ＴＨＥ　ＢＲＩＤＧＥ／ブリッジ

vol5
犯人の素顔
橋の上の対決

大きな、奇怪な事件だったけど、きっかけは、もしかしたらありふれたこと、だった。
現実の事件だって、実際のところそんなもんだろう。

人間だもの。
そこには、感情があって、よければよいほど暗転したときの振り幅は大きい。

そして、サーガ・ノレーンが最後までほんとにかっこよかった。
息をのむ旧友との対面。対峙というべきか。
変わり果てた関係性は、ローデ彼自身のだらしなさが招いたことだ。

たかが。
人はそういうかもしれない。
けれど、愛する人をとられること、だいすきな人に裏切られることの絶望は、それを経験した本人にしか分からない。
ローデは、大きな過ちをおかしたし、その代償はあまりに大きすぎた。

ただただ、うなだれそうになる結末に、ちょこっと付け加えられたささやかなラストシーン。
それが、わたしの救いだ。
サーガの心がほどけた。
それが見れただけで、よかった。

それにしても、すごーーーくいいドラマなのに日本じゃ全然知られてないみたいで残念だ。
雑誌で、海外ドラマの特集をやっていて、お、何が取り上げられているかな？と見てみると、ちゃあんとこの作品がとりあげられていた。
ブリッジのサーガ・ノレーン。
カーキ色の渋いポルシェとぶっきらぼうな彼女の顔とともに、忘れられないヒロインとなった。

デンマークの首都・コペンハーゲンに近いアマー島とスウェーデンのマルメを繋ぐ
オーレスン橋は、両国の間に横たわる海峡の上に架けられている。

ある日、オーレスン橋が４５秒間停電。
そのわずかな時間に、何者かが女性の遺体を橋上に遺棄していた。
ご丁寧に「スウェーデンとデンマークの国境部分に」である。
しかも、遺体は腰の部分で切断されており、上半身はスウェーデン人の市議会議長、
下半身はデンマーク人の娼婦だったのだ！

捜査にあたるのは、スウェーデン人の女性刑事・サーガ、
デンマーク人の男性刑事・マーティンの二人。

サーガの人物造形が良い。
捜査が大好き。頭の中は捜査ばっかり。
遺族感情に配慮しないし、食事もあまり摂りません。
羞恥心がなく、男性の面前で着替えをする。お、おう…
性的欲求を覚えると、バーで男を調達。ほぼヤリ捨て状態の男！可哀相…

少し人と違っているサーガを、普通に受け止めている余裕な同僚たち。
精管切除による股間の痛み、長男の教育に悩むマーティンは、優秀な刑事だった。

統計に基づく「五つの問題提起」をする犯人像も興味深い。
女性の殺人死体遺棄事件は「警察の捜査には格差がある」という問題提起らしい。
事実、市議会議長と娼婦の捜査には格差があった。
「法の下の平等はデタラメ」だと主張する犯人の次なる犯行は…

デンマーク作品の【ＴＨＥ ＫＩＬＬＩＮＧ／キリング】のスタッフが、スウェーデンの作品【刑事ヴァランダー】シリーズの脚本家と共同制作した話題作。
確かに、【キリング】の猟奇的要素と【ヴァランダー】のつかみ所のないまったり感（笑）が感じられる作品に仕上がっています。
ＶＯＬ１のレビューでサーガを【ＢＯＮＥＳ／ボーンズ】のテンペランス・ブレナンのスウェーデン版と評しました。
しかしながら、全話鑑賞してみて考えを改めました。
確かに、サーガは人の気持ちが分からず、問題発言を繰り返しますが、マーティンに悟られ、徐々に変わっていくのです。
とはいえ、当然、完全に変わるわけではない。
事あるごとに問題発言を連発するものの、それらは的を得ていたり、物語に奥行きを与える結果となるのです。
そして、ラストではこのサーガの性格が良い味を出すのだ。
【ただの嫌な人】ではなく、サーガの性格がこの物語にとって重要な役割を担っているというのが素晴らしい。
ストーリーもさることながら、キャラクターの作り方がうまいのだ。
これが、他国で次々とリメイクされる所以なのでしょう。
それに、この世界観に合ったＯＰ曲も良いです。いつもは早送りしますが、今作品は全話ＯＰも鑑賞しました(^o^)

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なぜだろう。この流れは同情できない。
アニャにしろ、メッテにしろ、結局は、よく知りもしない相手に心を許した結果招いた事態なのだ。
あまりにも警戒心がないし、（アニャはまだしも）メッテに至っては大人としての自覚に欠ける。。。
これって、そのまんま自業自得としか言いようがないのだ。
そして、事件の原因は、マーティンの因果応報。。。って、アウグストが不憫すぎる(T_T)
まぁ、それでもマーティンが嫌いになれないのは、作り手のうまさと言えるでしょうね。
無神経なサーガとの対比がマーティンの良さを際立たせ、最後に良い味を出しました。
内容よりも、作り手のうまさに拍手を送りたい。

今回、問題となるのは【子供の強制労働】。
外国で強制労働を課している会社の子供達が誘拐され、その映像がネット配信。
工場を一つ燃やす度に１人を解放するという犯人の言葉に世間は驚愕。
相手が子供だけに、世間の同情の目が集まり、工場の放火が繰り返されるのです。そして、その映像に拍手する捜査陣。
被害者が子供である事を問題視するマーティンに対し、サーガは言うのです。
【子供は「小さい人間」でしかない】【殺されたホームレスの方が数が多い】【子供は恐怖を感じていない】【恐怖を感じながら死んでいったビャアンの方が可愛そう】
いつもは無神経な事をいうサーガだが、今回ばかりは彼女の冷静な目の方が正しく感じられた。
【子供】という事で人の目は惑わされる。そんな中、本質を突いているサーガの言葉に思わず納得してしまったのです。
人の心理を突いた面白い切り口でした。