涙するまで、生きる

文豪アルベール・カミュの小説に基づく作品

1954年、フランスからの独立運動が高まるアルジェリア
の山岳地帯

元軍人の教師は、殺人容疑で裁判にかけられるアラブ人を町まで送る指令を受ける

復讐の襲撃、反乱軍の戦闘
2人で命の危機を生き抜く

"生きろ"と心に響く感動作

アルジェリアの沙漠の一軒家に住む教師「ダリュ」（ヴィゴ・モーテンセン）は、訪問してきていた友人と歓談中。「羊泥棒」のような男「モハメド」（レダ・カテブ）が紛れ込む。憲兵に突き出せ、反抗するなら殺せ、と友人は言って去る。「ダリュ」は元・軍人だが、「モハメド」を殺すことも、憲兵に突き出すことはできない。彼はいつも、亡くなった妻の写真を見ているのだった。二人は家を出て、放浪する。「モハメド」は羊泥棒どころか、重要な政治犯で、「ダリュ」は巻き込まれていくが、決して後悔しない。
二人は次第に親しくなっていくが、二人とも自分の過去を語らないし、相手の過去を探ろうともしない。ただ、現在の判断、三差路の、どの道を行くかで簡潔に議論するのみだ。「モハメド」は自分を救ってくれた「ダリュ」へお守りを渡す。八歳のとき、道で拾ったのだが、ずっと身につけてきた、大切なものだ、受け取ってほしいと言う。「ダリュ」は、そんな大切なものを受け取るわけにはいかない、と言う。
「涙するまで、生きる」（2014、フランス、カラー、101分）。
アルベール・カミュの（1913〜1960）の原作の短編「客」を叙情的に膨らませた映画だったが、決して悪くはない。それは、ヴィゴ・モーテンセンとレダ・カテブの好演が支えているからだ。「不条理」は、爬虫類的なものではない。

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恥を隠さずに言うと、アルジェリア内戦の事もカミュの原作も知らずに観ました。
一応下準備はしましたが。

思想・宗教・慣習・掟…様々な摩擦の要因があり、政府・軍・ゲリラ・原住民…様々な立場が複雑に絡み合う紛争。
様々な不条理に翻弄されながらも、自らを保ち、生命の営み、喜怒哀楽全て含めた生きている事の素晴らしさと、故に必死に生きる!という事を感じた作品でした。

荒々しい荒野を静かに歩むヴィゴ・モーテンセン。
そのコントラストが、汗臭い男臭い匂いと乾いた砂の味を嫌でも想像させます。

長身で銀色のショットガンを構えるヴィゴ・モーテンセンがカッコイイ…なんて言っていられません。
小学校での襲撃シーンや道中の銃撃シーンは、まるでリアルなマカロニ・ウエスタン。
乾いた銃砲の音の大きさが、静かな作品の中で際立って腹にドスンと響きます。

原作カミュの言葉が「〜生きろ」に対し、邦題は「〜生きる」。
自身に向けたこの言葉が、最後の行方に繋がっていると信じたいと思います。