錆びた黄金

錆びた黄金（１９８１年・アメリカ、カラー、１３０分）

先日（２０１９年７月１９日）、オランダが生んだ名優ルトガー・ハウアーが亡くなった。享年７５歳。

８２年「ブレード ランナー」で演じたレプリカントのリーダー役が印象深いが、個人的には８３年「バイオレント・サタデー」（サム・ペキンパー監督）、９１年「ウェドロック」（ルイス・ティーグ監督）もなかなか良かった。
彼が出演した作品の中から、日本未公開ながら、豪華キャストで話題をさらった「錆びた黄金」に触れてみたい。

１９４５年のカリブ。マイアミの大豪邸で優雅に暮らすジャック・マッキャン（ジーン・ハックマン）は、２０年近く前、ゴールドラッシュに沸くアラスカの雪山で金鉱を発見し、億万長者となったのだ。
だが、カジノの建設を画策するやくざのマヤコフスキー（ジョー・ペシ）から立ち退きを要求される。
さらに、ジャックが反対するなか、娘のトレイシー（テレサ・ラッセル）が奔放なジゴロのクロード（ルトガー・ハウアー）と付き合い始め、２人は強引に結婚することに。クロードを気に入らないジャックは度々衝突する。一方、土地の利権をめぐってマヤコフスキーとトラブルになったジャックだが、脅しには屈しない。遂にマヤコフスキーはジャックのもとに手下を送り、彼を殺害する。ところが警察当局は、ジャックと不仲だった理由からクロードを逮捕する．．．。

無名時代のミッキー・ロークが出演（チンピラ役）しているほか、エド・ローター、コリン・レッドグレイヴ、ジョー・スピネルといった個性俳優も出演している豪華版だ。

惜しむらくはセリフの意味合い、繋がりがちょっと分かりにくく、やや散漫な気配は否めない。

監督のニコラス・ローグは、カメラマン（及び撮影監督）としてのほうが有名で、６２年「アラビアのロレンス」の撮影にフレディ・ヤングの下で加わっているほか、６６年「華氏４５１」、６７年「遥か群衆を離れて」の撮影を担当した。

トレイシーを演じたテレサ・ラッセルがいい。
７６年「ラスト・タイクーン」でデビュー後、数本の作品に登場したが、８６年「ブラック・ウィドー」で発揮した妖艶な女の魔性は最高（？）だった。
その彼女が２９歳も年長である本作監督のニコラス・ローグと結婚するのだから、いやはや男女に年齢差は関係ないか．．．。

随分遠回りをしてしまったが、ルトガー・ハウアーは本作出演時３７歳くらいで、まだ若い風貌。
なにか ‘危険な男’ の雰囲気をもつ役をやらせたら天下一品だった。
金髪で、独特な目の動きをする異色の俳優サン．．．どうか天国で、多くの俳優仲間とこれからの映画（映画界）を見守っていてほしい。

予備知識なしに観ましたが、時代がいつなのか、場所はどこなのかが説明が無いのでわからなく、
物語の背景がつかみにくい作品でした。
時代、場所は関係ないので自分で想像してくれという制作者の意図なのかもしれません。
ドイツが降伏して戦争は終わったとか、車種などから時代を推定し、場所については、
アメリカ北部かカナダの雪山、カリブ海に浮かぶ島といったところを想像しながら観ていました。
ストーリィは単純で、金鉱を掘り当てて財を成した男が、
男の娘の夫や土地を狙う輩と対峙するお話で、あまり面白くありません。
役者については、ジーン・ハックマンは貫禄の演技でさすがですが、
ミッキー・ローク、ルトガー・ハウアーは精彩がありません。
冒頭に出てくるフリーダ役の女性が神秘的で妖しい雰囲気を醸し出し、
不思議な魅力があってよかったのですが、早々に病死してしまうのが残念でした。
この不思議な雰囲気で最後まで行ってくれればカルト的な作品になっていた可能性がありますが、
時代が過ぎて主人公が金持ちになってからの南の島での欲得の絡んだ争いが話の中心で、
ありふれた映画になってしまっています。
また、島の現地人の儀式などよくわからない描写が多く、
理解できなくてもそこは観る側の自由な発想で観てくれという類の作品ならいいのですが、
そういう幻想的なタイプの映画ではなく、リアルな内容なのに理解不能な部分がいくつかあった煮え切らない変な映画でした。

ニコラスローグの変な映像が楽しめます。
詳しいことはわかりませんが独特な映像美があります。現在の映画にはあまりない独特な雰囲気が良いです。