ジャーヘッド

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本作は第一次湾岸戦争（1991年）を舞台にした戦争映画ですが
大きな声で言いますけど「 な に を い ま さ ら 」です。

つくづくアメリカという国は馬鹿な国で、あのベトナム戦争で
少しは反省したかに思えたが嘘だった。実際様々な反戦映画
が戦後数多く作られた事は記憶に新しく、良作もあったと思う。
しかし、湾岸危機に陥ると掌を返したように国威効用をあおる
様な映画を即効で製作し(あえてどれかは言わない)世論を扇動
ところが旗色が悪くなると、本作の様な映画を作って反省した
かの様に見せる。もう、アホかと。
いま貴方がイラクでやってる事は何ですか、と真に聞きたい。
反省は猿でも出来るのなら、あんたらは猿以下だと言いたい。
いまレバノンでは、ハイテク兵器である無人攻撃機プレデター
やグローバルホークを、イスラエルがアメリカから購入して
自分達はパソコンの前で安全快適、しかし空爆で国連施設まで
平気で破壊してる、自分達が死なない事をいいことにもはや
無関係な一般人を屁とも思わず冷静に大量に無差別に殺して
いる、事態は湾岸戦争の頃よりずっと悪質化しているのです。

作品のスタンスがどっちつかずなのは、現状で未だに米国が
戦争に加担しているからで、本作を「ドライな視点」などと
好意的な評価など出来る訳が無い、逆に言えばこれが精一杯
なのだ。引き受けたSam Mendes監督にご苦労様と心から伝え
たい。監督決定に紆余曲折があったのは、ある意味当然です。
特に「地獄の黙示録」を見せている演出は良かった、あれこそ
現代版の戦時中の狂気が、よく描かれたシーンだったと思う。

同じテーマなら、ミュンヘンやシリアナの方が良いと思うし
これならディスカバリーチャンネルの方が見る価値がある、と。
平和ボケだよ、日本って。こんなハリウッドマジックはお断り。

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　「アメリカンビューティー」のサム・メンデス監督なので、それほど期待してはいなかったのですが（私、「アメリカン・ビューティー」がアカデミーって言うのは、どうも納得していないのです）いや、なかなか考えさせられるものでした。彼は、物語のテーマを直接的にではなく、彎曲した形で表現するのが好きなんでしょうね。この監督はイギリス人なんですけど、ハリウッドがこのような、アメリカを批判するような映画を撮ることも興味深いですよね。

　皆さんおっしゃってますけど、銃撃シーンがほとんどない、静かな戦争映画という、一種独特な物です。（劇中で「ディアハンター」を観ているシーンがあって、その中での銃撃シーンに狂喜乱舞してますけど）

　メディアではほとんど流れることがなかった湾岸戦争における実態を映像化していて、兵士達の姿が生々しく描かれています。戦争時における兵士達の日常はとても狂気じみているのでしょうが、どこかサークルの合宿的な雰囲気も同時に持ち合わせているところが逆に怖いです。
　今はやりのブート・キャンプの実際を観ることができますね。あれだけ苦しい訓練を積んで戦地に赴いているのに、実際は敵なんかいない。戦闘する機会はないということで、葛藤する若者を描きますが、本当はそんなもの、ない方が良いと思えないのが、戦争という極限状態にいる人間の異常性なんでしょう。
　
　ところで「ジャーヘッド」って何？って思ったんですけど、完全志願制であるアメリカ海兵隊員の俗称なんですって。海兵隊員の高く刈り上げた髪型がジャーに（ポットか？）似てることからそう呼ばれるようになったらしいです。ジャーの中身は空って事で、海兵隊員の頭の中はカラッポというように揶揄しているともいえますね。
　
　「ブロークバック・マウンテン」のジェイク・ギレンホールが、戦争という特異な場所にいる、ひとりの普通の若者をストレートに好演してます。複雑な感情を押し隠した兵士役のピーター・サースガード、「仕事としての戦争」が好きな上司ジェイミー・フォックスが堂々と演じています。「Ray／レイ」の好演が思い浮かびますが、この人何やってもいい味だしますね。

全編を通じて音楽が良いです。カニエ・ウェスト、T・レックス、トム・ウェイツ、ノーティ・バイ・ネイチャー、パブリック・エネミーなどの曲で、じつに映画の雰囲気を盛り上げています。
　音楽担当はトーマス・ニューマンですけど、スーパーバイザーとして「スクール・オブ・ロック」のランドール・ポスターの名前がありましたね。選曲のセンスが素晴らしいと思います。

