ラフマニノフ　ある愛の調べ

ラフマニノフの半生をおさらいした映画だった。そんなに内容が深くないが90分ちょっとならこれで合格と思う。

全編、ラフマニノフの曲ばっかり。BGMを新たに全然作っていない！
どんなシーンにもラフマニノフ。これを流石ラフマニノフと採るか手抜きと採るか。私は「流石」と採りたい。一回だけ空撮が映ってロシアのお城と雪景色が見える。そのときのラフマニノフはもうこれ以上この景色に似合う音楽は無い！と思うくらい感動した。

そもそも、亡命した先の国で音楽が作れるか？

ここは議論があるべきところだと思う。昔の話だけど、「シベリウスを指揮するのに北欧体験が必要か？」という議論があった。そのときの大方の意見は「そんなもの必要ない。必要な事はすべて楽譜に書いてある」というものだった。私は判断保留にしたけれど、後に北欧に行ったら「これはここに来た事の無い人には絶対に解らない壁」を感じました。もう、空気感からして日本と全然違うんだもの。

別にヨーロッパを持ち出さなくても、たとえば津軽じょんがらの作曲家が温暖な鹿児島に引っ越してじょんがら節を書けるか？　沖縄のエイサーの音楽を寒い札幌で書けるか？　書けないだろう。ラフマニノフはいみじくも汽車の中でこう言っていた。

「曲が湧かない」
「空気の違いかな」

重要なセリフだと思う。（ロシア語で何と言ったのかは解んないけど）

それほど音楽と故郷とは密接な関係なのだ。つらかっただろうなぁ、10年。周りはそんな事理解してくれないアンポンタンばかりだし、観客には「ただのワガママ」とか言われるし、それを耐え抜いたところが常人と違うのだなとしみじみ思いました。そこに、あのロシアの景色の空撮が入る。ここで感動が極まりました。

アメリカのロケなんか無いし、ラフマニノフは大男なのに役者は背が低いし、時代感を出す所は古いフィルムで代用しているし、チープ感は免れないけれど、お金のないのによく頑張って作ったと誉めたいです。

あと、子供時代のラフマニノフが池に飛び込んじゃう所は涙腺が緩みました。

ラフマニノフ好きの方なら薦めます。

※映画の作りとしては奥さんよりマリアンナの方にあんなに奇麗な人を配役したのがちょっと納得できませんでした。

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クラシックのあまり知らない私ですが、ラフマニノフのピアノ協奏曲第２番が有名ですよね。「私の小さなピアニスト」のラストにこの曲が出てきました。

１９２０年代。ロシア革命から逃れるために妻のナターシャと娘と一緒にアメリカへ亡命したラフマニノフ。
冒頭、ＮＹのカーネギーホールでは、大絶賛されたにも関わらず、何故か浮かない顔です。

ロシア時代の少年の頃や、若き日の恋とアメリカでの暮らしがシャッフルされていて、まるで彼の破綻ぎみの精神状態を表しているかのようです。
彼とは、切り離すことのできないロシア革命。
それに基づく影響が少々盛り込まれています。多分冒頭のＮＹのコンサートでソ連の大使を退場させるシーンもその現われなのでしょうか？
それは、ロシア革命で誕生した新体制を支持しなかったのだと思います。しかし、ここではそのようなイデオロギーは全くというほど、排除されています。本来は、切り離せないものなのに、あえて排除してしまったことが、背景がないために、伝わりにくかったとも思います。

そして、成功とは裏腹に新曲が書けずに、悩む彼の元に、贈り主不明のライラックの花束が届きます。
度々彼の望郷の思い出を象徴するものとして、ライラックの花が登場します。
多分それは、少年期の従姉妹と遊んだ思い出や、元恋人によく贈っていた花ライラック。
彼は、甘い香りのライラックを香りをかいだ瞬間、切ない過去の恋を回想。故郷の情熱的な日々が蘇ります。

トラウマになってしまった哀しい思い出を持ちながらも、献身的な女性の本当の愛に気付くという物語は、心動かされるものがありますが、天才は得てして、こんなものか？なんて思うところもあり。
彼の情緒不安定なシーンが盛りだくさん。周知の事実が盛り込まれすぎたがために物語が散漫になってしまったところがちょっと残念でした。

セルゲイ少年が、ライラックの花が咲き乱れる中を駆け抜ける冒頭のシーン。
静かに緑を映す湖面。
空から見たロシアの冬の景色。
そんなシーンにラフマニノフの美しい調べが流れて・・・

クラシックについても、時代背景についてもよく知らない私には、全てにおいて中途半端な印象でした。
彼に影響を与えたという３人の女性について、もっと知りたかったです。
神経衰弱になったラフマニノフを支え続けたナターシャの献身は、それなりに描かれていましたが、彼が心を奪われたアンナがどういう人だったのか、彼の教え子だったマリアンナとの関係、マリアンナが後に自分から逃げたと彼を責めたエピソードなど、説明が不十分でした。
また、彼が冒頭のカーネギーホールで、ロシア大使の前では演奏できないと拒否した経緯も説明不足でした。
どれか一つでも要点を絞っていたら、こんなに散漫な印象を与えることはなかった様に思います。

ライラックの花を取り寄せ、贈り続けたナターシャの深い愛に気づき、我に返ったようなラフマニノフと、ナターシャ、娘とのラストシーンは、降り出した雨と一緒に何もかも洗い流されていくような、清々しいシーンでした。

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昨今のクラシックブームのせいか、お客はけっこうはいっていましたが、クラシック音楽についての知識が全くない私にとっては、おもしろくもなんともない映画でした。

とにかく映画的におもしろいところは全くありません。
出だしの景色やなんかはいいなあと思ったのですが、それ以外はＴＶドラマのレベルです。
作曲をしたいのに演奏家でいることを期待される苦悩、妻と愛人の間での葛藤など、どのエピソードも中途半端です。
カーネギーホールのコンサートで「私の友人をたくさん殺した人の前では演奏できない」といって、ソ連の大使を退場させてしまうシーンがあるのですが、せめてそのへんのことをもっと掘り下げてくれればおもしろかったのでは。

演奏シーンも少ないので、クラシックファンの方も満足いかないのではないかと思いますがどうでしょう？
とにかくつまらなくて、こんな映画でも寝なかった自分は偉い!と思ったくらいでした。寝なかったけど、一瞬にして忘れてしまいました。

ラフマニノフの波乱万丈の人生（半生）らしいのですが、
ん・・・？
波乱万丈でしたか・・・・？

睡魔との闘いでした。

ラフマニノフをあまりしらずに見た自分がいけないのか？

でも、他の伝記物は知らずに見てもなんとかなったよな・・・。

つまらないわけではないので、興味がある人はどうぞ。