ミモザの島に消えた母

30年前にこの島の海で若い女性が謎の死を遂げます。女性の息子であるアントワーヌが家族に母の死についてたずねると、誰もが頑なに口を閉ざし、母の死について語ろうとはしません。母の死の真相を突き止めるため、アントワーヌはミモザの島を訪れ、そこで自分が知らなかった母のもう一つの顔を知ることになります。

母の死は事故なのか、事件なのか？怪しげな空気も醸し出しながら物語が進みます。
母の死の謎を追ったとき明かされる真実。
家族内で話題に出すこともタブーとなっていた亡き母の死の真相を探すうちに、母の死にまつわる「偽りの家族史」が明らかになります。同時に母にとってかけがえのない一人の人物が浮かび上がって来ます。
最後に分かったのは哀しくも やるせない死。
母親の奇妙な死に様は、まさかの展開でした。

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　不惑にして情けなくも人生に惑い、もがき苦しむひとりの男性の、真実を求めようとする姿を通して、家名ある裕福な家庭でひた隠しにされていた卑劣な嘘と秘密が明らかとなり、身分違いの結婚をした、弱くも優しい女性の哀しい生と死が浮き彫りになる。

　ミモザの島と呼ばれる美しいノアールムーティエ島で母が亡くなって30年。長男で40歳のアントワーヌは、曖昧な記憶のなかで、溺死したと言われている母の死にどうしても何か納得できないものを感じ、そのことにこだわり続け、誰にも理解されず苛立っている。そのせいで結婚生活も上手くいかず、仕事も疎かになり、父親や妹や祖母とも対立して家庭で孤立し、精神不安定でセラピーを受けるという体たらく。

　母親の死の真相を究明しようとしても、家族の誰一人として、当時の使用人でさえも、亡くなった母親やその死について固く口を閉ざし、語ろうとはしない。再婚している父親、継母が私の母だとまで言う妹は、アントワーヌに、過去にこだわるよりも前を向くようにと勧める。けれど、疑問が解決しない限り、アントワーヌは自分自身の現実に向き合うことも前に進むこともできないのだ。

　それでも数少ない手掛かりを追求していくうちに、その当時の母親の状況が次第に分かってくる。豊かではない家庭出身の母親は、夫が仕事で忙しく留守がちの家で、体面を重んじる高慢で厳格な義母と不仲で苦しんでいたのだ。救いを求めるそんな母親の秘められた恋が義母の奸計によって破局に結びついてしまう。ゴア通路を彷徨う母の霊が、私の死の真実を明らかにしてと、海の底からアントワーヌに呼びかけ続けていたのかもしれない。

妻と離婚し家を出て行くことになったアントワーヌは、荷物を整理中に古い本を見つける。
表紙には亡き母の文字が綴られていた。
30年前、アントワーヌが10歳、妹のアガットが5歳の時に母クラリスは溺死した。
以来、家族の間で母について語られることはなかった。
父シャルルは再婚し、アガットは「私の母はアンヌ＝ソフィー（継母）よ」と言うが、
アントワーヌだけは「なぜ、母は溺死したのか」と疑問を抱くことをやめられない。
彼は母の死の真相を知るため、彼女が死んだノワールムーティエ島へ赴く…

母の死への疑念、母について語らない父と祖母への不満は、アントワーヌを情緒不安定な男にした。
彼はセラピーに通い「家族で話してください。それがセラピーの始まりです」と言われる。
長女に高圧的に命令し、危険運転の末に事故を起こしてアガットに重傷を負わせてしまうアントワーヌ。
自殺した父の遺体を発見した過去を持つ女性アンジェル、母の死の真実、家族との対話が彼を変えていく。
アントワーヌ（ロラン・ラフィット）が、長女マルゴを理解し慈しむ父となっていく物語でもあった。

話し合い、気持ちをぶつけることで家族は再生していくのだろう。
人は急にいなくなる（劇中の言葉）こともあるし、気になったら話し合うというのは大事だわー…
肝心の母の死は、下世話な感情が引き起こしたもので、ウヘッとなった。
彼女が気の毒でならない。

冬に咲くミモザの花が有名なノワールムーティエ島は「ミモザの島」と呼ばれるそうだ。
島と本土を結ぶ海の中道「パサージュ・デュ・ゴワ」が素敵。
潮の干満で現れたり消えたりする道は、人気の観光スポットだとか。
海が割れるのよ〜ｗ

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30年前の母親の溺死事故、その悲劇を乗り越えた家族の今の姿。
主人公が離婚している事を除いて、裕福で理想的な一族の人間関係に見えるが、
何か一部分が抜け落ちた現在の不自然さの上に成り立っている事に気付いて、
まるで、母親の霊に導かれたかの様に真相を探りだす主人公。
どちみち真相を知る事で、今の平穏が無くなる事は誰もが理解できるが、
妹はそれを察知して、真相を知る事に心を閉ざしてしまい、主人公と対立してしまう。
結論として、今まで愛してきた家族をも憎まなければならない事への、心の葛藤。
複雑な思いがあると思うが...。
後半に子供たちにも大人の話し合いの場にも参加させる主人公の思いが、
自分達が踏んできた二の轍を踏ませない主人公の決意を表していて、最終的に家族の絆を深める結果になる。
サスペンスとヒューマンドラマを上手くミックスしていて、どちらにも展開できそうな進行は秀逸だと思う。
何と言っても素晴らしいのは、ミモザの島と呼ばれるノワールムティエ島の景色の美しさ、
是非、いつか訪れてみたい場所です。

原題。まさにその題名通りのシナリオだった。
真実を隠し通そうとする行為は結局のところ言い訳がましいだけで大義がない。最後にはブーメランが戻ってきて切り裂かれるだけ。サスペンス調の寓話だった。
主人公が真っ直ぐな性格で好感持てたので、最後まで楽しめました。モルグの恋人もgood。