　かつてないほどに地味な戦争映画だ。こういう描き方もあったのか、と新鮮な驚きがある。

　戦争の退廃と退屈を描いた力作なのだが、退屈なのは兵士だけではない。観客も退屈だ。

　戦争を憎めば憎むほど、映画に対しては「エンタメとしての戦争」を欲望してしまうというアポリアをわたし（たち）は抱えているのだろうか。

　反戦映画であるはずのコッポラ監督の「地獄の黙示録」を見て興奮絶叫し「ワルキューレの騎行」を高唱する兵士たちの嬉々とした顔に、その昔小学校の映画上映会で「狼少年ケン」のテーマ曲をみんなで歌った体育館の光景を思い出した。あの無邪気な表情で嬉しそうに人殺しをするのだから、兵士というのは「人を殺すために訓練された生き物」であることをつくづく思う。

　キューブリック監督の「フルメタル・ジャケット」の冒頭シーンは海兵隊の訓育場面だったし、この映画も同じシーンから始まる。海兵隊員は日夜徹底した訓育を受けることによって「権力を内面化」（＠ミシェル・フーコー）し、従順な兵士となる。彼らは「敵を殺す」ことに義務感を持ち、敵との遭遇に心からの恐怖を抱きながらも敵を殺すことを待ち望む。

　だから、敵が現れなければ兵士は疲弊し退廃する。軍規は乱れてストレスは溜まる。それでなくても死ぬほど熱い砂漠にいるのだ。一発も銃を撃てない鬱屈にいらつく兵士たち。そういえば、作家田中小実昌が、日中戦争の末期、中国に侵攻したけれど結局一度も銃を撃たずに敗戦を迎えたと書いていたが、あの当時の日本軍は飢えと病気でかなりの戦闘員を失ったのに比べ、現在の物量豊富な米軍のなんとお気楽で贅沢なことよ。

　ここには現代戦の「真実の一つ」が描かれている。ピンポイント爆撃であっという間に敵を殺してしまう時代に狙撃兵は必要ないし、ぬかるみのジャングルを這い回る恐怖と不快もない。しかし、「死と恐怖」が存在しないのは圧倒的な武力を誇る米軍だけであって、攻撃を受けるイランの町には人々が住んでいるのだ。この映画はあくまでも海兵隊員にとっての退屈な戦場を描いたに過ぎない。そのことを忘れたくない。

　帰還兵アンソニーの独白が語る。「ぼくらはもう銃を持たないけれど、その手は銃を覚えている」。

　銃を覚えた手が今また世界中で再び銃を撃つ。戦争のばかばかしさを忘れ去ることのできる日はいつくるのだろう。

個人からみた戦争っていうのはこんなものなんでしょう。
相手の姿なんてそうそう見えるものじゃない。
派手な銃撃シーンや戦闘シーンはないものの逆に戦争の
虚しさや重々しさが余計伝わってきた。

ノーマンズランドを観た時と似たような感じになりました。
映画的にはノーマンズランドの方が遥かにいいけど。

アメリカ作品の戦争ものはどうしても偏りがちで政治的な
メッセージやアメリカの正当性がちりばめられている感じが
ぬぐえないが、この作品はちょっと脱していたような気がします。

　さあ９１１以降のアメリカを批判してください、と全編言っている様な映画です。
　でも僕は、アメリカ映画が大好きで、手をかえ品をかえ破壊の限りを尽くすアメリカ映画を愛しているので、反米にはなりきれません。アクション映画なら殺人と破壊に悦び震え喝采し、本作のような政治的社会的テーマがあると装った作品では、戦争はやっぱり人間性を破壊するなどと言いたくなる自分がイヤです。
　だから本作も含めて、映画を社会的政治的に受け取る事は極力避けたいといつも考えています。
　だからこの『ジャーヘッド』には困ってしまいます。この作品は、魅力的な登場人物がひとりもいないことから分かるように、何がしか人間の真実を描こうというより、「戦争ってしょーもないねえ」という気分を描くことが主眼なのです（そこが『フルメタル・ジャケット』とは違うところだと思います。長いこと観ていないので確実なことは言えませんが、あちらはそんな安易な感想を抱かせる作品ではなかったと思います）。
　そうした困惑に拍車をかけるのが、サム・メンデスという確か舞台出身のこの監督は、「美しい絵作り」が好きなことです。燃え上がる油田の火柱と黒煙、砂漠を警戒しながら進む米兵たちを映したカットは予告編のときから実に魅力的でした。
　こうした美しい絵と、描かれる中身（政治的メッセージを含む物語）は、融合することなくぎくしゃくしています。『ロード・トゥ・パーディション』のレビューではトム・ハンクスの凡庸のせいにしてしまいましたが、あの作品も無駄に映像に凝っていました。メンデスはただ美しい映像の魅力に抗しきれないのですね、きっと。
　映画としてはどうにもお粗末という感がぬぐえませんが、惜しむらくは、主人公の妄想癖という実に重要なファクター（ここにこそ本当のテーマがあったのでしょう）が、最終的に薄められてしまったことでしょう。いかにエンタテインメントとしてのバランスを崩しても、特典映像にあるように、編集者の意見など受け入れるべきではなかった、と思うのです。３０点。