戦慄の七日間

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　冷戦時代の核の恐怖を描いた作品というと、『博士の異常な愛情……』や『未知への飛行』といった傑作が思い浮かびます。そういえば、題名がよく似たフランケンハイマーの『五月の七日間』は観ていないのですが、やはり核がらみのサスペンスのはず。
　こういう映画は冷戦真っただ中、ケネディ時代の60年代に作られているのですが、この『戦慄の七日間』は1950年の作品。朝鮮戦争が始まるかどうかというころに製作されていたことになり、見事に近未来を予言していたということになると思います。　
　自分の研究が大量破壊兵器に使われているということに悩んだ原子力学者が、小型原爆を盗み出し、首相を脅迫するという物語です。ちょっと『太陽を盗んだ男』みたいです。
　冒頭他何回か、有名なロンドンのダウニング街10番地が登場して、そのドアの郵便受けにドサドサと手紙が配達されるのが興味を引きました。首相官邸なのに、ろくに警備もいないし、手紙の入れ方がまるで普通の家みたいなんですね。今ではたぶんここまで悠然としてはいないと思いますが……。
　それはさておき、学者の脅迫に屈することをよしとしない英政府は、ひそかに戒厳令を計画して、ロンドン市民の大規模な疎開の準備を開始します。次第に市民に噂が漏れ、「ソ連が攻めてくるらしい」といった流言が飛びます。この時すでに、第二次大戦でともに戦った英米とソ連の間にもう不協和音が出始めていたことが分かり、この映画は敏感にその対立を描きだしています。
　マンハッタン計画にかかわった学者や、エノラゲイの搭乗員などがきっと感じたでしょう葛藤に押しつぶされてしまった学者。精神のバランスを崩すまでに自分を追い詰めてしまった彼の繊細さ、生真面目さは、とてもリアルに感じられました。
　映画としては地下鉄やパブなどロンドンらしい風物を生かした彼の逃亡劇がなかなか面白く、中でもそうと知らずに彼を部屋に泊めてあげる盛りを過ぎた女優がなかなかいい味をだしていました。
　また後半、戒厳令が施行され、ロンドン市民が大挙エキストラとして参加したらしい大疎開の描写はとてもスペクタクルで驚きました。もぬけの殻になったロンドンの街を観ていると、まるで終末モノのＳＦ作品のようです。
　爆弾はついに爆発するのか……というデッドリミット型のサスペンスも、現在の作品と比べてはいけませんが、なかなか手に汗握らせました。60点。

内容は作品解説のまんま。テログループ相手じゃなく素人個人なので、かえって捜索もやりにくいのでしょうか。CTUのジャック・バウアーならどうする？！って感じ。
一定の緊迫感と下町の日常描写もありながら進んでいく。
おばさん女優はええです！　地ですか？というくらい見事に「トウの立ったおばさん女優」を演じてました。

　ロンドン市民の集団疎開の場面。
初代「ガンダム」TV版でジオンがコロニーレーザー建設のために強制集団疎開。そこでの、あの永井一郎さんとジオン兵士の台詞「娘と〜」「行き先は同じだ」
と同じような場面があってニヤリ。
疎開で無人地帯となったロンドンで、略奪というか強盗の描写もあるし、この手の状況には定番の「悔い改めよ〜」もいるし、下っ端兵士の描写も面白い。
大事な犯人（と爆弾）捜索のさなかに　下着ドロボー・盗み酒・サボり…おいおいおい（笑
「発砲厳禁」なのに勝手に撃とうとするし…（というか撃っちゃうし

ただ、脚本にひとこと。
政府や警察の偉い人が対策本部で部下からの連絡をじりじり待ってる場面はわかりますが、捜索対象の教授の人となりや心理から行き先を推理するような描写があればもっと緊張感も出るんじゃないですか？
物語発端で、教授は爆弾持って失踪する前に教会行ってるし信者だという説明もある。
だからワタシはこの時点で教授はロンドンでも爆発させる前に教会へ行くだろうと予想して、そして、警察もそう予想して逮捕するのかな〜なんて考えていたんだが…