リーガルＶ〜元弁護士・小鳥遊翔子〜

　何となく釈然とせず、法廷ドラマのプロットにはなっているのに、この作品にどうして違和感を感じるんだろうと、ずっと考えていました。小鳥遊翔子と天馬壮一郎ふたりの法律家らしからぬ言動のせいだと最初は理由付けたのですが、それも少し違っていて、結局この作品の大枠が法廷を舞台にしたふたりのパワーゲームだからじゃないかと思うようになりました。それならふたりの言動にも納得できます。だから最終話が、弁護士資格がないにもかかわらず、小鳥遊と天馬との対決になっているわけです。

　内部の裏切りのおかけで小鳥遊が勝利した時点で、パワーゲームとしてのこのドラマは終わってしまいます。勝利した小鳥遊にとって、もはや弁護士資格の有無はどうでもいいことです。このシリーズがシーズン１だけで終ってしまうのも宜なるかな、です。もし続けるとすれば、次はまったく新しい宿敵を登場させるか、あるいは新たに代表となった海崎勇人との対決ということになるのでしょうが、どちらの場合も、シーズン１のようなインテンシティを持たせるのはなかなか大変じゃないでしょうか。予想外に小鳥遊が白鳥美奈子とタッグを組んで、ふたりで海崎をぎゃふんと言わせるような展開になったら面白いかもです。

　リーガルVというタイトルからして、ドクターXの弁護士版を意識したのだろうけれど、自由奔放なキャラにするために、主役の小鳥遊翔子（米倉涼子）は、ある事件ですでに弁護士資格を剥奪されているという設定。法的に問題になりかねない際どい面白さを狙ったのかもしれないが、粗雑でパワハラまがいの言動が、痛快というよりも不愉快になるレベル。自分でスカウトした若手弁護士をポチ呼ばわりするなんて、いやしくも良心的な法律家のすることでしょうか。登場人物は皆誇張されて描かれているので、もちろんそれを面白いと受け取ってもかまわないわけですが…。

　小鳥遊が設立し、管理人となっている「京極法律事務所」と敵対する、悪役の大手法律事務所の代表弁護士で、弁護士会会長でもある天馬壮一郎（小日向文世）のパワハラぶりも凄くて、秘書の仕事ぶりが気に入らないと、いきなり頭に赤ワインを流しかけたり、胸元に注いだり。演じているご本人が、苦情がくるのではないかと心配だったとインタビューで語っているほど。監督の方の演出だったそうです。また、ドラマとはいえ、裁判官が裁判中に明らかに天馬側に忖度するのもどうかと思います。

　１話完結の法廷ドラマとしては、各話の完成度にはバラつきがあるものの、不利な形勢を最後に逆転するというプロットは楽しめました。調査に行くのに、ほぼ毎回ユニークで個性的なローカル鉄道が登場するのも旅行気分になれて楽しいです。地方ロケが贅沢に多用されています。けれど、優秀な弁護士だったはずの小鳥遊の、あまりの自由奔放さや荒っぽい口調、大手事務所の酷いパワハラといったドラマの雰囲気が好きになれませんでした。最終話の最後に「このドラマはフィクションです。資格を持たずに弁護士業務を行うことは法律で禁止されています。」と表示されます。

米倉涼子主演の法廷もの。
水戸黄門的な安心できるストーリーだけどキャラクターが生きていて見ていて楽しい。
てっきりシリーズ化されるかと思っていたのに残念。
1話見ると2話目も見たくなる、面白いドラマ。