しあわせへのまわり道

「死ぬまでにしたい10のこと」のイザベル・コイシェ監督のメガホンで、米ニューヨーカー誌に掲載された実話を映画化したハートフルドラマ。
これまで順風満帆な人生を送っていたニューヨークの売れっ子書評家ウェンディ（パトリシア・クラークソン）。しかし、ある日、長年連れ添った夫が浮気相手のもとへ去ってしまいます。夫がいなくなり、車が運転できない現実に直面して困ったウェンディは、インド人タクシー運転手のダルワーン（ベン・キングスレー）に運転を習うことに。

人生につまずいたウェンディが車の免許を必要に迫られて取る決意をしたことから始まる物語。
宗教も文化も異なるダルワーンのとの交流を通じて、視野の狭さと、予測の甘さを痛感したウェンディが自分を取り戻していくのが新鮮でした。
どん底に落ちたからこそ、気付いた事もある。
当たった先生が良かったですね。

たぶんドライブと道を掛けたのでしょうけど、
なんとなく安易で軽い感じの邦題です。
タイトルには何の魅力も感じませんね(笑)

平均評価点がそこそこ良い感じでしたので見てみました。
内容はすこぶる良かったです。
夫が愛人作って自分を捨てて出ていってしまい、精神的にも肉体的にもどん底のウェンディ。
仕事では成功しているのに、人生では負け犬のようになっていました。
それでも、50の手習いよろしく、自分を奮い立たせて、運転免許を取ろうと奮闘する主人公の姿に
同世代としては、すこぶる感銘を受けました。
そして、なんといってもベン・キングスレー演じるタクシー運転手の言葉がいちいち薀蓄があって
重みがあって、それでいて温かい。　
素敵な言葉の数々に、頷きながら見ていました。

『車に人生を持ち込むな！運転することに集中しなさい。命は一つなのだから』（みたいな・・）
『恐怖は人を慎重にさせる。恐怖心があることは良いこと』

ああ、本当ですね。
運転しながら、何かといろいろ考え事をしがちな今日この頃の私には、はっ！とさせる言葉でした。
もっとあれこれ良いことを言っていたのに、すでに忘れてしまいました^_^;

主人公もタクシードライバーも互いを良く思い、必要としながらも恋愛のような感じにはならないところも、大人でよかったです。
何かと、強い女性のイメージのするパトリシア・クラークソンですが、
ドライブを覚えていくにつれ、年齢相応の柔らかさと上品さが出てきてとても綺麗でした。
ウェンディの方も、ダルワーンに対して、『あなたは誠実な人。私の希望』と素敵な言葉を残していきます。
その言葉で、ダルワーンが自分の妻との関係を見直そうとするところも良かったです。

そしてベン・キングスレー、相変わらずハンサムで素敵ですね。
72歳ですって！とてもそうは見えませんね。

とても好きです。
インテリ書評家のウエンデイ(パトリシア・クラークソン)が、
嫌味じゃなく可愛い。
運転を教えるインド人タクシートライバーのダルワーン
(ベン・キングスレー)は人間的魅力に溢れてます。

運転を教える『言葉』は含蓄深く『人生訓』の様ですが、
ダルワーンはインドなら大学教授なのに、アメリカではしがない
タクシー運転手。
でも彼は誇りを失わないし、卑下もしない。
そして、現実を受け入れています。

中々、ウィットに溢れています。
会話が、キワドイし、笑えます。

ウェンディは、夫(浮気されて捨てられる)を見るより、
『本』と『パソコン画面』ばかり見ていた・・・と、
言われて始めて、自分勝手な人間だと気付きます。

ウェンディの住宅が素敵でした。
NYもウェンディの住むマンハッタンのアッパーウエスト・サイド
(高級住宅地らしい)とダルワーンの住むクィーンズ地区では、
何という違いでしょう！！
そういう人種による格差、貧富による格差なども、描かれていて
考えさせられるし、それでもダルワーンの優しさが素晴らしく、
暖かくて良い映画でした。

この映画を見てシーク族がゴールデンテンプルに立てこもりインド中央政府に反旗を翻した事件を思い出した。映画のタクシードライバーは政治的亡命者と言っていたがきっとこの事件の時に米国へ来たものだろう。そして９・１１の後にはターバンの形の違いも判らない人々に「ウサマ。自分の国に帰れ」などと見当違いにも罵倒されながらも必死で生きている。
一方白人の女性は書評家と言う知的職業につき経済的にも裕福な生活を送っていたが離婚により彼女の住んでいた世界は一変する。ましてや挫折に免疫のない彼女はタフに自立して前に進むこともできない。
彼女に強さと前向きに生きる事を教えたドライバーもまた逆に彼のインドから来た花嫁に接する態度などを学び変わっていく「誠実」さが面白い。

　　数年前に見たはずなのだが、また見たくなった。　　教習だけのはずが、人生の毎日の気持ちの持ち方とか、お互いの悩みを打ち明けて相談、助言を得て、そうなってくうちに自然と親密な関係になりそうなトコではあるがキッパリと、そこには立ち入らない。　　男女間の友情というものは本当にあるのだ。　　最後の誘いを断ったのは、あなたは尊敬する人、私の持ったイメージを壊さないで、か？