不滅の李舜臣（イ・スンシン）

本作に主演したキム・ミョンミンssiといえば，「白い巨塔」や「ベートーベンウイルス」の好演でご存知の方も多いと思います。本作について彼は，日本での放送は半信半疑だったそうです。いくら韓ドラブームといえども，完全に日本を悪とした内容ですから，日本での放送やＤＶＤ化は困難だと思ったのでしょう。
しかし，日本での放送が決定されると「日本の皆さんの高い文化水準に敬意を表したい。」という温かいメッセージを寄せています。

本作は，日帝時代を描いた作品や，過去の反日的な作品と比較しても，決して引けを取らないぐらい日本を敵視した内容となっていますが，韓国人の日本に対する“恨”の原点がここにあるのだという認識でご覧いただきたいと思います。

日本の大河ドラマ「天地人」では，妻夫木君が扮する兼続が「大義がありませぬ。一体何に勝とうというのでしょうか。」と言った秀吉の“朝鮮出兵”ですが，これを迎え撃ったのが，韓国では知らない人はいないといわれる“李舜臣”将軍です。
本作では，日本人役も中国人役もすべて韓国語のセリフによる演技ですので，日本人からすれば違和感があると思いますが，“李舜臣”を知らずして韓国を語ることはできません。１０４話の長丁場ですが，歴史を再認識する機会だと思ってお付き合いください。

ドラマは，朝鮮を侵略しようとする秀吉軍と，明国・朝鮮連合軍との合戦シーンでスタートします。この戦いは“李舜臣”最後の戦いであり，いきなり初老のミョンミンssiが登場します。この戦いは，明国陸軍の裏切りがあり，明国・朝鮮連合水軍は苦戦を強いられます。戦いの中で“李舜臣”は，秀吉軍の流れ弾に倒れ，薄れる意識の中で若かりし頃を思い出すという形で，５話目ぐらいから子役の登場へと流れ，ドラマらしくなっていきます。
因みに，スンシンの子役はお馴染みのユ・スンホ君です。


おまけ：劇中，小西行長のことを“ヘンジャン”と呼んでいますが，漢字のハングル表記には訓読みはありませんので，“行長”は“ヘンジャン”となるわけです。これは，大阪をテパンというようなもので日本人にとっては違和感があります。いかにドラマといえども固有名詞だけはその国の発音にすべきだと思います。

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いきなりクライマックスの戦のシーン。
朝鮮、中国、日本と三つ巴の戦い（駆け引き）ですが、全員韓国語で話しているのにはぶっとんだ。
日本はまだいい。一応侍の格好しているから、
でも唐の皇帝まで韓国語話されたひにはわかりにくくてしょうがない。まあ、韓国のかたはすぐわかるのだと思いますが。。。

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ドラマの冒頭部分に使われた露梁海戦シーンとどのように絡ませるかが最終章の課題だと思っていましたし，最終章ということで様々な回想シーンも使われるだろうと予測していました。
予想どおりといいますか，小説「孤将」も読んでいましたので，ドラマの展開は読めていたのですが，これらの映像が長かった104話をいい意味で振り返らせてくれ，結果的に演出効果を高めていたと思います。
最後の決戦となった露梁海戦では冒頭と全く同じ映像を使っている部分もありますが，そういう経緯が隠されていたのかとドラマ作りの妙に感心させられる場面もありました。
特に印象に残ったシーンは，これまで手元に置いていた屈辱の“免死帳”を燃やすシーンで，最後の決戦での必死を感じさせました。
また，これまで穏健派のように描いていた小西行長を，最後になって韓国人捕虜殺害という蛮行を演出することにより，史実のとおり悪玉として描いています。

ただ，人間“李舜臣”を描いたドラマとしては，あのような終わり方でいいのかもしれませんが，個人的には，王様が自分の間違いを悔い改め，ユン・ドスを中心とする西人派にも厳罰が下り，李舜臣は英雄として万人から認められたというようなハッピーエンドにして欲しかったです。


ＰＳ：余計なことかもしれませんが，映像的に口から血が出過ぎですし，戦闘のシーンが長回し過ぎです。このドラマは，“李舜臣斯く戦えり”という線が根底にありますので，ことさらに戦いの場面を強調する必要は無かったと思います。

同時進行で長編の時代劇を４本（オンタイムで「千秋太后」「善徳女王」ＤＶＤで「ヨンゲソムン」「女人天下」）見ていますので，なかなかレビューがはかどりません。あっちゃこっちゃにならないようにその都度少しずつ書いていきます。
さて「李舜臣」ですが，子ども時代，青年時代，武官時代と，正義感溢れる舜臣を応援しながらも，絶対悪の存在としてある日本の描き方と役作りを，大いに違和感を感じながら見ています。
ドラマは，ようやく将軍として南海に派遣された李舜臣を描きますが，前任のウォンギュン（同郷の先輩）を追い落とした格好になり，しかも異例の七階級特進という王命を受けての大抜擢人事ですから，ウォンギュンも朝廷も敵に回して前途多難な着任となります。
史実では，この辺りから李舜臣の軍人として本領発揮となるのですが，本作ではドラマ的な要素が散りばめてありますので，緊張感ばかりの展開ではなく楽しみながら歴史に接することができます。
私の場合，不覚にも３９話で涙（将軍として赴くスンシンと妻ヨナとの会話）してしまいました。言っときますが決して泣ける仕立てのドラマではありません。
ドラマとしてはやっと中盤に差しかかりましたが，史実によれば李舜臣の戦死はもうそこまで来ています。この先どのようにドラマを展開させてドラマの冒頭シーにつなげていくのか，日本の歴史教科書には「壬申の乱」としか書いていないことが，韓国では日本敵視の元凶になっています。その辺りのギャップをむしろ楽しみたいと思っています。

余談ですが，先日，ＫＴＸで東大邱に行き，安東市にある河回村に行ってきました。ここには時の王様に李舜臣を南海の将軍に推挙した西涯柳成龍（ソエ　リュ・ソンリョン）の家「澹然斎」が残っています。俳優のリュ・シウォンssiはこの柳成龍の13代目にあたります。

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青年時代の後期で遅ればせながら武官を志すまでが描かれています。
後半に陶工たちの村を襲った脇坂安治一味と舜臣との対決がありこれを１勝と数えれば，彼は日本軍とたたかって２４連勝ということになります。
波乱万丈の青年期を過ごしたスンシンに転機が訪れるのは，１３代王が崩御して，若い河城君が直系血族でない初めての王として誕生してからです。
一族にかけられていた逆賊の汚名が払拭され，飢餓に苦しむ民を救い，外敵から侵略を守り，腐った役人どもを刷新するために，武科を受ける気になります。
それにしても，将軍“李舜臣”を描いたドラマだというのに，この間はまるで普通の韓ドラ，「商道」の別バージョンか，はたまた三角関係か，史実に現れないミジンという女性を登場させてドラマらしさを演出しています。
でもドラマ的にはこのミジンの動きが気になるんですね。あの子が今後どのように育って，スンシンとどのように関わっていくのか，史実以外の部分に興味が移ってしまいそうな前半のラストです。