１９４４　独ソ・エストニア戦線

YouTubeで垣間見た事が切っ掛けでレンタルした。
近年の戦争映画は軍用車両が本物だったり、リアルにできているのでそこに期待しただけだったのだが思いの他、本作は重いテーマ性を持った重厚な映画だった。

エストニアの歴史について事前にリサーチしておけばこの映画をもっと理解できただろう。
予告編さえも見ていなくて、それを見たのは鑑賞終了後だった。

エストニアについて知っていた事と言えば以前はソ連邦に属するバルト３国の内の一つという事ぐらいだった。
鑑賞後の調べでは公用語はエストニア語で現在はEU加盟でありNATOに属する。
スカイプの発祥国との事だ。
古くから地理的な面で近隣諸国からの支配を受けている苦難の連続であったらしい。
第二次大戦時はナチスドイツと入れ替わりにソ連に占領されてそれぞれの立場で戦わざるを得なかった。

日本は大戦で多大な犠牲を払って敗戦したが、少なくても自国民としての確固たる立場と大義名分で戦いに挑んでいた。
明治以来欧米列強に抗うために富国強兵に励み日本人は大陸に打って出た。
そこに軋轢が生じて連合国の包囲網ができて交渉決裂。日本ではじり貧論が大勢を占め打開のために開戦した。
いいか悪いかは別として過ちではあっても、それが歴史であり当時の日本人には戦う意義があった。
翻ってエストニアの状況を見ると大国に翻弄された小国の悲哀をひしひしと感じる。
ナチスのファシズムかソ連の赤軍かの２者択一を国民が迫られ戦いに駆り出されたのだ。

戦場でソ連軍装備とドイツ軍装備の部隊に分かれて同胞同士で戦う状況が生まれる。
ドイツ軍装備のエストニア部隊が劣勢になったときに指揮官が撤退の号令を発した時、そのエストニア語を聞いたソ連軍装備のエストニア部隊の指揮官は攻撃中止の命令を下す。
同胞同士で殺し合いをしているという現実に、お互いが我に返るがごとく呆然と立ち尽くすシーンは非常に印象的だった。
同胞を至近距離で射殺した兵士の罪の意識が切ない。
遺体から手紙を抜き取り遺族の姉を訪ねるあたりも。

映画を見るときドイツ軍とはほとんどいつも悪者扱いで、兵士の人間味を表現した作品は非常に少ない。
その意味で前半部分でドイツ軍装備の兵士の側からみるヒューマンドラマは新鮮に思えた。
中身はエストニア人であるが彼らがドイツのヘルメットをかぶり軍装もドイツ軍装備でＭＰ４０やＭＧ４３マシンガンを撃っているのだ。
見た目では襟元の記章だけが違いを表しているようだった。
ヒトラーに対する敬意など持ち合わせていない事が描かれている。

後半になるとソ連軍装備のエストニア部隊の側からの話の展開になる。
敗走するドイツ軍から脱走した兵士が今度はソ連軍に加入したりしている。
こちらの兵士も赤軍に感化されてはいない。
ドイツ軍の軍服を着た少年兵の射殺命令を拒否するシーンが印象的だった。

この作品は大国に挟まれた小さな国の悲劇を描いた第二次大戦物の戦争映画の中にあって非常に斬新なものを感じ、今までにない切り口の作品だった。
あの時代に翻弄された同様の悲劇は他にもあったものだろうと想像する。

クリスチャン・ラブ製作総指揮：既知の作品でアニメ“ピノキオ”で声優として出演とあるが同一人物か不明
エルモ・ヌガネン監督作品： “バルト大攻防戦”その他、未見
エルモ・ニュカネン監督　　　　　々
俳優陣について既知の出演作無し。

1944 独ソ　エストニア戦線

エストニア共和国（この時代ドイツとソ連領土）

独ソ戦で両方の間に挟まれ、ソ連側のエストニア人とドイツ側のエストニア人敵味方に分断され、同胞同士で戦うこ事になってしまった史劇を伝える。

◎75点。
ソ連かドイツか？小さな国エストニア人かどちらかに淘汰され戦う意味を見出せない史劇を伝える映画。
★戦争とは？毎回無駄な殺し合いに思える酷い黒歴史です。今のロシアとウクライナの戦争もかなり近い話ではないでしょうか？


◇見所5！
�@ソ連軍が迫り徐々に追い込まれてくる恐怖！
★爆破や銃撃の迫力が凄い。
�A戦争色以上に仲間や人の内面を濃くした内容！
★伝えたい事が良くわかる。
�Bヒトラーをバカにするシーン！
★エストニア人が巻き込まれた事が強く解る！
�C忠誠を見せる為に同胞でも撃つ！
★厳しい軍の掟に考えさせられる。
�D敵も味方も同胞！何故殺し合うのか？問われる正義とは？
★ラストは考えさせられます。戦争ってなんだろうか？