アガサ・クリスティーのミス・マープル

人を見て推理する......ミス・マープルの好きなところ。
その”見る目”は文章では想像しかできないけど、映像になると見ることができる。
ジョーン・ヒクソンはまさにミス・マープルでした。でも、自分が想像していたマープルの、
人を、疑わしい人を見る目、その人の周辺のもしかしたらな人を見る目とは違っていました。
ジェラルディン・マクイーワン演じるマープルを観た瞬間は、違和感凄まじかった。
でも、疑わしいかもしれない人を見た時の彼女の両眼のアップを見た時、『！！』。
想像していたミス・マープルの目。たちまち第一印象違和感は相殺。
彼女はすっかりミス・マープルとなりました。
で、その”見る目”が一番、活きていたのは『バートラム・ホテルにて』。映像化されたことで、原作のよさが増したように思います。
主人公と言われているバートラム・ホテルに彼女が入っていったとたん、
その目の中に彼女の過去とともに古き良きものを築き上げた時間の存在をも鑑賞することができました。
次いで、『ゼロ時間へ』『牧師館の殺人』。

そして、次々と観ていくうちに、彼女の装い、ファッションが楽しみになってきました。
普段着、訪問着、旅行着…小物も含め、よいのです。
年相応というよりマープル相応でナチュラルエレガント。素敵です。
もし、マープル年齢頃まで長生きできたら彼女の装いしてうろうろしたい。です。

ジュリア・マッケンジー演じるミス・マープルには印象も”見る目”もマープルを感じられませんでした。
（藤田弓子さんの吹き替えで見てしまうと容姿が彼女とぴたっと重なって、なおの事と思います）
けど、残念、ということはなく可もなく不可もなく、現代風リメイクな感じです。
それぞれのお話しは共演者と脚本のおかげで、知っていても初見のような面白さがありました。
登場する他キャストを楽しみつつ、同じ事件を違う脚本で（マープルで）再見したら面白いかもと思いました。
『ポケットにライ麦を』『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』が特に。


主演は第1巻〜第12巻　ジェラルディン・マクイーワン
第13巻〜第23巻　ジュリア・マッケンジー　です。

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マープルの周囲には魅力的な人物が一杯!
今回は一度に３人も登場です。

先ずお婆ちゃん友達のエルスペスが可愛い。
鬼瓦の風貌に立派な体格、娘の様な好奇心の持ち主です。
すもものお酒で二人で酒盛り！
若い友人ルーシー・アイルズバローの存在も面白いですね。
秘書？　メイド？　料理人？　ベビーシッター？　ついでにマープルのアシスタント?……で、スポーツ・カーを乗り回し歌も上手い美人！
そしてブラック・ハンプトン警察のトム警部。
仕事もデキるしタレ眼が可愛くてイイ人みたい……で最後にはルーシーとハッピーエンド？

舞台のクラッケンソープ家は、不機嫌な父親に水と油の如き仲の悪い兄弟姉妹（配偶者も含めて）の鬱陶しい環境。
事件の死体はその敷地内にあるに違いない……マープルの推理でルーシーが潜入捜査？！

夜中、霊廟に懐中電灯片手に入り込む恐れ知らずのルーシー。
トムからマープルにお土産のフィッシュ＆チップスが美味しそう。
トム警部「検死報告書観ます？」
マープル「まぁ素敵！」……その会話の楽しさ。

あ、最初に登場のブレーナ警部。
同シリーズの『書斎の死体』で、ダメ容疑者役で出てた俳優さんですね。
ここでの彼もユーモラスで貴重な存在です。

岸田今日子さん吹き替えのマープルがやっぱり最高！

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かつてＪ・ヒクソン演じるシリーズがありました。
悪くは無かったのですが、このＪ・マクイーワンのマープルは可愛くて、こちらの方が好きです。

今回組む（？）のはハーパー警視。
ひと目で「勝負にならない」ぼちぼちなタイプですが、リキんだ顔が妙に可愛い憎めないおじさんです。

事件は例によって複雑極まり無く、関係者も個性的な面々が勢揃い。
犯人もレズビアンという設定で、ちょっと刺激的な展開です。

最初にその死体を観た時……丸い顎とふっくらした手で……「子供だ！」と見抜いた私は名探偵やろか？

「アガサ・クリスティー ミス・マープル」（2013年、英国ITV、カラー）の「シーズン６」の「３」が「終わりなき夜に生れつく」（87分）です。ディスカスでは、「アガサ・クリスティーのミス・マープル Vol.23」にこの作品が入っています。国営BBCではなく、独立系ITVでした。訂正させていただきます。

