ミニヴァー夫人

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　結局のところ、僕はこういう映画が好きなのかもしれない。心暖かく、ユーモラスで、時代に翻弄される家族の愛の物語。後年の『ローマの休日』を思わせる軽快な滑り出しから、あっという間に画面に見入ってしまう。グリア・ガースンの一家と、大好きなテレサ・ライトが、どうか幸せになってほしいと願ってしまう。
　文芸ロマンやリリアン・ヘルマン作、ベティ・ディヴィスの『偽りの花園』もいいけれど、ワイラーはこうしたハートウォーミングな素材のほうが資質にあっていると思う。もちろんいろいろ不満はある。僕が感じただけでも、結局のところ戦意高揚映画じゃないかとか、主人公一家のお気楽な中産階級ぶりが鼻につくとか、エピソードとエピソードが有機的に結びつかず、羅列に過ぎないのではないかとか。最後の説教と空に見えるイギリス空軍の編隊というラストカットは、あんまりじゃないかとか。
　でもね、家族や隣人が、互いが互いを大事に思っていて、適度な距離から暖かく見守っていることを過不足なく伝えてくれるワイラーの演出は、やっぱり心地よいのだ。こういう映画は積極的に認めようよと、内心から聞こえてくるのだった。７５点。

大戦初期のロンドン近郊の村が舞台。
妻であり母であるミニヴァー夫人が、いろいろな不自由や不安にもめげず、しっかりと生活していく姿を描く。

１９４１年という時局を念頭におきながら鑑賞してこそ、良さが理解できる作品。
戦後のイマとなっては、有難味がかなり薄い。
アカデミー監督賞に選ばれたウィリアム・ワイラーだって、他にいくらでも素晴らしい作品があり、
ところどころで “ワイラー監督、やっぱりうまいな〜…” と感心するだけだ。

ごちゃごちゃ収録されている特典映像の中でも、アカデミー授賞式のガースンの映像はよかった。

第二次世界大戦下、英国の小さな町ベルハムを舞台に、ミニヴァー夫人と家族、
貴族のベルドン夫人と孫娘キャロル、バラード駅長など住人たちの日々が描かれる。

1939年夏、開戦前のミニヴァー夫人は贅沢な買い物を楽しみ、屈託がない。
園芸好きのバラード駅長から「品種改良した薔薇を『ミニヴァー夫人』と命名した」と聞き、
笑顔を見せていた。
それから間もなく英国は開戦する。
ミニヴァー夫人の長男ヴィンの空軍入隊、夫クレムの「ダイナモ作戦」参加、
空襲、ドイツ兵など、彼女の生活に戦争が影響を及ぼす。
しかし、ミニヴァー夫人たちと住人たちは悲喜こもごもの日常を生き、
戦争の犠牲者を悼み、銃後を支えていく。

1942年制作という時節柄、戦意高揚の側面を持つ作品。
エンドマークと共に、人々に戦時国債や切手の購入を求める文言も示される。
「戦争は兵士だけのものではなく、自由を求める我々全てのものである」と鼓舞し、
「見よや十字架の旗高し」と歌い、V字編隊で飛ぶ英国空軍の勇姿を映して終わる。
だが、プロパガンダ色は抑制的で、品が良かった。

英国の階級制度に批判的な長男ヴィンと貴族の令嬢キャロルの結婚、
キャロルの祖母で気位の高いベルドン夫人とバラード駅長の薔薇を介した関係、
ミニヴァー家のメイド、雑貨店経営者、人望ある牧師など、多彩な登場人物に惹かれた。
ラスト、貴族に批判的だったヴィンが、ベルドン夫人に見せる優しい態度が涙を誘う…

本作には、二人のミニヴァー夫人が登場する。
ドイツ兵に対峙する気丈さを持つ美貌のミニヴァー夫人（グリア・ガースン）、
彼女の長男ヴィンの可憐な新妻であるミニヴァー夫人（テレサ・ライト）だ。
「ミニヴァー夫人」と命名された薔薇のように美しく、強い女性たちだった。
以前に投稿した方のレビューを拝読して視聴しました。
ご紹介ありがとうございました。

