スモールアイランド

　女性には制約の多い時代に自分の夢をかなえようともがく2人の女性、そんな彼女たちを誠実に愛し結婚する2人の男性、そして愛するどんな女性とも永続的関係にはならず身軽で自由に自分の道を選択していく男性。イギリスと英領ジャマイカとを舞台に、５人は不思議な縁で結ばれていく。

　第二次世界大戦後まもない1948年のロンドン、人種偏見を持たず人目を気にしないブライ夫人（クイ―二―）は、周囲から白眼視されながら、ジャマイカ出身の黒人を自宅の２階に間借りさせている。住人のギルバートは新婚の妻ホーテンスを故郷ジャマイカから呼び寄せたところ。従軍したクイ―二―の夫バーナードは戦地から帰国しているはずなのにいまだ行方不明。生死も定かではない夫の不在中、黒人の空軍士官マイケルと恋に落ちたクイ―二―は妊娠している。

　上巻では、ここから９年前に遡り、イギリスとジャマイカでの５人のそれまでの人生と互いの出会い、そして過酷な戦争をくぐり抜け、不思議な縁でロンドンで再会するに至るまでが描かれる。下巻は1948年時点のロンドンに戻り、２組の夫婦が、様々な葛藤を抱えながらも、夫婦としての絆を築いていくまでを描く。

　同時にイギリス本国とジャマイカとの隷属的な関係、同じイギリス人でありながら、白人社会の黒人に対する許し難い蔑視と差別の実態も浮き彫りにされる。ギルバートとホーテンスは不当で理不尽な扱いを受けながらも、誇りを持って前向きに人生を切り開いていく。意地悪で気取っていて利己的にも思えたホーテンスだが、クイ―二―の苦しみを一番理解していたのは彼女であり、一番覚悟ができており、最後に善い人だと分かって、終り方はとても爽やかだ。

　黒人と白人の混血として生まれてきたマイケルは、新しい時代の希望であり、イギリス（母であり白人）とジャマイカ（子であり黒人）の親和の象徴なのではないかという気がする。

イギリスＢＢＣ制作の正当派ヒューマンドラマです。
舞台は１９３９年〜１９４８年。第二次世界大戦を挟んだ激動の時代です。
そこに生きる２人の女性にスポットを当てた今作品。
戦争に振り回された彼女達の苦悩が描かれています。
それと同時に、戦争を生き抜くたくましさ。これもまた見物です。
白人女性クイーニーは、戦前、安定した人生を約束してくれる相手との結婚を選びます。そこに【愛】はありません。
黒人女性ホーテンスは、戦後のイギリスに渡る為に政略結婚をするのです。ここにも【愛】はありません。
２人が愛した男性は身持ちが悪い上に戦争によって引き離され、愛のない男性は誠実に彼女達を守り慈しむのです。
このギャップが物悲しくもあり、心温まるものでもあるのです。
とても丁寧に描かれたそれぞれの感情が心に響きます。
そして、心ならずも２人の女性に影響を与えたマイケル。
ラスト、赤ちゃんを巡る下りは、視聴者だけが知る事実によって感慨深い作りとなっています。
最後は、愛と信頼に包まれたふたつの家族。
とても見応えのある作品でした。
大人向けの質の高い作品に仕上がっています。

戦争が終わり、世間の見方は一変します。
イギリスの植民地であったジャマイカは、【母なる国イギリス】を守る為にこぞって戦争に赴き、戦い、死んでいきました。
ところが、いざ戦争が終わってみると、白人達は黒人を差別し、嘲り、蔑むのです。
戦時中は、兵士として大歓迎しておきながら、平時には一緒の空間で生きる事を拒否する白人。
そんな中で、必死で生きているギルバート。夢を抱いてイギリスに渡ったホーテンスもまた、現実を知る事となるのです。
ギルバートの言葉で
【ジャマイカは、母なる国をよく知っているのに、母なる国は“我が子”を知らない】
という言葉が心に刺さりました。

この物語はどこに向かうのだろう？と思わせるスタート。
【現代】となるのは１９４８年。
時代は第二次世界大戦を挟んだ激動の時。
その時代を生きた２人の女性の半生にスポットを当てた作品です。
ジャマイカから戦後のロンドンへと渡ってきた黒人女性ホーテンス。英国生まれ英国育ちの白人女性クイーニー。
上巻は、時代はさかのぼり１９３９年から現代に向けて描かれていきます。
それぞれに夢を持った２人の女性。２０代という人生の中で大事な時期を戦争によって狂わされた様が描かれるのです。
戦争に赴く【男性】と同じくらい、帰りを待つ【女性】にも戦争というのは暗い影を落としたのが見て取れます。
登場する男性陣もまた十人十色。
身持ちが悪く親に軍隊に放り込まれたマイケル。
夢を叶える為に自ら軍に志願したギルバート。
自分を変える為に戦場に赴くバーナード。
男性陣は、それぞれ、形は違えども戦争によって何かを得た。
では女性は何を得たのだろう？
色々と考えさせられます。