ナインハーフ

この映画を初めて観たのは、かの「日曜映画劇場」だったと思う。
YouTubeで淀川長治さんのその日の解説を見ることが出来る。
あっ、そうそう、そういえばこんなことを言っていたな。
何年経っても憶えているから不思議。
淀川先生、映画が始まる前のイントロダクションで殆ど内容言っちゃっています。でもやっぱり上手い。ワクワクする。観る前にこんな解説されたらすごく期待するよな。
しかし本編はセクシーなシーンのオンパレードだったなということだけ。内容のほうは今一つだったという印象。
見直してみて、R指定なのにあの時間によく放送したなと改めて感心した。テレビ向けにカットされた場面も無かったように思う。やっぱり「日曜映画劇場」はエライ！

マンハッタンを舞台に繰り広げられる、ある男女が出会い別れるまでの９週間半の物語。
ただそれだけのこと。
女性のほうはキャリアウーマン風だけれど、謎の男に振り回されるおバカさんに見えるし、
男性のほうはウォール街に勤めるデキル男の設定のようだけど、ホントにそうか？と疑いたくなるような、にやけたへなちょこ男にしか見えない。ミッキー・ロークはその後のあの「猫パンチ」で本物のへなちょこになってしまったのは今思えば皮肉な話。
薄っぺらい脚本がエイドリアン・ラインの勿体ぶった演出に助けられているという感じ。

キム・ベイシンガーは最近では「あの日、欲望の大地で」の役が印象深い。
ミッキー・ロークは「レスラー」で見事蘇った？か。
どちらも今も活躍していてくれているのは喜ばしい限りである。

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1986年の映画ですからもう25年以上昔なんですねぇ。ミッキー・ロークは私と同い年で撮影当時34歳、相手役のキム・ベイシンガーは一つ年下の33歳でした。当時の私は社会人になって10年、体力も気力も「絶頂期」でしたから仕事でも遊びでも「怖いものナシ」で「眠ってる時間が一番惜しい」なんて嘯いて（うそぶいて）「当たるを幸い」みたいな勢いで突っ走ってたもんです。で、ちょうどこの映画が公開された頃に海外転勤したもんで、初鑑賞したのは5年ほど経って日本に帰って来てからでした。5年の海外生活で色々な経験をしたし、勿論5年分トシも取って、何より日本はその間に「バブル」が崩壊してすっかり状況が変わってしまってましたから、この映画に描かれた「絶頂期にある男と女の恋愛」の刺激的で興奮に溢れた「表」の魅力を堪能した反面、その「裏」に伏流する頽廃的で軽薄な空しさや悲しみのようなものを余計に感じ取ってしまったんでしょう、正直なところあまり印象の良くない映画でした。特にキムの演じたイイ女の典型（のように当時は思えた）エリザベスが、ジョン（ミッキー）のように酷薄で下品だけど強烈に性的魅力を発散する男に、抗いようも無く溺れて行く、というこのオハナシが自分でも意外なほど納得感があって、妙に不安な気持ちにさせられたのを覚えています。
最近になって新しくDVDが発売されたんでしょうか、この前ショップで見つけて懐かしくなって借りて来ました。20年ぶりの再鑑賞でしたが、この間に一番「変わった」のは何と言ってもミッキー・ロークでしょうね。「レスラー」「キル・ショット」のミッキーは「悪くない」ですが、本作の彼とは全くの別人です。20年の時間は人をこれほどまでに変えてしまうものなのか？私も自分の昔を思い返してあらためて愕然としてしまいましたねぇ(笑)。しかし今回の再鑑賞で最も感じ入ったのは監督エイドリアン・ラインの「時間」でした。本作から15年の時を経て監督が61歳で撮った「運命の女」(2002年、原題「Unfaithful」)は「不倫」のオハナシですし、セックスの描写もある意味もっと「過激」で、主役のコニーを演じたダイアン・レインは（好みの問題もありますが）キムに負けない「イイ女」ですが、少なくとも私はこの映画に「頽廃」や「軽薄」を全く感じなかったんですね。勿論私自身がトシを取って私の感覚自体が「ユルく」なってしまったから、ということもあるのかもしれない。当時のミッキーに比べて「運命の女」の相手役オリヴィエ・マルティネスには多少「品」があって酷薄な感じが少ないこともある。しかし最も「違う」のはエリザベスの「溺れ方」が明らかにジョンの手練手管に「引き摺られて」いるのに対してコニーは「自分から選んで」溺れて行くところですね。
女性のセックスは男にとってはいつまで経っても「神秘」です。エイドリアン・ラインというヒトは常にそこに正面から切り込む作品を撮り続けている（と、私には思える）。本作で私が感じた「不安」は実は製作当時監督自身が抱いていた「不安」そのものなのではないか？そして15年後の「運命の女」で彼は一つの「悟り」に到達したのではないか？な〜んて、単に私だけが勝手にそう感じている「妄想」かも知れませんが（笑）。昔の映画を久し振りに鑑賞するのも楽しいもんですねぇ。