戦後の英国TV映画の「ミス・マープル」シリーズでは、3人の女優が「マープル」を演じています。
●初代が、ジョーン・ヒクソン（1906〜1998）。BBC。マープルものの原作長編12作をドラマ化しています。3人の中ではもっとも老けた感じですが、「小さな細身の頭が冴えきったおばあちゃん」という印象。私感ではもっとも原作のイメージに近く、好きです。日本語吹替は、山岡久乃さん。
●二代目が、ジェラルディン・マキューアン（1932〜2015）。ITVの「シーズン1・2・3」。細身の正統派美人がそのまま美しく老いたという感じです。日本語吹替は、岸田今日子さん、草笛光子さん。
●三代目は、ジュリア・マッケンジー（1941生）。ITVの「シーズン4・5・6」。ぽっちゃり体型で四角い大きな顔だが、目が大きく「可愛い」印象です。日本語吹替は、藤田弓子さん。

ITVのTV映画では、BBCの「マープル」原作12編作に加え、「マープル」が登場しない原作に、このキャラクターを脚本で加えてドラマ化しています。「無実はさいなむ」「蒼ざめた馬」「ゼロ時間へ」「チムニーズ館の秘密」「殺人は容易だ」「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」などが、それに当たり、この「終わりなき夜に生れつく」もそうです。脚本が良く、違和感がないばかりか、原作の推理小説としての魅力、サスペンスの緊迫感、多く登場する「容疑者」の描き分けも巧みです。

ここでは、冒頭に、冬の氷が張った池で、スケートをしていた少年が割れた氷の下に落ちて溺れかける場面が配置されます。別の少年「マイケル」が彼に手を差し伸べます。溺れかけた少年の腕の時計という小物の伏線が最後まで生きてきます。「1948年　ベイジングストーク」という時系列が字幕で明確になります。これが、ギリアット監督の「エンドレスナイト」に欠けていたことだったのです。
次に、「マイク」と「エリー」の出会いが描かれます。「1956年　キングストン・ビショップ」。
原作長編のどこを生かし、どこを捨てるか、というのは、脚本家の腕です。場合によっては、原作の大骨格を生かしつつ、人物のキャラクターや犯人そのものを変更することも厭わない。
このITV版では、原作、ギリアット版には登場しない客観的な観察者「マープル」を配置することで、観客を推理の席にとどめておく効果を強めたように思います。

「エンドレスナイト」と、このTV映画、見比べをお勧めします。

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京極秋彦さんのレビューで、本作がマープル・シリーズで無い事を知りました。
原作は読んでおかないといけませんね。

物語はとても面白く、シリーズ中でも出色の出来だと思います。
特にマープルとタペンスのコンビが絶妙。
おっとり、ゆっくりの草笛光子さん吹き替えのマープルが、タペンスに触発されていつに無くスピーディーです。

舞台はいつもの様にのどかな田舎。
ちょっと違うのは米軍が駐留している事。
例の如く外国人への冷たい目線はありますが、ワガママ娘のハリウッド・デビューの狂騒も手伝って、いつもの排他的な空気は幾分和らいだ感はあります。
いかな大英帝国も欧州の後進国にはいけ高でも、巨大新興国・米国には及び腰（？）

事件は思わぬ真犯人の出現で、ちょっとビックリの展開。
「素朴な田舎」の筈が、住人達の相関関係も陰湿です。

でも、お婆ちゃん達が元気で個性的。
甥びいきで姑根性丸出しのエイダ叔母さんも。
好奇心旺盛で可愛いマージョリーお婆ちゃんも。
元気なアル中タペンスも。（この際彼女もトシヨリの仲間に入って貰いましょう。）
勿論、我らがマープルも。
そしてランカスター夫人。
この歳で注射器振りかざして殺人未遂はもの凄い。
洋の東西関わらず、歳をとっても女は強いっ!


「トミー＆タペンス」シリーズも読んでみたくなりました。