いて、マシンガンなどで応戦するが、突入部隊は手榴弾なども使い、信者たちを虐殺していく。この戦闘シーンは「エバンゲリオン」にも影響を与えたほど迫力がある。
曲が転調しておだやかな感じになると、多数の死体の山の奥に、鎖でつながれた可愛らしい少女が発見される。少女の背中には大きな翼がはえている。
翼の少女は医療班によって厳重に梱包され、放射能のマークのついたエアクラフトに乗せられて夜の闇に消えていく。
チャゲとアスカは仕事を終えて居酒屋で酒を飲むが、翼の少女のことが忘れられず、少女の救出を決意する。

「ＯＮ　ＹＯＵＲ　ＭＡＲＫ」とは「位置について」というトラック競技などのときの言葉であるが、この作品では、その言葉を「仕切り直し」という意味に解釈してある。で、ストーリーは１本のスジになっておらず、途中で何度も仕切り直しになって遡り、その度に別の展開となる。

宮崎駿は、この短編をつくった前年に「風の谷のナウシカ」の連載（アニメージュに掲載していた漫画）を完結させており、「もののけ姫」の制作にとりかかっていたのだが、もののけ姫を主人公にしたストーリーではコンテがきれない・・と悩んでいたらしい。要するに、スランプに陥っていたようだ。で、鈴木敏夫プロデューサーは宮崎駿に息抜きをさせようと思ってチャゲ・アスの依頼を受けたそうだ。
で、宮崎駿はこの作品により、過酷な人生を歩ませて不幸にさせたナウシカというキャラクターに対する罪悪感を晴らそうとし、ナウシカを投影した翼の少女のキャクターから「赦し」を受ける映像を組み込むことでスランプから脱出できたらしい。

ちなみに、「もののけ姫」は主人公をもののけ姫ではなく、アシタカという青年に置き換えてストーリーを完結させた。が、作品の奥にあるプロットの構造は「風の谷のナウシカ」と同じであり、宮崎駿のなかではリメイクに近い作品になっているようだ。主人公を少女ではなく青年にしたことで、宮崎の心が軽くなり、それでお話を進められるようになったのであろう。以後、宮崎は「風立ちぬ」まで少女が辛い人生を送るような作品をつくらなくなっている。

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敢えて、ね。
宮崎駿さんの事を今更語る必要ないから。
アスカの歌声がガンガン響いてくる歌と詩と画が完璧にシンクロして増幅され入ってくる

そして僕らは...それでも止めないのは...

同じセリフが繰り返され少しずつ違う言葉が加えられ、諦めるしかない世界から何かが飛び立つ。
明るい未来でも希望でもないが無駄でもない、その事を信じてるから。

そして僕らは...

詳しい事は宮崎駿さんがインタビューで答えられてますよ、検索したら出てきます
だから敢えて書かない