ウディ・アレンの夢と犯罪（カサンドラズ・ドリーム　夢と犯罪）

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「マッチポイント」「タロットカード殺人事件」に続くロンドン舞台の犯罪ドラマ３作目です。
原題は「カサンドラズドリーム」で、カサンドラとはギリシャ神話で予言をする王女の名前らしいですが、この映画の冒頭で、二人の兄弟が買う中古のヨットの名前がカサンドラズ・ドリーム号です。

マッチポイントが上流社会ものだったのに比べて、今作の兄弟は労働者階級です。兄のイアン（ユアン・マクレガー）は父親のレストランを手伝いながら、現状に不満を抱き、ホテルへの投資を機に実業家転身をもくろんでいます。弟のテリー（コリン・ファレル）は酒とギャンブル好きの小心者で志も低く、自動車修理工場に働きながら欲しいのは恋人と住むためのささやかな家くらい。
弟は、ドッグレースで大穴を当てたり、兄は舞台女優と付き合うことになったりと、運が向いてきたかと思いきや・・・
弟はギャンブルで大金の損失を出し、いずれもお金がいるところに、今は香港その他で手広く形成外科を営む伯父さんが帰ってきます。
兄弟は伯父さんに助けを求めるのですが、彼からとんでもない「頼みごと」を持ちかけられます。

伯父さんからの依頼を引き受ける兄弟が裏目裏目の成り行きに足を取られていく姿は、あらよあらよと負のスパイラルに向かって、転がっていき、人間身の程をわきまえないとねぇなどと思わせてくれます。

人生に楽して富を得るなどなく、悪事には高い代償が伴うことを教えてくれます。
それにしてもお金って怖い。
ごく普通の人間が持っている欲望を、こんな風にスムーズに描いてしまうのは、流石アレン監督です。
しかし、アレン作品にしては人生に対するアイロニーもウイットも少なかったように思えます。
リアリティはあるのですが、徹底的に、悲劇にこだわった挙げ句、ちょっと後味の悪い作品になってしまった感じが否めません。

個人的にはウディアレン監督作と相性が良くない気がしていたので、
どうしようかと思いつつも、
やはり、今回もキャスト（ユアンマクレガー×コリンファレル）
につられて観ました。しかも劇場で。

そうしたら、これはこれで、最後まで飽きずに観ることができました。

悪事の代償はとてつもなく大きい
楽して得たものは失いやすい
「絶対大丈夫」と「〜する自信がある」とは違う
そういうことが感じられる悲劇だったな、と思いました。

労働者階級の兄弟、兄は事業家になることを夢見て、
弟は恋人と幸せに暮らすことを夢見ていた。
どちらも楽してお金を得て夢を叶えようとしたのが
すでに悲劇のはじまりだったのかも。

弟はギャンブル失敗、兄は投資のための資金として
叔父さんに借金を申し込む。
叔父さんもまた事業を成功させるために悪事を働いていたが、
それが表ざたになるのを防ぐべく、
この兄弟にお金を貸す条件として、さらなる悪事（犯罪）をさせようとする。

悩んだ末に何かがキレて、
ひらきなおってこの条件を引き受ける決意をした兄とは対照的に、
弟は耐えられなくて精神的に参っているようす。

彼らが引き受けた罪がもう一つの事件を呼んでしまうのですが、
刑事からみたら、彼らの犯した犯罪も「ありふれた事件の一つ」、
ラストの事件も「ありふれた事件の一つ」
という風に描かれていたのも、皮肉っぽい。

せっかく手に入れたヨットで悲しいエンドを迎えたのも
なんとも皮肉な結末・・・でした。


劇場公開タイトルは
「ウディアレンの夢と犯罪」だった気がする。
ＤＶＤ化でタイトル変えたのか、
と思ったらセル版は劇場タイトルと同じなんですね。

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兄イワンと弟テリーは、対照的な性格を持ち将来の夢もまるで違った。イワンは、投資家としてホテル事業に参入しビジネスマンとして成功すること。テリーは、恋人のケイトと一緒に暮らす家を手に入れること。自動車修理工で安月給だがギャンブル好きだ。
ある日イワンとテリーは小型のクルーザーを購入することにした。所有者が死亡し売りに出されていた物だが彼らは気にしない。支払いはまとまったお金がなくローンで購入した。そして、“カサンドラズ・ドリーム号”と名付けた。
イワンは美しい女優のアンジェラと偶然知り合い積極的にデートに誘った。テリーから修理店の高級車を借り、彼女とデートを重ねていった。イワンもテリーもそれなりに幸せな日々を送っていた。そんなある日、テリーがギャンブルで負け巨額の借金を作ってしまった。同時にイワンはアンジェラにお金を使い過ぎ、投資資金の支払いに困っていた。
そんな時、二人の前に現れたのが大金持ちの伯父さんです。この伯父さんの登場によって二人の人生が狂い始めます。法外な話を持ちかけられる二人。彼らは真剣に悩みます。イワンは、お金も将来も手に入り幸せな人生を送ることが出来ると言う。テリーはそんなにうまく行くわけがない、俺には出来ないと・・・。
しかし、二人は後戻りの出来ない大海原に身を投じていくのです。
ラスト、2人の夢を乗せ船出したはずの“カサンドラズ・ドリーム号”は、ふたたび彼らを乗せ走り出す。出口の見えない海へ・・・。
この映画の最初と最後に“カサンドラズ・ドリーム号”が登場し、彼らの運命を静かに見守りそして見送ります。心に残る名作だと思いました。。。

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ウディ・アレンにしてはアッと驚く捻りが脚本になかったと思いました。
この映画はストーリーで楽しませる映画ではないんでしょう。

あまり罪の意識がない兄イアンと罪の意識が強すぎて鬱状態の弟テリー。
どうにも決着がつきそうにない展開でやむをえない選択をするイアンと伯父だが、最後はシュールな終わり方でした。

刑事の「ありふれた事件の一つだな」と言うラストの台詞がシュール

殺人に使われる拳銃がお手製のものなんですが、弾痕検査ではお手製のものとありふれた拳銃とどちらが足が付きにくいのでしょうか？
映画と関係ないですけど、気になりました。

コリン・ファレルはドラマ系の映画に出ている方が好きです。
今回はアイルランド訛りはなくて、イギリス訛りですがそれもいいですし、本物の喫煙者というところも好感持ってます。
カッコいいながら、かわいらしい。

冷たいようですが
そもそも弟がギャンブルにはまって、大借金したことから、
始まってないですか？この悲劇。
だったら、弟は自業自得。
兄は弟を助けたい気持ちも強かったんだろうけど、
だとしても、やりかた間違ってるし。
自分の欲得もあり、巻き込まれたような、
やっぱり、自業自得のような。

でも、人間なんだからふとしたはずみとか、甘い見込みとかで、
踏み外しそうになることがあるのは、わかるんです。
そして、踏みとどまっていたら、そこで話が終っちゃうことも。

終始、止めたい気持ちで観続け、止めることができるはずもなく、
もどかしい思いばかりが残ってしまい、
悲劇に酔うこともできませんでした。