坊っちゃん

―親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている―で始まる夏目漱石の『坊っちゃん』が原作です。
これまでにも映画化、ドラマ化、舞台など様々な俳優さんたちが坊っちゃんやマドンナ、赤シャツに扮して来ましたが、本作のキャストも案外ハマっていたように思います。
二宮君演じる坊っちゃんも「無鉄砲」というのが似合っているし、赤シャツの及川光博、山嵐の古田新太はナイスキャスティングでした。
私は、清役の宮本信子がとても良かったと思うのですが、どうでしょう。
数年前に道後温泉に行き、夏目漱石の部屋や温泉や二階の大広間なども実際に見てきました。
ドラマでは、当地で実際にロケしたのでしょうか。
知っている場所が映ると、観るにも関心が違います。
『坊っちゃん』を読んだのは、もう遠い昔のことですが、このドラマも漱石の文章のようにテンポよく進み、もう一度小説を読み返してみたくなりました。（ラストは違いますよね。）
まだ漱石を読んだことがない方に『坊っちゃん』は入門編としては読みやすく最適と思います。
試しにどんな物語か、ドラマで予習するのもお薦めです。（夏休みですし。）

嵐二宮君なのに！？
ファンの方々は、漱石と云う事で余り観なかったのかしら？
私は、「硫黄島の手紙（クリントイーストウッド監督）」で、役者二宮和也のファンになったんだけど。
今回の「坊ちゃん」も、期待を裏切らない面白さでした！
勿論、主役だけでは無く、全てのキャストが、「自分の仕事」をしてたと感じたからですが。
実は私は、原作は大昔に、教科書に載ってた部分の、更に殆ど覚えて無い人なのですが、最近「寅さん50周年」で、山田監督が、「昔は豪快？な人達が居て面白かった。今は大人しい人ばかりになった。」と云うような事をおっしゃってたようですが、本当に昔の、作家の方々始め、その中の人達は、不器用でも愛すべき、そして自分の意志も貫くが、組織や物事の全体の事も考えられ、自分を通す事の「程度」を理解して居た人達が居たからこそ、日本は早くから世界の高水準の生活や教育が実現出来てたように思う。
つまりは、「理想（自分の希望）は在れど、現実（状況や全体）を考慮出来る人」が私はやっぱり好きだと感じました。
現代は、衣食住満たされた、日本含め、所謂先進国の人達の中には、むやみに理想を掲げ、現実（何故今、そんな我儘が言える世界に生きて居られるのか）を考えられ無い人達の声が大き過ぎて、「つまらない（正義が一方的）」なあと、そして「怖い」と感じます。
山本さん演じる、気の弱い先生は、いつもの山本さんとはガラリと違って、「何でマドンナはこんな人が好きなの？」くらい情け無い感じが視線の芝居でも出てて、流石だなあと思いました。
現実はどうにもならないと分かって居ても、マドンナに告白してからの、山本さん演じる先生はやはりイケメンだった(笑)
そう云う、自分の正義（認識、我儘）は、自分の範囲内で実行、納得する事も、実は「全体（他人の権利）」の為には非常に必要な事なのに、それを理解出来無い幼稚な人間が増えてしまい、危惧を覚えて居ます。
物質的に豊かな社会に生きてる私達は、決してそうなる前に生きて居た人達より、賢いとは言えません。
ここに至るまでに、試行錯誤し、何とかして日本（人）を生き永らえさせて来た先人の言葉（作品）を、無駄にはしてはいけ無い、と思わされました。