ザ・ブレイブ・ウォー第４４２部隊

このタイトルをリストに入れた理由は、

●昨年秋、TBS開局60周年SPとして放送された長編ドラマ、「９９年の愛」で草薙剛さん演じる日系移民が入隊したのが第442部隊だった。
●同じく昨年、何かの番組で442部隊の活躍を特集したテレビをたまたま見た。
●マーク・ダカスコス 、 ジェイソン・スコット・リー 、 タムリン・トミタ 、 ノリユキ・パット・モリタのクレジットがあった。

TVムービーだと思いますが低予算がゆえ戦闘シーンはしょぼく、マーク・ダカスコスやジェイソン・スコット・リーから連想されるアクションは皆無。
細かいフラッシュバックを入れ続ける描写もダラダラした印象で緊迫感、悲壮感ともにゼロ。戦争映画を期待するなら全くダメです。

去年まで442部隊の事は知りませんでした。でも、壮烈な戦歴や結成された経緯を知ることで、その存在が深く心に刻まれました。
いつの時代もすべての兵士には様々な事情から戦う理由があり、そこには時代背景や人種問題が存在するのは世界共通。
戦時下の一方的な政治的理由から日系人で編成された442部隊。犠牲もいとわぬ突撃精神で任務を果たし、功績とは裏腹に兵士が激減してゆきます。

残念ながらこの作品でそのスケールは表現し切れませんでしたが、なにやら渡辺謙さんの監督で映画化の話が進行中とか。これは期待したい。
この作品を気に留めて442部隊を知らない方は、一度ウィキペディアで検索してください。とても簡潔に歴史が纏めてあります。

エンディングには郷愁さそうオリエンタルなBGMと共に実際の兵士達の写真が流れますが、さすがに胸が締め付けられます。
作品としてはイマイチですが、少しでも史実を知るキッカケになれば幸いでしょう。

「諸君は敵のみならず偏見とも戦い勝利した。」とは、戦後、部隊にアメリカ陸軍最高の７つめの大統領部隊感状を、これも初めて自らの手で連隊旗に括り付けるという最高の賞賛を与えたトルーマン大統領の讃辞の言葉。
ドイツ軍に包囲され、救出困難となったテキサス大隊２１１名を救出した第４４２部隊には２１６名の戦死者と６００名以上の重傷者が出たといわれています。
文字通り命を交換しての救出劇を演じてみせた彼らに対し、テキサス大隊の指揮官が礼を述べに行きます。
「もし、逆の立場だったら我々を救出してくれるのだろう。」という返しの言葉に「もちろん。」と簡単に答えてしまった彼が、兵舎を出て夥しい数の戦死者、負傷者を見て慌てて引返し感謝の気持ちを伝えようとしたのが滑稽でした。
命を交換してまで日系人の部隊を救出しようというアメリカ兵がいないことは明らかでしょうから・・・。
日本では暮らしていけないとアメリカの地に渡り、きびしい差別を乗り越え、やっと生きるだけの生活の根を下ろしてきた日系人。日米開戦でのパールハーバーでの卑怯な奇襲攻撃を大々的にプロパガンダし、戦意を高揚させてきた
アメリカ社会の中で、更に厳しい差別を与えられることとなります。アメリカで生まれ国籍を持っている二世でさえ強制収容され国全体から差別を受ける中、アメリカに忠誠を示し祖国日本を裏切らざるを得ないという選択をせざるを
得なかった多くの日系二世の人たちの苦しみや悲しみはいかばかりだったでしょう。
しかし、その苦しみや悲しみに負けていられなかったのも、当時の日系二世たち。自分たちの家族や日系社会を守るため、命懸けでアメリカへの忠誠を示さなかればならないのです。
Go for broke!という部隊のモットーは「当たって砕けろ」とか「死力を尽くせ」とされているが、夢を持って渡ってきた自由の国アメリカからの裏切りや差別をブレークするためには、突進するしかない、と言っているようにも聞こえます。
テキサス大隊救出を命令したルーズベルト大統領は、最前線に配備され困難な局面を乗りこえてきた第４４２部隊に十分な休養を与えないまま、テキサス大隊救出の命令を下しました。由緒あるテキサス大隊の兵隊の命と第４４２部隊の命を
比べたら、当然のことだったのでしょう。或いはこんな命令を聞くわけがない、命令に従わなければ、それはそれで敵国である日本人への憎しみや蔑みを高めるいい口実にもなると考えたのでしょうね。
しかし、第４４２部隊は、命令に従い、任務に成功してしまった。上層部はこんなことを感じたのではないでしょうか。「日本人の軍隊は最強だ。圧倒的な差を持つドイツ軍を負かしてしまった。今、戦争している日本は武器や弾薬、兵糧が
ないから負けているのであって、同じ武装と条件を与えられれば我々に勝ち目はない。」と・・・。
物理学者アインシュタインは原爆を作ったことを「大いなる間違い」と考えましたが、軍の上層部は日系人部隊を編制したことを恐怖と捉えはじめたのではないでしょうか。
そして、降伏することが、一番だと考えたのでしょう。日系人部隊をアメリカ陸軍最強の部隊と認め、大統領自らが彼らを称えたのです。差別を跳ね返すのにこれほどの犠牲を払わざるを得なかった在アメリカ日系人の皆様の歴史がこれまで
全く伝えられなかったことは非常に残念です。私も他のレビュアーさんと同じく、TVドラマ「９９年の愛」でこのことを知りました。
この映画では、愛する家族を皆持ちながら、死んでいった多くの兵士のエピソードが中心にスポットが当てられていますが、今でこそ最強の部隊と称えられていますが、最初は陸軍の中でも差別され、勲章授与の評価でも一段低く見られ、
日系人の他の部隊がユダヤ人強制収容所を解放していたことも１９９２年まで公表されなかったという。虐殺されようとしていたユダヤ人を日系人が解放した事実を伝えれば、その日系人を強制収容所に押し込めたアメリカ政府が窮地に
陥るからなのだろうか・・・。
２０１０年。オバマ大統領は、改めて民間人に贈られる最高位の議会名誉黄金勲章をこの部隊へ贈った。（日系人を裏切り、差別したことが誤りだったと認めたのでしょう。）

期待とは程遠い映画である。442部隊の生き残りの方やその遺族のかたには映画のなかのインタヴューや昔の追憶は感慨深いかもしれないが、一般の視聴者にはこれらは無縁であり、感慨はわかない。一般の視聴者が求めているのは442部隊の活躍ぶりであり、日系人の誇りであり、敢闘精神である。戦後、アメリカ人が日本人を認めるようになったのはトヨタやホンダより遥か以前に442部隊が最初といえよう。

日系でも祖国に忠誠心を示すため志願しても、過酷な前線で犬死に確定！

映画としては、1951年の「GO FOR BROKE! 」（当たって砕けろ！）(日本語タイトル「二世部隊」）の方が好きです。
そちらはもっと軽いので、「映画として」楽しめました。
きっとこちらの作品の方が、それよりずっとリアルな要素が画かれて居ると思いますが、回想と云う事で、私達が普通にイメージしてる「映画」と云うよりは、ドキュメンタリーに近いのでしょう。
なので、楽しめる作品では無く、ある種の資料、そして当時の方々の記憶を共有する、貴重な作品では有るかと感じました。
しかし、このような事実を映像で、最低でも日米の若い人達にはもっともっと知って、そしてこの方達が命がけで願った、「日米の友好」を心に留める事を継承していくべきだと思います。
本当にもっと沢山の人に観て欲しいです。