エレクション　死の報復

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　もはや『神探　マッドディテクティブ』同様に輸入版dvdを買うしかないのかと諦めていたところに『エレクション２』リリースのお知らせ。しかもレンタル先行。やったー！
　私も前作はほぼ忘れていますが、たぶん大丈夫だろうと観始めました。だんだん人間関係も思い出してきて、結果オーライでしたが、やっぱり前作からご覧になったほうがいいでしょう。
　前作でボスとなったサイモン・ヤムが2年の任期を過ぎても居座ろうとするところから組織にゴタゴタが起こり、本当は堅気になりたかったルイス・クーが巻き込まれていくというお話（以下重大なネタバレあり）。
　面白いのは中国本土との関係が前作とかなり印象が違うところ。前作ではボスの証明となる「竜頭棍」を隠すという意味で、不可視の領域のように捉えられていた。文明圏香港の果ての暗黒大陸というような。そこに出かけて戻ってくるというのが、ルイス・クーのイニシエーションになっていたりしたわけですが、今回はもはや明確にビジネスの現場になっている。それも役人に札束まいての汚職の現場から始まり、そこに公安当局が入り込んできて、マフィアを制御するために結託していくという図式。ルイス・クーはその手先になるよう、公安から命令されるのです。
　サイモン・ヤムは前作のラストで見せた破壊的な暴力のすさまじさから垣間見えるように、穏健に見えて実は激情型の、伝統的マフィア。構成員五万人を誇る香港最大の組織の頂点にしてはちょいと軽い感じも否めませんが、力で組織を統率している。その古いタイプのヤムが、政官と結びついたクーに排除されていく、香港返還によって黒社会でも大きな変動が起きているということのようです。
　ルイス・クーが途中で見せる思いがけない残酷さが目を引きました。懐かしい『エクスタミネーター』を彷彿とさせる人肉ミンチ。グロ描写に弱い人はちょっとご注意ですが、クーがひじょうに官僚的に感情を見せずにやっているところが面白いですね。ヤムならここは楽しんでいたところでしょうが、クーは仕事としてやっている。暴力はビジネスに取りこまれ、新しいマフィアの時代がやってきました。だから竜頭棍が永遠に失われるのは当然のことで、もはや伝統などは必要ないのです。
　ラヴァースさんが書いておられる「和を以て貴しと為す」というのは本作品の原副題ですが、貴いのは誰の和なのかと考えてみると面白いですね。
　アクションは派手ではありませんが、随所のゆったりした間の演出（クーが家を建てるという丘の斜面のシーン、すでに指摘ある川のシーン、棺桶を積もうとしたトレーラーの閉まる扉など）、おかしなラム・シューなど魅力的なところはとても多い作品です。70点。

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これはうっかり再発だと思ってたのだけど　ちゃんと二作目なのね　ってか遅すぎるよ出すのが　前のお話を忘れちゃってるじゃないですか　前のレヴューを読んでみておぼろげに思い出しました　今回はルイス・クーが主演ね　ハンサムでいい感じね彼は

全開の終わり不吉な川から始まります　小ずるくて残忍なサイモン・ヤムは無事二年の会長職を全う　次の会長のエレクション（選挙）が今度のお話　話はさくさくと進みますが派手な銃撃戦などはなし　これがうまい　今公開されている「シャーロックホムズ」なんか１０分で早送りしたくなる映画ですよこれに比べたら　さてジミー役のクーが会長にやむなく立候補するところから映画が動いてきます　ジョニー・トーはほんまにあの手この手で演出を毎回変えてきます　トーの演出は何も起らなくても一歩先が闇の映画世界を堪能できるのね

ジミーの手先の青山真治に似たリックに潜入捜査官の疑いがかかる当たりから　残酷味も増して来ます　今回のテーマは黒社会と香港のチェンジ変わりゆく未来なのですが　演出は不穏さ不吉を出すように按配されてますね　サイモン・ヤムなどは最初から死者　まるでホルヘ・ルイス・ボルヘスの小説の主人公のような不気味さです

