ウソはホントの恋のはじまり

　恋をすると誰でも、サムほど極端ではないにしても、大なり小なり相手に対して自分を演出してしまうものだ。けれど普通は、関係が深まるにつれて、ありのままの自分で相手に向き合えるようになる。

　サムの場合、恋に臆病すぎて、関係が壊れるのが怖くて、相手を好きになればなるほど、ますます相手好みのウソの自分を演じてしまう。もちろん、誠実な人間には、こんなことは長くは続けられない。そして、ここで逃げてしまえばそれまでだ。

　作家のサムは、こんな状況を文章に書くことで、その原稿が編集者（他者）に読まれることで、避け続けていた、臆病で情けない自分に出会い、やっと向き合えるようになる。

　ホントの恋は勇気を出してホントの自分に出会うことだ。

サム君、無理して「恋」なんか、しなくてイイよ！！
君は、家の自分の部屋で、ゲームやって、引きこもってる方が、
似合ってるよ！

バーディーは、君にとって「特別な女性」でなんかでは、ないよ。
サム君、君は、まだまだ小説家の夢を捨ててはイケナイ。
今はしがないノベライズの仕事だけど、もうひと頑張りしてみないか？
サム君の「バーディーの好み」への協調はイタイタしい。
「ウソはホントの恋のはじまり」って題名だから、
仕方がないけれど、この映画、観客を酔わせる努力が、
見事に足りない。
バーディーがホントに魅力がない。
洋服のセンスが酷過ぎる。
ワンピースに150デニールの黒のタイツ！！
ヘンテコなポンチョ。
エヴァン・レイチェル・ウッドってこんなに目が
しょぼしょぼしてたっけ？
現実生活の恋ヤツレかな？
2013年の映画が、3年も経って公開された。
TSUTAYAの在庫枚数1000枚って、なんかの、お付き合いなのかしら？

ポッシュさんのレビューにも書かれているように
ラブコメっていくつになってもほんとに止められないのです(笑)
結末はいつだってハッピーエンド、
私の影響で映画好きになった息子に言わせれば、
どれも同じような話、同じような展開（くっついたと思えば離れ、そしてまたくっつく）
でもって、ラストはお決まりのコース、そんなの見て何が楽しいの？と批判的なんですが、
お決まりコースだからこそ、安心して見ていられるというもの。
そして、そこに至るまでの、楽しい会話とか、センスある展開、
うっとりするほどのお洒落な恋は
決して現実ではほとんど起こらない(笑)ものだからこそ、
ハマっちゃうのがラブコメなんですよね。
この仮想世界がたまらず幸福感をもたらしてくれるのです。

ジャスティン・ロングって決してハンサムではないのに
何故かラブコメには重宝がられる存在ですよね。
今回のジャスティンは、不器用で堅物で真面目な小説家の男が恋をして
いかに彼女好みの男になるか、その努力と奮闘の物語。
で、途中でこんな自分はフェイクで本当の自分じゃない、
ウソの自分を好きだという彼女もウソくさい！とか勝手に悩んじゃって
もう！なんなのこいつ！うざいよ！アホちがう？ってイライラしました。
好きな人のために色々努力して合わせようとすることは全然ウソでもなんでもないですよ。
まあ、最後はそれに気づいてめでたしめでたしってことで微笑ましいラストでした。
彼女のダンスのお相手のお爺さんがちょっとお気の毒だったけど・・

それにしても、ジャスティンって全然変わらない！
万年青年だなぁ。

ラブコメってどれも同じなんだけど、いくつになっても止められない（笑）。

もう何万回も繰り返されてる「ボーイ・ミーツ・ガール」の話に
どう新味をプラスするかってところがポイントになるかと思いますが。
この作品の場合はＳＮＳで相手の情報を逐一ゲットして出会いからデートに至るまで
相手好みに仕上げちゃいますよ、ってところかな。
うーん、まぁこの程度では「新しい」とは言い難く「周回遅れ」感は否めないのだけど。
ジャスティン・ロングとエヴァン・レイチェル・ウッド主演っていうのも、やっぱり「周回遅れ」？

主人公のやってる事は一歩間違えばストーカーだけど、ジャスティン・ロングの優男ぶりはハマってて、
健気でかわいく見えた。
対するエヴァン・レイチェル・ウッドの個性派女子っぷりは、なんとなく既視感を覚えるキャラで、
この辺りも脚本の「周回遅れ」なセンスを感じてしまう・・・。
いやはや、随分とひねくれたイヂワル婆さんだね、自分も（汗）。


好きな相手の事を一つひとつ知っていくところが恋愛の入り口あたりの「楽しみ」だと思うのだけど、
今はネット上でプライベートを晒すのが当たり前なので、この辺はひとっ飛びなんですねー。

でも結局、惚れられた女子にしたら、自分好みにカスタマイズされてるからイイわねって事じゃなくて、
自分のために一所懸命に努力してくれる、その一途で真摯な姿に心を打たれるって事なんでしょうな。

ビンス・ボーン、サム・ロックウェル、ブレンダン・フレイザーなんて、
けっこうな有名どころが脇役（しかもかなり小さい役）でワサワサ出てくるのも
ちょっとだけ嬉しいサプライズ。（ちょっとだけぐらいの面々・・・なんて言ったら失礼だわね）
ブレンダンなんて気付かなかったし（汗）。

さて、さんざんディスってきて何なんですが、私はけっこう、この作品好きです。
ホントに。

結局、自分がラブコメに求めているものは、いつも通りの「楽しくて」「爽やかな」
ドラマなんだなぁと再認識。
以前、何かのレビューにも書きましたが、お年寄りの「時代劇」萌えと一緒。
定番で良いのです。それが気持ちいいのです。
ラストの展開なんて「よっ！待ってました！」ってなもん。
そっか、そもそもラブコメにトップランナーも周回遅れもないのか。
恋愛は人類の「ルーティーン」なんですかね。

人を好きになるとその人に好かれたいから相手に興味がなくても合わせたりする気持ちは分かります。
でもやりすぎると相手にひかれたり、自分自身が無理をしすぎて自滅してしまいます。
自分に自信がないと余計にそうなる可能性があると思います。
自分のためにあわしてくれたり、喜ばそうとしてくれるのはそれだけ思ってくれてるんだとなって嬉しい気持ちにもなるけど度を過ぎると誤解を招く恐れがあるなと思いました。

この年になると恋愛の初期のドキドキ感を味わうことがないので少しうらやましくも思いました。
バーディー役の女優さんきれいだなと思いました。