第１５回のアカデミー作品賞に輝く、ウィリアム・ワイラー監督の珠玉の名作です。
ドイツ空軍によるロンドン大空襲下の、イギリスの中流家庭の生活を、どんな苦労にも挫けない母親を中心にリアリスティックに描いています。
‘名匠’と呼ばれるようになった監督のウィリアム・ワイラーですが、本作までは３６年「孔雀夫人」、３９年「嵐が丘」、４０年「月光の女」、４１年「偽りの花園」と、アカデミー監督賞に連続ノミネートされながら僅差で受賞を逃しています。
本作の受賞によって、彼の名声は更に高まり、名実ともに‘名匠’、‘巨匠’と呼ばれるようになりました。

ミニヴァー夫人を演じたグリア・ガースンは出演時３８歳で、イギリスの中流階級の「普通の家庭の主婦」を無難に演じ、見事アカデミー主演女優賞を受賞、３９年「Ｇｏｏｄｂｙｅ．Ｍｒ．Ｃｈｉｐｓ」、４１年「塵に咲く花」でのノミネートが踏み台となったようです。さすがＭＧＭの看板女優だけのことはありますね。　（夫クレムを演じたウォルター・ピジョンとは、４３年「キュリー夫人」でも共演）

物語に大きなテーマが設定されている訳ではなく、バラの展覧会に出品することをめぐるやりとりや、ミニヴァー夫婦の高級な買い物（夫は高級車、妻は高級な帽子）に関するやりとりなどが、心温かく描かれています。
しかし背景には戦争という暗い影が迫って来、長男ヴィン（リチャード・ネイ）の出征や、ヴィンの婚約者キャロル（テレサ・ライト）の苦悩など、さまざまな困難がミニヴァー家にふりかかります。
しかし、彼女の、常に前を向く不変の心によって、困難に打ち勝っていく家族の団結は、観る者の心を洗います。

キャロルを演じた２４歳の新進女優Ｔ・ライトも好演で、彼女はこの年「打撃王」ではアカデミー主演女優賞にノミネート、Ｇ・ガースンとはオスカーを競っていたのですが、結局、本作で助演女優賞の栄誉に輝きました。
前年にワイラー監督の「偽りの花園」でデビューし、いきなり助演女優賞にノミネートされた実力者です。　一見おとなしそうで、実は芯の強い．．．そういった役柄が似合っていました。
この後も、４３年「疑惑の影」や４６年「我らの生涯の最良の年」など、名作に出演しています。

ところでＧ・ガースンと、長男ヴィンを演じたＲ・ネイ（Ｇ・ガースンより１２歳年下）、実は本作の共演が縁で、１９４３年に結婚しています。（４７年離婚）　

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チップス先生の奥様役の女優さんが主演なのでレンタルしてみました。
もっと壮絶な感じを想像していたのですが、戦争前の平和なときからのお話で、戦争が始まって間もない頃の段階で終了しています。
いつも利用する駅の駅長さんに、趣味で咲かせた薔薇の花に自分の名前をつけさせて欲しいと頼まれるような美しく心優しいミニヴァー夫人。
ミニヴァー家には大学に行った長男がいて、若さゆえのちょっと小生意気な口を利く青年である。しかし非常に家族思いでもある彼は空軍に入りパイロットになった。
戦争が始まってミニヴァー氏も自警団の一員として家を空けることになる。夫の帰りを心配しながら待つ夫人。そんな中、早朝ドイツのパイロットがミニヴァー家の植え込みの中に倒れているのを発見。ドイツ兵は敵に捕まらぬよう婦人を脅しキッチンで食料を要求する。
ピストルを向けられたままの夫人だが気丈に振る舞い、ドイツ兵が気を失った隙に警察へ連絡し事なきを得る。
夫も無事帰ってきて一安心。長男が幼い頃から好きだった近所の資産家の娘と結婚し幸福だったのですが、新婚旅行から帰ったとたんに敵の攻撃が始まり長男は即出動。ミニヴァーさんの村にも被害が及び新婚の新妻が空襲で亡くなってしまう。
新婚旅行から帰った新妻が、「夫は戦争でいつ死んでしまうか判らない。だから幸せな今がとても大切な時間です。幸せな時間はいつ終わってしまうかわからない。悲しむ時間は死ぬまであるのですから。」と言っていたのが切なかった。
空襲の後、教会で牧師さんが言った。「兵士ではない村の住民が何故死ななければならないのか？戦争は兵士だけのものではない。」
おっしゃるとおりです。