30年前になるのですね。
女性を奴隷のように扱う男と、そんな男に溺れてゆく女。
当時、センセーショナルで話題でした。
何より、女性に圧倒的な支持を得た・・・のが皮肉です。
これだけの手練手管で愛して貰いたい・・・という願望も
あったでしょう。
古い言葉ですが、「釣った魚に餌はやらない」って時代でした。
何より、ミッキー・ローク、最高に美しかった。
謎の男。含み笑いの似合う男です。

ラストは女(リズ)が、男の元を去ります。
心の繋がりを求めたい・・・そんな結末でした。

30年経った今も、ミッキー・ロークと、キム・ベイシンガーが
ハリウッド映画界から消えること無く、スターで有り続けてるのは、
とても嬉しいことです。

遠い昔、ＴＶで観た記憶がある。
子供心に「異常に刺激的」な印象が残っている一本。
届いてはじめて、リスト・インしている事に気付いた。
（上位に並ぶ「廃盤・製造中止タイトル」に紛れて、というのは言い訳で、単なる管理ミス。）

都会の男女の出会いと別れ。
男はウォール街のやり手、女は画廊に勤めるキャリア・ウーマンだが、「仕事してるの？」って感じ。
やたらめったらのセクシー・シーンがこれでもかの勿体振りようで、「それがどうなの？」としか思えない。
暫く辛抱していたが、いつまで経ってもそれ以上の出来事が何も無い。
（起こっているのかも知れないが、全然気付かない。）
「そのうち、きっと…」の我慢も実らず、（予想通りと言うべきか）最後までそのまんまで終わってしまった。
「深い部分を感じろ」と押しつけられているような、いささかの不快。
当時最先端だったろうファッションとスタイリッシュなインテリアにも、「どうだ」ってリキみがほの見えてハナについた。
時間の無駄とは言わないが、それに近い腹立ちが残った。

キム・ベイシンガーの顔が、最後までとっつき難かった。
ミッキー・ロークは、その後の「ねこパンチ」を思い出して、複雑。
どちらかと言うと「変身後」の暑苦しい方が、俳優としてはいい顔になっていると思う。

（「予約リストの整理をしなければ」と気付かされたのは、思わぬ怪我の功名か。）

この映画はストーリーどうのこうのよりも、感覚（特に映像と挿入スコア）で魅せる映画．．．そんな印象を受けました。

冒頭から大都会ニューヨークの雑踏が映し出されたかと思うと、一転、下町の庶民の暮らしぶりが立て続けに描かれる。そこにタイムリーなテンポのいい音楽が流れる．．．映画の要素の一つとして、この感覚はいいですね。

そして粋に登場するキム・ベイシンガー。
ノミの市で見つけたショール（スカーフかな？）が欲しくてたまらない。でも高い。
その様子を遠巻きに見ている一人の男、ミッキー・ローク。
知り合って間もなく、そのショール（スカーフ？）をそっと手渡すミッキー・ローク。
こういったアプローチのしかたは日本人にはなかなか出来ないし、似合わない．．．そんなことを考えてしまう。

２人の楽しい時間が流れる。
いちごをほうばり、牛乳をガブ飲みするベイシンガー、コミカルだ。
ここでもテンポのいい曲が流れる。何という曲だろう。
またもや、この映像感覚に魅了された。

中盤に差し掛かり、２人はやや感傷的になる。
ベイシンガーが言う。‘なぜ分かったの？　私が言うとおりになると．．．’
答えるローク、‘君は僕の分身だ’

ベイシンガーは友人のモリー（マーガレット・ホイットン）にも言う。
‘付き合っていると、男の人柄は、読んでいる本で分かる、ネクタイの柄で分かる、そして、やがてすべてが終わるのをじっと待つ．．．でも彼（Ｍ・ローク）は分からない、謎の男．．．’

画家のファインズワース（ドワイト・ワイスト）と会うベイシンガー。
この場所はどこなのか？　緑黄の木々が眩しい中、全体を照らす光の構図。
一瞬の描写だが、この構図が素晴らしい。（ピーター・ビジウのカメラ）

監督はエイドリアン・ライン。
８７年「危険な情事」を彷彿とさせるシーンもいくつかあるが、全体的なスタイリッシュ映像によって、嫌悪感は感じさせない。
彼の監督作では０２年「運命の女」が良かった。（ダイアン・レインが魅力的だった）

眉を薄くしたキム・ベイシンガーの金髪姿がいい。
９７年「Ｌ．Ａ．コンフィデンシャル」での妖艶な彼女は、もうこのとき既に形成されていたのだろう。ラストにみせる涙の表情も、心憎い。