追憶の森

ガス・バン・サント監督が、自殺の名所として知られる日本の青木ヶ原樹海を舞台に、マシュー・マコノヒー＆渡辺謙共演で描いたミステリードラマ。

人生に絶望して自殺を決意したアーサー（マシュー・マコノヒー）は、富士山麓に広がる青木ヶ原樹海を訪れます。そして、樹海をさまよう日本人タクミ（渡辺謙）と出会い、妻ジョーン（ナオミ・ワッツ）と過ごした時間を振り返ります。アーサーは，絶望でも悲しみでもなく、罪の意識から樹海に足を踏み入れたのかもしれません。
理想の死に場所と言われるだけに、霊魂が彷徨っていて、樹海におけるタクミは、迷妄する自己内象の顕れなのかもしれません。

負傷した日本人を助けるうちにアーサーは妻との思い出を見つめ直し、生きる目的を取り戻していきます。死の間際に立つと不思議ですね。樹海での出会いが心を癒し解放へと優しく導いていく流れはスピリチュアルで良かったです。
死ぬために訪れた森で、生を見つける。ラストで広がる光景が良かったです。

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死ぬためにここに来たのに、
いざ死にそうになると必死で生きようとする。
これぞ、人間の感情なのでしょう。
アーサーもその一人。

妻に先立たれて人生に絶望したからか
若しくは、妻に『あなたは病院のベットで死ぬようなことはしないで。最後の場所は自分で選んで』と助言されたからか、自殺の名所”青木ヶ原”の樹海での死を決意する男アーサー。
森の中で謎の日本人ナカムラ・タクミに出会い、死の崖っぷちの恐怖を味わうことで
次第に生への執着を強くしていくのです。

ナカムラは何者だったのか？
本当に存在していたのか？
それとも幽霊だったのか？
最後まで結局謎の男のままで判りません。
もしかしたらアーサーの中にあったほんの少しの生きる力の魂が見せた幻だったのかもしれません。
ナカムラに救われた命。
究極の状態にあって、初めて命を失うことの恐怖を味わった彼の人生は再生されていくに違いありません。

たとえ愛する人を失ったとしても、失望することはありません。
その人は、いつもあなたの側にいますよ。

森の緑から、新鮮な空気をもらったようなラストが良かったです。

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印象に残ったことをネタバレのみです。

予告編を何回も見る機会があり、これってきっと
「主人公（マシューマコノヒー）が妻と死別して絶望し、自殺しようと青木ヶ原樹海に入ったけど
日本人（渡辺謙）が救ってくれた。でも日本人はこの世の人ではなかった」
って話でしょ？予想つくし、見なくてもいいかなと思っていた。
でも「意外なオチ」と言ってる人がいて、いったいどんなオチなの？と興味を持ち、見てみることに。

うーん、やっぱり日本人は実在していなかったという予想どおりの結末じゃないの…と思ってみてたら、その後にものすごいオチが！！
二人で樹海をさまよいながら話している時、主人公が「妻の好きな季節や色も知らないままだ」と言っていたが、実は日本人は会話の中で答えていたのだ…！彼の妻と娘の名前で…！！「キイロ、フユ」
後日、主人公が日本語がわかる学生から聞いて謎が解けた時大笑いしていたが、私も一緒に思いっきり笑った。キイロって名前の人いないもんね(^^ゞ
あと妻の好きな本…「ハンサムとグレーテル」、これにもワロタ！！

何か不思議なことが起こっても納得できそうな、神秘さ漂う樹海が舞台の
「世にもフシギな物語」だった。

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　富士の樹海で自殺をしようとした米国人男性が樹海で彷徨ってる日本人男性と出会って、アメリカ生活を回想していく話。

　過去の自分に後悔して、それに対して樹海で対話する。というスピリチュアルな世界観で不思議な作品でした。樹海で彷徨いながら過去を思い出してのその回想。という繰り返しでその区切りのたびに流れがぶつぎりになってしまっていると思いました。
　
　主人公と謎の日本人男性とのやりとりもそこまでメッセージ的なものは感じらなかったです。そのため、それでいて実はこうでした。みたいなどんでん返し的な流れも逆に冷めてしまう展開でした。

　結局、何でアメリカ人である主人公がわざわざ青木が原までやってくるのかがわからないので、そこが根本的な問題として終始あるためにいくら主人公が悩んだり煉獄の世界に足を踏み入れたりする流れも嘘っぽいというかリアリティが感じられないまま過ぎていく作品でした。サバイバルものとしても家族を失った男の再生物語としても中途半端に感じてしまいました。

　個人的に残念だったのは渡辺謙さんがちょっとしたサバイバル術を話した時に「ディスカバリーチャンネルのMAN vs. WILD」をそのまんま「人間VS自然」と訳されてるのが悲しかったです。【ベア・グリルスのサバイバルゲーム】と翻訳してほしかった映画でした。

　とはいえ、欧米人スタッフが日本の富士の樹海をスピリチュアルなものとして作ってしまえるのがくやしい作品でもありました。

面白かった。暗い話かと思ったが、そうでもなかった。死にたくなくても生きたくなくなる・・そんな人間の心情をテーマにして樹海でのサバイバル脱出劇に仕上げてあった。マシューの顔がげっそりしていて自殺を考えている人の雰囲気がよく出ていた。マシューの自殺願望を捨てさせるために表れた渡辺謙の深刻な顔が脱出劇の緊張感を盛り上げていた。ナオミ・ワッツも頭をまるめたりして奮闘しており、妻の存在感をきっちりだしていた。
ラストには生きることのシアワセを感じさせてくれる。
いい映画でした。