ラストの川沿いの奇妙な家がいいですね　皮肉な結末を伴って　川で終るノワールです

　権力に執着しない男が抗争に巻き込まれ、内なる悪魔を目覚めさす。そんなドラマだ。前作でちょっとかっこよさげだったロク（サイモン）があんなになってしまうのは悲しいが、マフィアドラマはカッコ好くてはいけない、汚くて好いのだ。←前作と同じ感想 笑
　本作ではジミー（ルイス）による刹那の変化（へんげ）が観られた。ジョニー・トーは人間に隠れ棲む悪魔を一番撮りたいのかも。一方でロクの右腕暗殺者（役名忘れた）はあれほどキレまくってたのに、最後で憑き物が落ちたようだった。



※レーティングは、A+,A,A-＞B+,B,B-＞C+,C,C- の9段階。

　よふかっさんと同じく、ようやく観た『エレクション』の続編。
　第１作観たのがかなり前なので、細かなところはほとんど覚えていなかったので(本作で例の龍頭棍が出てきた時もしばらくぴんとこなかった)、話についていけるか心配でしたが、本作だけでも話自体は追えるように作られていたので一安心でした。もちろん、前作の内容をよく分かっているほうがベストですけど。
　香港最大の黒社会組織、「和連勝会」の次期会長選挙を巡る候補者たちの暗闘・・・というのは前作と同じですが、本作では前作で晴れて？会長におさまったロク（サイモン・ヤム）が、その座から降りたくなくなって再度立候補します。さらに、順調な商売が優先で、もともと会長の座に興味を持っていなかったジミー（ルイス・クー）が、中国本土での商売を軌道に乗せるためには「会長」という肩書きが必要だと警察にそそのかされて立候補。つまりこの２作目は、二人の候補者、ロクとジミーの静かなる暗闘が描かれています。
　この暗闘の様が、やはり本作のひとつの見所でしょう。
　もうすでに他の方が触れられているように、前作同様、劇中１発たりとも銃声が鳴り響くことはありません。けれど、序盤から何ともいえないただならぬ空気が漂い、唐突に出現する暴力に圧倒され、ただただ映画に引き込まれます。
　ラヴァースさんのおっしゃる
　“トーの演出は何も起らなくても一歩先が闇の映画世界を堪能できるのね”
　は、まさに言いえて妙です。
　また、これもすでにラヴァースさん、よふかっさんが触れられ、ジョニー・トー監督自身もインタビューで語っていますが、“変わりゆく香港”の一端（本作では黒社会）が描かれています。ジョニー・トー監督は、同様のテーマで『スリ』という映画も撮っていますので、興味のある方はそちらもどうぞ。

　それにしても、本作は４月２日からレンタル始まってるんですけどレビューがオレのを合わせてやっと４件。
　なんでこんなに注目度低いんでしょうね・・・おもしろい作品だと思うのになあ。

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いきなりの水辺のシーンに、因縁めいた空気が漂います。

前作同様、銃は一発も撃たれません。
これは監督の意図するところなのでしょう。
轟音はせず、男達も言葉少なく、その静かさが余計に怖さを煽ります。
執拗に階段を突き落とし、袋詰めで海に沈め、槌で殴り、刃物で斬り裂き、果てはミンチにするその暴力描写は、アナログ故に息が詰まり、我が身が斬られるリアルな衝撃の連続。
心理戦も含めて、蠢く男達の距離が余りに近く息使い、血の匂いまでが生々しく観る者に伝わります。

因果応報、ロクに過酷な運命が訪れるのは、逃げる息子の背中を見ながらというのが哀しい。
一方ジミーは……時が来れば足を洗おうなど、これだけ残虐行為に手を染めながら余りに都合が良すぎるというもの。
そうはさせてくれぬ運命、将来の悲劇が想われる展開です。

ジョニー・トー監督の巧さ。
サイモン・ヤムの一種下卑た貫禄。
ルイス・クーの冷たい美貌。

前作でレンゲをボリボリ喰っていたフェイも、つかみどころの無い不思議な存在感を醸しています。

ジミーに息子が産まれ、姿を消していたトンクンが現れる……という設定で始まる次回作を期待してしまいます。